適正な教員数と授業時数の実現で、持続可能な教育現場を
 ――日教組の取り組み

労働組合取材

教育現場では働き方改革が進められる一方で、過酷な労働環境は変わらず、教員をめざす人も減って、教員不足が深刻化している――。文部科学省の調査によると、公立学校教員の時間外在校等時間は小・中・高校のいずれも減少傾向にあり、働き方改革のための「学校と教師の業務の3分類」のうち、「教師の業務だが負担軽減を促進すべき業務」の複数項目で実施率が8割を超えた。にもかかわらず、教員採用試験の競争倍率は小・中・高ともに過去最低。休職者や離職者も多く、教員不足の問題はむしろ悪化傾向にある。この背景には、過重な業務負担や複合的なストレス要因に加え、地域による環境の違いなどがある。かねてから、教員を増やし授業時数を減らすことを要請している日教組(梶原貴委員長、18万7,000人)を訪ね、教育現場の現状と日教組が進める運動の内容を取材した。

働き方改革の進展で進む教員の時間外在校等時間の縮減

文科省が学校の服務監督を行うすべての教育委員会等に対し、所管する学校の2025年9月1日時点の取り組み状況を尋ねた「学校の働き方改革のための『見える化』調査」の結果によると、教員の時間外在校等時間が「月45時間以下」と「月80時間超」の割合は、2023年度に比べて小・中・高校などすべての学校種で改善した。改正給特法では「月の時間外在校等時間を2029年度までに平均30時間程度に削減する」との目標が規定されたが、1カ月の平均時間外在校等時間は、小学校教諭で約31時間、中学校教諭で約40時間、高等学校教諭で約33時間となった。ただし、教育委員会間の差は大きく、1カ月の平均時間が30時間を超えた教育委員会は、いまだ小・中・高のいずれも50%以上を占めている。

カウントされない持ち帰り業務や未取得分の休憩時間

こうした調査結果について、山崎卓也・政策局次長は「これまでの取り組みで良くなってきた部分があり、時間外在校時間が減ってきていることは事実として受け止めている」と評価しつつも、「学校現場には持ち帰り業務があることや、休憩が取れていないことなど、勤務時間の把握に曖昧さが残るという課題がある」と指摘。「出退勤時間や持ち帰り時間、休憩が何分取れたのかなどを厳密に見て、勤務時間を正確に把握する」必要性を訴える。

「今回の文科省調査では、今までなかった『持ち帰り時間』が項目として立てられた。ただ、各自治体はこれを『本来ないもの』と捉えているので、あることを認める自治体はゼロではないが、まだ少ない。曖昧な勤務時間管理で数字を示すのではなく、実際にある持ち帰り業務分もしっかりカウントすべきだ」

「休憩時間も問題。昨年の日教組の実態調査では、1日に11分しか取得できていなかった。本来45分取れるはずの休憩を11分しか取れていないのだから、30分以上は働いていることになり、これを月換算すると約10時間に及ぶ。現状は、仮に時間外在校等時間が30時間という結果が出たとしても、実際には40時間になる。休憩時間の取得は当然のことなのに、今の学校現場は決してそうなっていない」

1~2割台の実施率にとどまる「教師以外が積極的に参画すべき業務」

「見える化調査」では、学校現場の働き方改革のために文部科学省が提示する、①学校以外が担うべき業務②教師以外が積極的に参画すべき業務③教師の業務だが負担軽減を促進すべき業務――からなる「学校と教師の業務の3分類」の進捗状況も調べている。

都道府県・政令市・市区町村を総計した実施率を分野別にみると、「教師の業務だが負担軽減を促進すべき業務」として示された項目のうち、「授業準備への支援スタッフの参画」や「授業準備へのICTの活用」、「支援が必要な児童生徒等・家庭への対応について、首長部局や関係機関との連携体制を構築」はいずれも8割超、「支援が必要な児童生徒等・家庭への対応について、専門人材と教師が協働して対応」は96.9%の実施率だった。

それに比べ、日教組が早期の推進を求めている「学校以外が担うべき業務」の項目では、「学校徴収金(給食費を含む)の徴収・管理」「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求等の、学校では対応が困難な事案への対応」「放課後から夜間等における見回り、児童生徒が補導された時の対応」がいずれも半数割れ。「登下校時の通学路における日常的な見守り活動」も全体の3分の2程度にとどまっていた。

