「健康」「成長戦略分野」「地域」を重点分野に据え、女性活躍の裾野拡大に向けて戦略的・体系的に取り組みを強化
――政府が「女性版骨太の方針2026」を決定
政府の方針
政府は6月25日、「すべての女性が輝く社会づくり本部」と「男女共同参画推進本部」(ともに本部長:高市早苗首相)の合同会議を開催し、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2026(女性版骨太の方針2026)」を決定した。女性活躍について一段高いレベルで進めていくため、従来からの取り組みに加え、「健康」「成長戦略分野」「地域」の3つを重点分野として焦点を当て、戦略的、体系的に取り組みを強化していくと強調。成長分野に必要な人材の育成に向けた訓練機会の創出や、戦略分野での職場環境改善などを盛り込んだ。
女性活躍は「成果を上げてきている」ものの、もう一段高いレベルで進める
方針は冒頭で、これまでのわが国の女性活躍について、政策面での充実や、経済団体や企業による取り組みの結果、女性の就業者数・就業率の増加や役員・管理職に占める女性の割合が上昇するなど「成果を上げてきている」と評価。そのうえで、こうした成果の上に立って、女性活躍の裾野をさらに広げていくとともに、「一段高いレベル」で進めていくため、従来からの取り組みに加え、「『健康』・『成長戦略分野』・『地域』の3つを重点分野として焦点を当てて、戦略的、体系的に取組を強化していく」と宣言した。
具体的には、①女性の生涯にわたる健康支援②17の戦略分野における女性活躍③女性が活躍でき、暮らしやすい地域づくり――を施策分野の3本柱に設定し、これらの取り組みを進める前提として誰もが安全・安心に生活できる環境整備が必要であると訴えた。
また、すべての意思決定に女性が参画することを基本とし、男女共同参画の視点に立ち、男女別の影響やニーズの違いをふまえた政策・事業の計画・実施や男女別のデータ収集・分析の強化を進め、「社会のあらゆる分野における意思決定の質を向上させる」と強調している。
すべての女性が健康課題に向き合いながら能力発揮できる環境を整備
個別の施策の内容をみてくと、1つめの柱である「女性の生涯にわたる健康支援」では、健康課題には性差があることから、「女性の生涯にわたる健康支援に当たっては、性差に起因する健康課題への対応を一層加速させる必要がある」と指摘。また、すべての女性が、ライフステージごとの健康課題に向き合いながら、学業、仕事、育児、介護、社会活動等との両立を図り、その能力を十分に発揮できる環境を整備することが重要だとして、具体的には、女性の健康総合センター等において、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)などの各種研究事業を活用しながら、女性の生涯にわたる健康課題に関わる研究等を推進していくことや、データセンター機能を強化し、データ収集・分析機能の充実を図るとした。
「えるぼしプラス」認定の取得を促進
ライフステージに応じた性差に由来する健康課題への対応として、職場における女性の健康支援への取り組みを推進。2025年に改正された女性活躍推進法をふまえ、職場におけるヘルスリテラシー向上のための取り組みなど、一般事業主行動計画に位置づけた取り組みも含め積極的に女性の健康課題に対する取り組みを行っている企業を評価する仕組みである「えるぼしプラス」認定の取得促進や、企業事例の周知を図ることを盛り込んだ。
さらに、職場の健康診断の問診表に女性特有の健康課題に関する質問が追加されたことをふまえ、事業者や健診実施機関に対して、女性特有の健康課題にかかる問診の実施を働きかけ、その結果を受けた職場環境の整備の支援を行うことや、受診者に必要な情報提供や専門医への受診勧奨等を推進するとしている。
また、自治体や地域の経営支援機関と健康づくり支援機関の連携を強化することで、中小企業における女性の健康課題を含む健康経営の取り組みを支援するとともに、引き続き企業や経営支援機関を対象とした女性の健康サポートデスクを設置し、フェムテックの活用や中小企業における女性の健康課題を含む健康経営への取り組みをより促進するとしている。
戦略分野で進んでいない女性の進出・活躍
2つめの柱である「17の戦略分野における女性活躍」では、AI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティなどといった政府が今後の成長戦略を講じていく17の戦略分野において、女性の活躍のステージを飛躍的に上昇させていくことは、「我が国経済の発展に資するものである」と言及。一方で、これらの戦略分野では、総じて労働者・管理職・役員に占める女性の割合が低いなど、「女性の進出、活躍が進んでいない」とし、とりわけ「理系人材が不足している」と指摘した。
そのためにも、柔軟な進路選択を可能とする教育の必要性や、戦略分野の企業において女性活躍を重視して取り組んでいくこと、また、同分野の魅力を積極的に発信し男女の意識を変えていくことも重要であるとしている。
