正社員の直近1年間の賃金改定額は加重平均1万2,036円(4.29%)
――日本商工会議所・東京商工会議所の「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」
各種調査からみる賃上げ等の状況
日本商工会議所と東京商工会議所(ともに小林健会頭)が6月8日に公表した「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」の結果によると、正社員の直近1年間の賃金改定額(月給)の加重平均は1万2,036円、賃金改定率は4.29%となり、2025年度調査をそれぞれ962円、0.26ポイント上回った。また、2026年度に賃上げを実施・予定する企業は71.3%と7割を超え、2025年度調査から1.7ポイント増加している。
調査は全国47都道府県の各地商工会議所を通じて、企業に、2025年4月と2026年3月および4月の全期間に在籍し、かつ雇用形態や労働時間の変更がない「正社員/月給支給」の従業員について回答を依頼している。2026年4月7日から5月18日にかけて調査を実施し、2,260社から回答を得た。
3割超の企業で5%以上の賃金改定率
2025年4月と2026年4月の正社員の賃金をそれぞれ集計・比較し、直近1年間の賃金改定額(月給)と賃金改定率を加重平均で算出したところ、賃金改定額は1万2,036円、賃金改定率は4.29%となり、2025年度調査をそれぞれ962円、0.26ポイント上回った。
賃金改定率の区分別の割合をみると、「6%以上」が23.1%、「5%以上6%未満」が8.1%となっており、両者を合わせた計31.2%が賃金改定率5%以上となっている。一方、賃金改定率が「0%」(13.3%)と「マイナス」(5.0%)を合わせた、計18.3%は賃金改定率0%以下となっている。
2025年度調査と比べると、賃金改定率5%以上の割合は0.9ポイント増加、賃金改定率0%以下の割合は1.9ポイント減少している。
小規模企業では0%以下の割合が5%以上の割合を上回る
従業員20人以下の小規模企業に絞ってみると、賃金改定額は9,573円、賃金改定率は3.52%となり、2025年度調査と比べると、賃金改定額は5円増、賃金改定率は0.02ポイント減となっている。
賃金改定率の区分別の割合をみると、「6%以上」が19.9%、「5%以上6%未満」が6.3%となっており、両者を合わせた計26.2%が賃金改定率5%以上となっている。一方、賃金改定率が「0%」(24.2%)と「マイナス」(4.5%)を合わせた、賃金改定率0%以下の企業は28.7%にのぼり、賃金改定率5%以上よりも割合が高くなっている。
2025年度調査と比べると、賃金改定率5%以上の割合は0.8ポイント減少、賃金改定率0%以下の割合は2.4ポイント減少している。
地方の小規模企業の賃金改定率は4%を下回る
地域別にみていくと、「都市部」は賃金改定額が1万4,228円、賃金改定率が4.70%、「地方」は賃金改定額が1万1,591円、賃金改定率が4.20%となっており、「地方」のほうが「都市部」よりも賃金改定額は2,637円少なく、賃金改定率は0.5ポイント下回っている。
また、「地方」の企業のうち小規模企業(「地方・小規模」)に絞ると、賃金改定額は9,445円と、1万円に届かず、賃金改定率は3.56%と、4%を下回る。
2025年度調査と比べると、「都市部」は賃金改定額が1,371円増、賃金改定率が0.33ポイント増、「地方」はそれぞれ964円増、0.26ポイント増、「地方・小規模」はそれぞれ176円増、0.01ポイント増となっており、「都市部」に比べて「地方」や「地方・小規模」は上がり幅が少ない。
賃金改定率の区分別の割合をみると、賃金改定率5%以上の割合は、「都市部」が29.6%(「6%以上」21.5%、「5%以上6%未満」8.1%)、「地方」が31.4%(それぞれ23.3%、8.1%)、「地方・小規模」が26.7%(それぞれ20.2%、6.6%)。賃金改定率0%以下の割合は、「都市部」が17.9%(「0%」13.5%、「マイナス」4.5%)、「地方」が18.3%(それぞれ13.3%、5.1%)、「地方・小規模」が28.1%(それぞれ23.5%、4.6%)で、「地方・小規模」は3割近くに及んでいる(なお、各数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳の単純合計と合算値が必ずしも一致しない場合等がある。以下同じ)。
賃上げを実施済み・来年3月までに実施予定の企業割合は7割超
2026年度の賃上げの状況についてみると、「2026年4月に賃上げを実施済」が39.2%、「2026年5月以降(2026年5月~2027年3月)に賃上げを実施予定」が32.2%、「現時点では未定」が23.0%、「賃上げを見送る(予定や引下げる場合も含む)」が5.7%となっている(図表1)。
「2026年4月に賃上げを実施済」または「2026年5月以降(2026年5月~2027年3月)に賃上げを実施予定」と回答した、賃上げ実施・予定企業の割合は7割超(71.3%)となり、2025年度調査(「2025年度に賃上げを実施・実施予定」の割合:69.6%)と比べると、1.7ポイント増加した。「現時点では未定」とする割合は2025年度調査より0.5ポイント減、「賃上げを見送る(予定や引下げる場合も含む)」とする割合は、2025年度調査より1.1ポイント減となっている。
図表1:賃上げの状況(2025年度および2026年度)

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(公表資料から編集部で作成)