さらに、地域住民の支援・協力を得ながら学校職員等の輪番制を活用したり、民間事業者への委託等で負担軽減を図ったりする「教師以外が積極的に参画すべき業務」の項目は、「児童生徒等の休み時間」(12.5%)、「学校の広報資料・ウェブサイトの作成・管理」(18.5%)、「校内清掃」(19.3%)、「校舎の開錠・施錠」(27.7%)など、軒並み低い。この結果を山崎政策局次長は、以下のように解説する。

すべて切り離せるわけではない「学校以外が担うべき業務」

「『見える化調査』の問いは、あくまで取り組みを進めているか否かを聞いたもの。実際に改善が図られたかというと、それは別の話になる。細かいことを言えば、放課後の対応などはすべての学校に留守番電話が導入されているわけでもなく、そうした点を引き続き進めていかなければならない。『学校以外が担うべき業務』は、文科省が『学校以外』と言及しているのだから、日教組としても真っ先に進めたい。とはいえ、例えば『登下校時の見守り活動』は、確かに今は管理職からも『そんなに行かなくてもいい』と言われる。でも、だからといってすべてが切り離されているわけではない。大雨などの災害時の対応や、地域によっては熊が出没した際の見守りをすることもある。そうした時の子どもたちの安全を考えたら、現場では『すべて地域で』『児童生徒で自主的に』などとは言い切れない」

地域差が大きい教員のなり手不足

日教組として満足のいく内容とは言えないものの、働き方改革については35人学級への移行や事務作業の削減など、一定の対応が図られてきた。にもかかわらず、教員の繁忙感が拭えない背景には、教員のなり手不足や離職者の増加などから、負担が軽減されない事情がある。採用選考試験の競争倍率が小・中・高ともに過去最低となるなか、文科省調べでは、2025年5月1日時点で全国の公立学校で約3,800人の教員が不足していた。不足率は地域差が大きく、不足数の多い自治体が全体を押し上げている傾向にある。山崎政策局次長は、2026年度の小学校教員の採用試験で、200人を超える合格者の約6割が辞退したことが報じられた高知県を例に挙げて、「地方に行けば行くほど、人が集まらない。これは複数の自治体を受験して複数受かった人が、大都市のほうに行く傾向があるからではないか」と推察した。

奨学金免除制度の復活が競争倍率低迷の解決策に

一方、山﨑俊一・書記次長は、奨学金の免除制度があった過去との待遇の違いが、応募者数にも影響を及ぼしている可能性を指摘する。

「現在40歳代後半くらいまでの人には、教員として一定の勤続経験を経ると奨学金が免除される制度があった。その頃は、『公務員だし、奨学金も免除されるなら』と教員になった人が、ネガティブな意味ではなく相当数いた。いま、大学院生の免除制度は復活したが、学部生はまだなので、要求の1つに掲げている。これを復活させれば受験者が一定程度戻ってきて、競争倍率低迷の大きな解決策にもなり得る。現状では奨学金を背負っているなかで、これだけブラックな職場と言われている教職をあえて選ぶ人は少ないのではないか」

残業が減るだけでは健康を保てない

学校現場がブラックと呼ばれるようになった主な要因としては、長時間労働と時間外手当のない環境に加え、働き方改革とは裏腹に求められるタスクが増えていることや、ハラスメント対応などで心理的負荷が重くのしかかり、休職者や離職者が後を絶たない状況にあることなどが挙げられる。

公立学校共済組合がまとめている「ストレスチェックデータ分析結果報告書」によると、時間外在校等時間が減っても、高ストレス者は増加傾向にある。小学校教諭の高ストレス要因は「対処困難な児童生徒への対応」「保護者対応」「事務的な業務量」「人間関係(同僚)」「校務分掌」の順に高く、中学校教諭の高ストレス要因は「対処困難な児童生徒への対応」「事務的な業務量」「校務分掌」「部活動指導」「人間関係(同僚)」の順となっている。教員は現場でどういったストレス環境にさらされているのか――。