工学系学部の女子学生割合を2040年に36%へ倍増させる
具体的な取り組みとしては、理工系女子人材の倍増に向け、大学の工学系学部の女子学生割合について、2025年の18%から2040年に36%への倍増を目指すことや、戦略分野への学部等の新設・転換の推進を図ることを盛り込んだ。
また、戦略分野等への女性の就業促進を図る。成長分野に必要な人材の育成に向けて、産業界等と連携して必要とされる人材像やスキルの把握、訓練の重点分野にかかる中長期的な方針等の策定や地域の人材ニーズ等をふまえた訓練機会の創出に取り組むとしている。
あわせて、体力面・筋力面で不安を招く業務が含まれる戦略分野において、ロボットの開発や遠隔操作の導入の促進を図ることで、女性にとって働きやすい職場環境の整備も図る。さらに、交替制勤務、深夜勤務といった職場の環境改善に向け、女性用のトイレ、更衣室、勤務時間にあわせ24時間対応可能な事業所内託児所の整備など企業の好事例を業界内に周知する。
家事支援サービスの利用に対する税制措置を含む支援策を検討
両立支援については、戦略分野をはじめとしたさまざまな分野で働く人たちが「子育てや介護等によりキャリアをあきらめることなく、さらに活躍できるような環境整備が必要である」とし、家事支援サービスやベビーシッターについて言及。これらのサービスを安心して利用することができるよう、家事支援サービスの国家資格(技能検定)の創設等による品質・信頼性の向上を前提として、サービスの利用に対する税制措置を含む支援策を検討するとした。
中小企業に対する両立支援については、仕事と育児を両立する柔軟な働き方の導入や業務の代替等の支援を実施するとともに、男女ともに労働者が円滑な育児休業の取得や職場復帰、その後の仕事・キャリア形成と育児との両立が図られる雇用環境を整備するため、専門家が中小企業・労働者の状況や課題に応じた支援を実施する。
女性起業家へのセクハラを含むハラスメント防止に向けて相談窓口を設置
また、柔軟な働き方については、勤務時間、勤務地、職務・職種を限定とした「多様な正社員」制度やフレックスタイム制の周知を図る。ハラスメント対策では、女性起業家へのセクシュアルハラスメントを含めたハラスメントの防止に向けた、相談窓口設置やネットワーク形成などコンプライアンス管理の体制確保のための業界団体周知等の取り組みを進める。
キャリアアップについては、企業における役員や管理職への女性の登用を促進するため、女性活躍推進法に基づく企業の取り組みを推進するほか、女性役員の目標設定やその達成に向けて行動計画を策定している企業の好事例を企業などに周知する。
多様な立場の声を地域の施策の立案・実践に反映することが必要
3つめの柱である「女性が活躍でき、暮らしやすい地域づくり」では、女性や若者など多様な立場の声が地域の施策の立案・実施や地域の実践に反映されることが必要であると指摘。こうした場において、固定的な性別役割分担意識等の解消を図り、女性と男性がともに地域の担い手として参画し活躍できる環境を整備することを通じて、男女共同参画が地域社会全体の活力を生み出すものと認識することが重要であるとした。
これをふまえ、方針では、地域の市民社会・若者・経済界・労働界などとの連携・協働の強化、女性人材の育成と就業機会の創出、地方議会・地方公共団体における取り組みや地域活動への男女共同参画の推進に重点的に取り組むとしている。
「男女共同参画センターにおける業務及び運営のガイドライン」を周知徹底
具体的な取り組みとしては、2025年に成立した改正男女共同参画社会基本法で、地方公共団体において男女共同参画センターの機能を担う体制が確保されたことを受け、その役割が果たせるように国と男女共同参画機構が連携し、全国各地の地方公共団体に対し「男女共同参画センターにおける業務及び運営のガイドライン」を周知徹底するとともに、体制確保や取り組みの状況をフォローアップし、「見える化」を進める。
加えて、地方公共団体が男女共同参画に関する現状と課題を把握しエビデンスに基づく政策立案ができるよう、男女共同参画機構において、統計データ等を市町村等の地域別に集計・整理・分析し提供する取り組みを進め、地方公共団体の取り組みの進捗や成果を把握し施策の改善につなげる。
性犯罪・性暴力やDVなどへの取り組みを強化
これら3つの柱を支える安全・安心が確保される社会の実現等に向けた取り組みでは、「個人の人権が尊重され、安全に、かつ安心して暮らせることが不可欠」だとして、性犯罪・性暴力やDVへの対策強化、男女共同参画の視点からの防災の推進などを掲げた。
(調査部)
2026年8・9月号 国内トピックスの記事一覧
- 1年単位の変形労働時間制での勤務シフトの確定・変更ルールの柔軟化を要望 ――政府の規制改革推進会議が答申をまとめる
- 「健康」「成長戦略分野」「地域」を重点分野に据え、女性活躍の裾野拡大に向けて戦略的・体系的に取り組みを強化 ――政府が「女性版骨太の方針2026」を決定


