過去3年間に労組が提起した安全衛生課題は長時間労働、熱中症、メンタルヘルスなど
――連合が「第12回安全衛生に関する調査(速報)」結果をとりまとめ
労働安全衛生
連合(芳野友子会長)はこのほど、「第12回安全衛生に関する調査」の速報値をとりまとめた。調査結果によると、労働組合が過去3年間に提起した安全衛生の課題は、「長時間労働・過重労働の是正」や「危険箇所や粉塵・高温等の改善」、「メンタルヘルス対策」など。メンタルヘルスについては、この3年間にメンタルヘルス不調の「休業者のいる」事業場は約7割。職場復帰後に再休業した人がいる事業場や退職を余儀なくされた人がいる事業場も6割前後を占めるなどの状況が浮き彫りになった。60歳以上の労働者に関しても、過去3年間の労災事故の発生比率が前回(2023年)調査比で4.5ポイント増の30.3%となったほか、「組合では把握していない」との回答も15.6%あった。連合は、6月17日に開催した「2026連合全国セイフティネットワーク集会」で結果の概要を報告。「事業場全体の安全衛生水準の向上に向けた職場実態を把握」する必要性などを訴えた。
調査は、労働安全衛生に関する職場段階の状況や労使の取り組みを把握し、連合の活動や政策要求の策定・実現に生かすことが目的。1992年以来、原則3年ごとに実施しており、12回目となる今回は、今年1月~4月末、各事業場(組合の支部・分会)を対象に主にWebで実施し、公務・公営、民間を合わせて2,914件の回答を集約した。
9割超の事業場で安全衛生委員会を設置
調査結果をみると、安全衛生活動の基盤となる安全衛生管理体制では、現状、安全衛生委員会が「設置され定期的に開催されている」のは86.7%。これに「設置され不定期だが開催されている」(5.1%)と「設置されているが開催されていない」(1.8%)を合わせた設置比率は93.6%に達している。
労働組合がこの3年間に提起した安全衛生の課題(19項目中4つ以内選択)については、「長時間労働・過重労働の是正」(58.7%)の割合が最も高く、「危険箇所や粉塵・高温等の改善」(48.4%)、「メンタルヘルス対策」(41.5%)などが続く。連合によると、「危険箇所や粉塵・高温等の改善」には熱中症対策が含まれることから、要求の割合も増えた可能性が考えられるという。また、前回(2023年)調査で2番目に高かった「メンタルヘルス対策」の数値は、前回調査比5.6ポイント減となった。ちなみに、「ストレスチェックの分析結果の活用」も、前回調査より5.5ポイント減少している。
産業医に「日常的に相談できる」事業場は全体のおよそ3分の1
産業医は、「常勤で選任されている」(29.0%)と「非常勤で選任されている」(60.4%)を合わせて、89.4%の事業場で選任されている。他方、選任されていない事業場も9.9%みられた。
産業医と産業医以外の保健スタッフによる相談体制の整備状況を尋ねた問いでは、産業医に「日常的に相談できる体制にある」割合が34.1%だったのに対し、衛生管理者・衛生推進者(64.1%)と電話相談等の外部機関のカウンセラー(53.0%)は、「日常的に相談できる体制にある」事業場が半数を超えた。なお、保健師(31.0%)は3割、看護師(16.0%)と産業医以外の医師(12.9%)は1割台と少ない。
約2割の組合がパートなどの労災発生状況を「把握していない」
労災事故の発生状況については、過去3年間に「発生しなかった」事業場は28.0%にとどまり、71.0%の事業場で発生していた。労災事故が発生した原因(18項目中4つ以内選択)は、「安全管理体制・システムが不十分」(28.5%)や「業務上のコミュニケーション不足」(25.2%)、「機械設備・器具の安全対策の不足」(22.1%)が2割台で上位に並ぶ。
また、調査は、多様化する雇用・就業形態をふまえ、パート・アルバイト、有期・無期契約労働者(期間工等)、派遣労働者、請負企業労働者、業務請負の個人事業者の、この3年間の労災事故の発生状況も調べた。それをみると、労災事故の発生比率は39.7%。「発生しなかった」は37.3%だが、「組合としては把握していない」との回答も21.2%あった。労災事故が発生した原因(13項目中4つ以内選択)は、「経験による思い込みや慣れがある」(46.2%)が突出して高かったほか、「職場のコミュニケーションが不足」(21.2%)と「雇入時などの安全衛生教育が不十分」(20.6%)も約2割あった。
業務上の主な疾病は「腰痛」「熱中症」「精神疾患」など
過去3年間の業務上の疾病の発生状況(複数選択)については、主な疾病は「業務上の腰痛」が25.5%となっているほか、「熱中症など異常温度条件による疾病」(19.2%)や「精神・神経疾患」(14.3%)の回答割合も高い。