保護者などへの対応については、文科省が8月28日、保護者や地域住民等による暴言や不当な要求から教職員を守るための対応指針を全国の教育委員会などに通知した。保護者や地域住民らを「教育上の重要なパートナー」と位置づけ、意見や要望には誠実に向き合うことを求めたうえで、「社会通念上許容される範囲」を超えた言動には毅然と対応するよう求めている。山崎政策局次長は、「本来、家庭や地域で対応すべきことを学校に連絡してくるなど、保護者や地域から様々な要求が寄せられるのは事実。そのなかには、時間的な拘束や過度な要求が含まれる事例もあり、それが教職員への負担になっている」と説明し、対応指針による取り組みの必要性を「一定程度はある」とした。

校務支援システムの導入で進んだ事務業務の削減

事務的な業務量については、「過去に比べれば、担任としての事務業務は相当減っていることが目に見えてわかる」(山﨑書記次長)という。文科省は、教職員の成績・出欠・学籍などの事務をICTで一元管理し、業務を効率化するための統合型校務支援システムの導入を進めてきた。こうした取り組みもあって、現場の事務業務はかなり削減されている。

「出席簿の作成作業を例に取ると、かつては全学級の12カ月分について、長い定規で線を引いたり、祝日を手書きで書いたりしなければならなかった。40人学級なら、全員分の名前のはんこを押したりもしていたが、そういった業務はどんどん減っていった。こうした削減は評価できる部分だと思う」

それでも、ストレスチェックのデータ分析で事務業務が挙がっている背景には、「複合的な要因があるから」との見方を示す。「事務業務自体はさほど大したことはなく、平時なら穏やかに対応できることでも、例えばトラブル対応をした直後にやらねばならない事務業務があったりしたら、すごくストレスを感じそう」だからだ。

校務分掌で任せられる業務量が重圧に

また、教務業務・生徒指導業務・研修業務に大別される「校務分掌」をストレス要因に挙げる背景には、「任せられる業務が多すぎることがあるから」だとみる。山﨑書記次長は、「一概には言えない」と前置きしたうえで、「校務分掌は、学校規模にかかわらず量があまり変わらないので、小規模学校で自分が担当する校務分掌の量がものすごく多くて大変だと思っているパターンや、分掌の担当分け自体にストレスを感じている場合、生徒指導や保護者対応のように実際に受け持った分掌の内容が重たい場合など、様々だ」と解説。「しかも、校務分掌は各学校で少しずつ異なり、さらに細分化して行事業務や健康保健業務などを分けている学校もある」と補足した。

ベテランと若手の学校業務に対する姿勢の違いが

職場の人間関係については、一般的にも出てくる項目で、「学校だからと特別に何かあるわけではないが、ICTや働き方など急激な時代の変化に対応できていないベテラン教員がいることも事実」(山﨑書記次長)だと語る。

「感染症以降、行事等の縮減が当たり前のなかで採用されてきた若手には、古き良きと昔のように準備から一つひとつ作り上げるようなやり方に、抵抗感があるかもしれない。一方で、自分はPC関係はできないからと、新しいことを初めから若手に任せようとする高齢層がいるという話も聞く」

GIGAスクール構想の対応も負担に

文科省は「教育の情報化の推進」を図るため、1人1台端末や高速大容量の通信ネットワーク等の学校ICT環境を整備・活用することで教育の質の向上をめざす「GIGAスクール構想」を進めている。同構想では支援員によるサポートも想定されているが、「例えば地方の離島にまで、非常勤のスタッフ職として来てくれる専門職はなかなかいない。結果、教育委員会の専門外の担当者が来て頑張るけれど、結局はIT業者に遠隔で対応してもらうことになったりして、得意な先生に頼らざるを得なくなる」という。

山崎政策局次長も、こう続ける。

「授業の準備をする際には、授業のイメージを持ったうえで、そこにデジタルをどう取り入れようかと考えるが、それを支援員に任せるのは難しい。授業への活用は教員目線になるため、他の教員と話して『これはこういうふうに使いたいのだけど』『こういった感じでやったほうが良いのでは』などと相談しながら作ったほうが、質としては上がっていく。実際に使う部分は、仮に支援員がいたとしても、教員側の対応になる部分が大きい」