賃上げ実施・予定企業を100とした場合の、「前向きな賃上げ」(業績が好調・改善しているため賃上げを実施・予定)と「防衛的な賃上げ」(業績の改善がみられないが賃上げを実施・予定)をみると、「前向きな賃上げ」は39.1%、「防衛的な賃上げ」は60.9%で、「防衛的な賃上げ」のほうが多くなっている。
20人以下では賃上げ実施・予定企業は約6割に
賃上げの状況を従業員20人以下の小規模企業に絞ってみると、「2026年4月に賃上げを実施済」は31.0%、「2026年5月以降(2026年5月~2027年3月)に賃上げを実施予定」は28.9%となっており、両者を合わせた、賃上げ実施・予定企業の割合は約6割(59.9%)となっている(図表2)。
図表2:賃上げの状況(従業員20人以下の小規模事業、2025年度および2026年度)

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(公表資料から編集部で作成)
賃上げ実施・予定企業の割合は、2025年度調査(「2025年度に賃上げを実施・実施予定」の割合:57.7%)と比べると、2.2ポイント増加。また、今回調査の全回答企業での結果と比べると、11.4ポイント下回っている。
賃上げ実施・予定企業を100とした場合の「前向きな賃上げ」と「防衛的な賃上げ」の割合をみると、「前向きな賃上げ」が33.7%であるのに対し、「防衛的な賃上げ」は66.3%となっており、「前向きな賃上げ」の割合は全回答企業の結果を5.4ポイント下回っている。
「製造業」「医療・福祉・介護業」では8割超が賃上げを実施・予定
全回答企業における賃上げ実施・予定企業の割合を業種別にみると、「製造業」が82.6%で最も高く、次いで「医療・福祉・介護業」(80.9%)、「情報通信・情報サービス業」(80.5%)、「卸売業」(73.9%)、「運輸業」(73.5%)などの順となっている。一方、最も低いのは「小売業」の59.5%で、6割以下にとどまる。
賃上げ実施・予定企業を100とした場合の「前向きな賃上げ」の割合をみると、「金融・保険・不動産業」が51.0%で最も高く、以下、「情報通信・情報サービス業」(50.0%)、「運輸業」(46.8%)、「建設業」(46.3%)などと続く。一方、「宿泊・飲食業」では「前向きな賃上げ」は28.0%にとどまり、「防衛的な賃上げ」が72.0%にのぼっている。「医療・福祉・介護業」でも「前向きな賃上げ」が29.4%に対し、「防衛的な賃上げ」は70.6%にのぼった。
また、賃上げ実施・予定企業の割合を地域別・規模別にみると、「都市部」は69.0%、「地方」は71.7%、「地方・小規模」は60.7%となっており、「地方・小規模」では約6割にとどまっている。「地方・小規模」では「現時点では未定」とする企業も31.2%と3割を超え、「地方」(23.0%)や「都市部」(22.7%)と比べても高くなっている。
「賃上げを見送る」理由のトップは「売上の低迷」
全回答企業のうち「防衛的な賃上げ」を実施・予定する企業にその理由を複数回答で尋ねたところ、「物価上昇への対応」が68.2%で最も割合が高く、次いで「人材の確保・採用」(66.7%)、「最低賃金引上げを踏まえた対応」(41.5%)などの順で高くなっている。
また、全回答企業のうち「賃上げを見送る」と回答した企業に見送る理由を複数回答で尋ねたところ、「売上の低迷」が55.0%で最も割合が高く、以下、「資金面での余力に乏しいため」(44.2%)、「原材料費等のコスト負担増(中東情勢の影響含む)」(40.3%)、「景気の先行き見通しが不透明であるため(中東情勢の影響含む)」(34.9%)などと続いており、中東情勢の影響を含む、コスト負担の増加や先行き不透明感があることもうかがえた。
2026年3月と比較した4月の賃上げ額は1万1,366円、賃上げ率は4.01%
足元の賃上げ額・賃上げ率を算出するため、2026年度の賃上げの状況について、「2026年4月時点に賃上げを実施済」と回答した企業と、「賃上げを見送る(予定や引下げる場合も含む)」と回答した企業の正社員を対象に、2026年3月と4月の賃金を集計・比較し、賃上げ額(月給)および賃上げ率をそれぞれ加重平均で算出したところ、賃上げ額は1万1,366円、賃上げ率は4.01%となっている。
賃上げ率の区分別の割合をみると、「6%以上」が16.4%、「5%以上6%未満」が9.6%となっており、両者を合わせた計25.9%が賃上げ率5%以上となっている。一方、賃上げ率が「1%以上2%未満」(14.0%)と「0%超1%未満」(6.6%)を合わせた、計20.7%は賃上げ率2%未満となっている。
従業員20人以下の小規模企業に絞ると、賃上げ額は9,170円、賃上げ率は3.38%となり、回答企業計よりもそれぞれ、2,196円、0.63ポイント低くなっている。
都市部よりも地方企業のほうが賃上げ額・率は低め
地域別・規模別にみると、「都市部」は賃上げ額が1万2,671円、賃上げ率が4.08%、「地方」は賃上げ額が1万1,148円、賃上げ率が3.99%、「地方・小規模」は賃上げ額が9,262円、賃上げ率が3.45%となっており、都市部に比べて地方企業のほうが、賃上げ額・率ともに低くなっている。
賃上げ率の区分別の割合をみると、賃上げ率5%以上の割合は、「都市部」が28.0%(「6%以上」14.6%、「5%以上6%未満」13.4%)、「地方」が25.6%(それぞれ16.6%、9.0%)、「地方・小規模」が21.4%(それぞれ12.9%、8.6%)となっている。賃上げ率2%未満の割合は、「都市部」が19.5%(「1%以上2%未満」9.8%、「0%超1%未満」9.8%)、「地方」が20.8%(それぞれ14.7%、6.2%)、「地方・小規模」が26.7%(それぞれ18.1%、8.6%)で、「地方・小規模」は2%未満の企業が5%以上の企業を上回った。
(調査部)
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