熱中症にスポットをあてて、熱中症のおそれがある作業(「WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間以上の実施」が見込まれる作業)での対応状況をみると、「十分な対策が取られている」(56.0%)が過半数を占める一方で、「十分な対策は取られていない」も23.2%。「対象の作業が存在しない」は19.5%あった。
熱中症対策が取られている場合の対策の内容(複数選択)は、「水分・塩分補給の推奨」の割合が85.0%でトップ。その他、「空調・冷風機・扇風機等の設備導入」(70.0%)や「休憩時間・休憩場所の確保」(67.1%)も7割前後を占める。連合では、厚生労働省の統計で死亡災害は減っているものの死傷者数は増加していることなどをふまえ、熱中症対策のアップデートを訴えている。
3割の事業場で60歳以上労働者の労災事故が発生
今回の調査では、事業場に「60歳以上の労働者はいない」のは3.1%のみで、9割の事業場で60歳以上の労働者が就労している。過去3年間の60歳以上労働者の労災事故については、「発生しなかった」割合が53.1%で労災発生比率は30.3%。労災発生比率は前回調査から4.5ポイント増加している。なお、「組合では把握していない」も15.6%ある。
60歳以上が就労している事業場での60歳以上労働者を対象とした安全衛生対策(18項目中5つ以内選択)をみると、実施した対策は「災害発生個所の特定とリスク低減」(19.7%)や「安全衛生委員会での議論」(15.7%)、「適性と能力に応じた配置転換」(11.2%)などが上位にあがった一方で、「特に何も行わなかった」(23.9%)や「組合では把握していない」(20.8%)もそれぞれ2割強の回答があった。連合は、「誰もが安心して働くことのできる環境づくりのため、事業場全体の安全衛生水準の向上に向けた職場実態を把握」する重要性を強調している。
安全衛生教育の問題は「形式的で身につかない」と「法定教育しか実施していない」
一方、採用時や仕事変更時以外の安全衛生教育について、「法定以上の安全衛生教育を実施」しているのは55.5%で、「法定以上の教育は実施していない」のは42.7%となっている。「法定以上の安全衛生教育を実施」している事業場のうち、「会社と外部の双方で実施している」のは21.4%、「会社は実施しているが、外部では実施していない」が32.2%を占め、「会社は実施していないが、外部では実施している」はわずか1.9%だった。また、安全衛生教育の問題(10項目中3つ以内選択)は、「形式的で教育内容が身につかない」(31.9%)と「法定の教育しか実施していない」(28.9%)が3割前後を占めて目を引く。
メンタルヘルス不調で「再休業した人」と「退職した人」はともに約6割
過去3年間のメンタルヘルス不調による「休業者のいる」事業場は69.7%と約7割を占め、「休業者はいない」事業場は14.8%にとどまる。メンタルヘルス不調による休業者のいる事業場の職場復帰後の再休業者の状況をみると、「再び休業した人がいる」事業場が60.6%と約6割だったのに対し、「職場復帰後に休業した人はいない」事業場は29.0%。メンタルヘルス不調を理由に退職を余儀なくされた人がいる事業場も、58.1%にのぼった。
産業保健体制の強化や衛生管理者の職場巡視の充実を
メンタルヘルス対策の重視課題(20項目中4つ以内選択)を聞いた問いでは、取り組むべき課題の上位2項目に「職場に余裕がなく対応できない」(38.1%)と「職場のコミュニケーション不足で対応困難」(34.8%)があげられ、これらに続く課題は、「業務だけが原因ではなく対応が困難」と「管理職の研修が不十分」(ともに28.1%)だった。先述の産業医の選任が1割近い事業場でなされていないことや、相談体制で産業医等に対し「相談できるが、日常的にはできない」や「相談できない」割合が低くないことなどをふまえ、連合では「各職場における産業保健体制の強化や、衛生管理者による職場巡視の充実などの取り組みが重要」だと指摘している。
また、今回の調査結果をふまえ、「労働安全衛生法令・指針等の改正状況を把握して事業場の安全衛生対策に反映させる」ことや、「安全を最優先とする企業文化の醸成と安全活動の推進や人材育成を労使で連携して取り組む」ことなどを構成組織や地方連合会と共有・連携して取り組みを進める姿勢を示している。
(調査部)
2026年8・9月号 労働安全衛生の記事一覧
- 災害発生の頻度を表す度数率は2.01と前年から0.09ポイント低下 ――厚生労働省が2025年「労働災害動向調査〈事業所調査(事業所規模100人以上)および総合工事業調査〉」の結果を公表
- 過去3年間に労組が提起した安全衛生課題は長時間労働、熱中症、メンタルヘルスなど ――連合が「第12回安全衛生に関する調査(速報)」結果をとりまとめ