地域差が大きいIT対応へのサポート体制

ただし、支援員が十分期待に応え活躍している学校もある。今回の取材に同席した菊池ゆかり広報担当が所属していた学校の自治体では、専門の支援員を常駐させていたという。

「私のいた学校は小中併設校で、小学校週3日、中学校週2日の割合で支援員が常駐していたので、『次の授業でこれを使いたいけど、どうしたら良い?』と聞くと、子どもたちにも操作を教えてくれたりして、とても助かっていた。学年が上がる時にはタブレットをリセットしてくれたり、保存できる画像の容量を細かく指示してくれたりして、教員は子どもたちに『充電をちゃんとしておくように』と言うくらいで済んでいた」

この問題の特徴は、自治体による格差が大きいこと。前述のように人件費をかけてスタッフを常駐させる自治体もあれば、専門職ではないOBを配置したり、専門家が派遣されても週1日しか来ないところなど、それぞれ異なる。「その判断は、市町村の教育委員会の旗振りで変わってくる」(山﨑書記次長)という。

「教育問題に敏感な首長や教育長がいるところは予算と人をかけて一気に進めてくれるが、感染症の流れでなんとなく入ったところは、専門的な知識のある教員に託したまま、現在に至ってしまっていたりする。頼られている教員に『大変じゃない?』と聞くと、『いや、最初は大変だけど、後々自分が楽になるから』といった意識で対応してくれる教員もいた」

地域移行を進めたうえで、関わりたい教員が関われる環境を

一方、中学校で高ストレス要因に挙げられる部活動は、働き方改革にも大きく関わる課題だ。現在、指導員を入れる形で地域移行が進められているものの、GIGAスクール構想と同様に、地方では指導できる人材が足りず、従来どおりに教員が対応しているケースも多い。山崎政策局次長は、「中学校は少しずつ進められているものの、高校は特色として部活動を打ち出している学校もあり、生徒も『野球が強いから』『バスケが強いから』などを目的に集まってきたりする」と、地域移行があまり進まない事情を打ち明ける。

「働き方改革の観点では、中高の部活動を外部に切り離すことは必要だ。今は部活動のガイドラインで、週あたり2日以上(土日は1日以上)の休養日を設けるなど緩和されつつあるが、それでも一生懸命やりたい教員は少なくない。そうした教員と、負担だと感じている教員が同じ職場にいるままでは働き方改革は進まないし、教員のなり手も減ってしまう。いま、われわれが求めているのは、部活動をやりたい教員は地域移行のなかで兼職・兼業などにより対応できるシステムづくりだ。それぞれのニーズに合った部活動の形が必要だと思う」

兼職・兼業が認められても残る時間外労働問題

山﨑書記次長によれば、「日教組としては、まず中学校の地域移行の早期貫徹を求めている」という。

「もちろん高校も並行して進めつつ、軸足は中学校に。部活動をやりたいと思っている先生の希望を通さない選択肢はないと考えているので、兼職・兼業が当たり前にできるようにしたい。ただ、兼職・兼業も働く時間にカウントされるので、本来業務を勤務時間内に終えられるようにする必要がある。中・高の時間外労働の問題は部活動が大きな要因だとされているが、ただ地域移行で兼職・兼業にしただけでは、労働時間の問題は残る」

「持続可能な学校のための7つの提言」に沿った取り組みを推進

みてきたような学校現場の環境改善に関して、日教組は2023年に、①授業準備の時間の確保②少人数学級の実現③教職員の拡充とスクールカウンセラー等の専門職の配置・拡充④学習指導要領の内容削減⑤若手教職員のサポートのために人員配置の拡充も含めた業務軽減⑥「業務の役割分担・適正化」を文科省の責任において進めること⑦「給特法」の廃止・抜本的見直し――を柱とする「持続可能な学校のための7つの提言」を策定・公表し、それに沿った取り組みを進めてきている。

持ち時間が多く質の高い授業が困難に

これまでの進捗状況を確認したところ、まず授業に必要な準備時間については、「昨年度の実態調査では、自分たちがイメージしていたより低い時間数の回答結果が出た。校種別では、小学校から高校に上がるほど、事前準備に必要と考える時間は長い」(山崎政策局次長)と話す。

この点について、山﨑書記次長は、「小学校の学級担任はほぼ毎日6時間の授業を受け持つ現状だが、1日で1時間半くらいは欲しいとの回答だった。ただし、実態はもっと短く、それよりは欲しいという結果だと受け止めている。提言で求めているのは、1時間の授業に対して1時間くらいの準備時間は確保すべきだということ。換言すると、1人あたりが受け持つ授業時数を1日3時間くらいに収めないと、準備を含め勤務時間内での質の高い授業の実現は難しいという意味だ」と説明する。

一定の進展がみられる少人数学級

現在、公立の小・中学校などの学級規模と教職員数の標準を定める「義務標準法」の改正により、原則40人だった義務教育の学級編成標準を35人に段階的に引き下げている。小学校は2025年度に全学年で35人学級が標準となり、中学校は2026年度から順次35人学級が始まる。2つ目の柱である少人数学級については、「日教組の要求は30人学級の実現なので規模感は足りないものの、子どもの数が減っている現実を鑑みれば、進んでいないわけではない」(山﨑書記次長)と捉えている。

教員の拡充を優先課題に

3つ目の教職員の拡充と専門職の配置については、「業務量の削減に向けて、まずは教員増を求める」(山崎政策局次長)というスタンスだ。「現場の声を聞くと、授業ができる人を増やしてほしいと言われる。スタッフが入ることで子どもを見る視点が増えて助かる部分はもちろんあるし、質の向上にも一定寄与している。そうした点は評価しているが、教員の業務量が減っているかといえば、それは変わらないので、教員の拡充を優先したい」との考えを明らかにしている。

学習指導要領の内容精選と「調整授業時数制度」の活用を

小・中・高校の教育内容の基準を定めた学習指導要領については、文科省の中央教育審議会特別部会が8月31日に「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(素案)」を提示した。改訂素案は、小学校では3年生以上が取り組む学習内容に「情報の領域」を追加し、中学校では新教科「情報・技術科」を創設する。高校でも「情報」の科目内容の充実を図るなど、小学校段階から情報教育を拡充する内容。

他方、こうした対応で必要となる授業時数を、標準総授業時数を増加させることなく確保するため、新たに「調整授業時数制度」を創設し、学校の判断で授業時数を柔軟に調整したり、教員の教材研究や研修等の時間に割り当てたりできるようにして、「深い学びを支える余白創出を可能とする」ことで、教員の働き方改革の促進につなげる中身になっている。

山﨑書記次長は、「今回の改訂素案を一概に批判するわけではない」として、学習指導要領の内容の精選と調整授業時数制度の現実的な活用で、同要領の削減を図る可能性を示した。

改訂素案の実現に必要な教員増と授業時間減

「義務教育の9年間では、学年がずれて重複している教科書の内容が結構ある。学年をまたいでいく系統をもう少し整理すれば、学ぶ内容を変えずに子どもの負荷も教員の準備も、もう少し減らしていける。例えば、今は『A』という事柄を学ぶ際に、社会にも理科にも算数にも同じ内容が出てくるといったことがままある。今回の改訂素案は『調整授業時数制度』によって、そういったものをセットにして、本来3時間かけて学ぶ内容を1時間にまとめる工夫の余地がある。そういった部分は、肯定的に受け止めている。今まで『絶対にダメ』とされてきたものが、今回は調整授業時数という形で『やっていい』とされたからだ。とはいえ、具体的には『減らすのはいいけれど、その内容は学校で考えて』と、いわば丸投げ状態だから、社会・理科・算数でまたがっていたものを1時間で学ぶような授業研究をするには膨大な時間が要る。つまり、今回の改訂素案を本当に実現させるのであれば、現状の教員数では到底できない。少なくとも今の教員数を倍増させ、1人あたりの持ち授業時数を半減させれば可能性はある。現状のまま、今回示された内容を実現させるのは難しい。実現にはもっと人が必要だし、本来的にはそもそも授業時数を減らせばこれほど苦労はしない」

人員配置も含む業務改善で若手教員をサポート

5つ目の若手教職員のサポートに関しては、給特法等の改正に盛り込まれた学校教育法のなかで、新たな職務として位置づけられた「主務教諭」の存在を指摘する。職務規定上、「教諭その他の職員間における総合的な調整を行う」こととされており、主務教諭と一般の教員との間に上下関係はなく、その関係は「職場の同僚」だ。

「日教組が求めていたものとは異なり、『あくまで処遇改善としては理解するが、中間管理職化して業務が増えてしまうことにはならない』ように釘を刺している。提言には『人員配置の拡充も含めた業務軽減』と明記しており、人を増やし業務を減らせば余裕が生まれ、その空いた余白でより若手をサポートできるようになることを要求している」

課題解決に向けて給特法の廃止・見直しも

提言の6つ目の「業務の役割分担」では、文科省が業務の考え方を19項目に明確化して示した「学校と教師の業務の3分類」のさらなる推進を追求する構えだ。先述のとおり、「とりわけ『学校以外が担うべき業務』は早期の完全実現を強く訴えていく」。ただし、「給特法を存置してしまったことが、こうした取り組みが遅々として進まない原因になっている」との考えから、提言の最後に掲げた「給特法の廃止・抜本的見直し」もあわせて主張し続けていく。

「JTU未来プロジェクト」で次世代リーダーを育成

このような取り組みの展開にあたっては、組織の強化・拡大が必要不可欠だ。特に、将来の日教組運動を担う若手の組織化は喫緊の課題といえる。山崎政策局次長によると、近年、次世代リーダーの育成を目的に、若年層組合員が講義やワークショップなどを通して、現在感じている課題の解決手段などを学ぶ「JTU未来プロジェクト」を開催しているという。

「若い人へのアプローチは必要で、力を入れていく部分。しかし、実際には現場が忙しく、運動への参加を拒む組合員は一定数いる。平日に一生懸命働き、土日まで組合運動で集会などに行くことはハードルが高い。加えて、文書で理解を得ようとして送っても、それを読む時間すらないと言われてしまう。20歳代前半なら余裕がないこともわかるが、30歳代くらいにも積極的に声掛けして、組合活動が実感できる場を意図的につくっていきたい。ここ4年ほど、『JTU未来プロジェクト』で毎年100人くらいを集め、核となるような組合員の育成に着手しているところだ」

辞めるタイミングはあっても、続ける理由は少ない

他方、山﨑書記次長は、若年層の組合員が加入し続けようと思えるインセンティブを感じてもらえないことや、組合を離れる高年齢層組合員の意識の問題にも危機感を募らせる。

「新採時は誘われるがままに組合に入ったけれど、組合員が少ない学校に転勤したタイミングで辞めたり、組合員の多い学校でも2校目くらいの年齢になると、分会長や支部の執行委員など校内外での組合の役割が回ってくるようになって、『忙しいのにお金を払って組合の仕事までしなくてはならないのか』と思う人が出てくる。ライフイベントのなかで、出費を見直すタイミングに組合費を節約しようと考えるなど、辞めるきっかけはいろいろなところにある」

47都道府県に日教組の旗を立て続ける

日教組は現在、47都道府県の義務教育と高校、私立学校、関係施設等を含め79の単組が集う。各単組の規模は歴史的経緯のなかで大きく異なり、それぞれ違う課題を抱えている。すべてを網羅した組織拡大対策は原則的なものにとどまらざるを得ないなか、各単組に目配りした取り組みを試みている。

「組合員が少ないところには本部が入って協力・支援している。全国組織というスケールメリットは、組織の大小にかかわらず重要なものと捉え、47都道府県に日教組の旗を立て続けるために、すべての単組で統一して労働条件や教育研究を頑張るイメージを持ってもらっている」

業務量等の実施計画の点検活動を強化

最後に、山崎政策局次長に今後の取り組みについて尋ねたところ、今年4月から各都道府県で策定が進められている「業務量管理・健康確保措置実施計画」の点検活動を強化していく姿勢を強調した。

「各自治体が計画だけで終わらせず、実効性のあるものとするよう取り組みを始めているところだ。『見える化調査』を見ると、時間外在校等時間も自治体によって10時間程度の差があることに驚かされる。同じ県内・校種でも差があるので、自治体・学校単位で取り組んでいく必要がある。時間外在校等時間は確実に30時間にする。そして、将来的には0時間をめざす」

ただ、現実には「『業務量管理・健康確保措置実施計画って何ですか?』という組合員も多く存在する」という。山崎政策局次長は、「よく知らない教員がたくさんいるなか、その状態では自治体としてもうまく計画を進められなくなるので、まずは自治体から各学校に対し、実施計画の遂行を周知徹底してほしい」としたうえで、「われわれも運動面からアピールしているが、浸透していないので、あらためて周知活動から働き方改革を進めていく」との考えを示した。

(新井栄三、田中瑞穂)

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