一般会計の総額は35兆433億円。三位一体の労働市場改革の推進などに重点
――厚生労働省の2026年度予算
国内トピックス
2026年度政府予算が4月7日に成立した。歳出総額は昨年度より7兆1,114億円多い122兆3,092億円で、そのうち一般歳出は70兆1,557億円となっている。厚生労働省予算の一般会計は35兆433億円で、労働政策関連では、物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた三位一体の労働市場改革の推進や、多様な人材の活躍促進などが重点事項となっている。
一般会計は前年度比7,369億円(2.1%)増
厚生労働省予算の一般会計は、2025年度比で7,369億円(2.1%)増。労働保険特別会計は3兆4,292億円で同1,134億円(3.4%)増。年金特別会計は74兆4,280億円で同2兆2,494億円(3.1%)増。子ども・子育て支援特別会計(育児休業等給付勘定)は1兆966億円で同350億円(3.3%)増などとなっている。
予算措置された政策の柱は、①社会の構造変化に対応した保健・医療・介護の構築②物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進③包摂的な地域共生社会の実現等――の3分野。
このうち、労働関連の施策が主に該当する「物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進」では、「賃上げ支援、非正規雇用労働者への支援」「リ・スキリング、ジョブ型人事、労働移動の円滑化の推進」「人材確保の支援」「多様な人材の活躍促進と職場環境改善に向けた取組等」「女性の活躍促進」といった5つの項目に力を入れて取り組む(図表)。
図表:「物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進」での施策メニューと予算額

(公表資料から編集部で作成)
中小企業等への賃上げ支援などに1,961億円
5項目のうち、新規・拡充項目を中心に詳しくみると、「中小・小規模企業等に対する賃上げ支援、非正規雇用労働者への支援」に最も大きな予算額を充て、1,961億円を投入する。
個別の施策では、最低賃金の引き上げに向けた環境整備のため、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い時間給)の引き上げに取り組む中小企業・小規模事業者を支援する「業務改善助成金」に21億円を充てる。
2026年度は助成率の区分を見直し、賃金引き上げ額をこれまでの4コース制(30円、45円、60円、90円)から3コース制(50円、70円、90円)に再編することや、対象を事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場から、事業場内最低賃金が2026年度地域別最低賃金未満の事業場に拡大するなどの見直しを行う。
正社員への転換実績などの情報開示加算を新設
非正規雇用労働者への支援にも注力し、正社員転換や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する「キャリアアップ助成金」に1,022億円を充てる。そのうち、非正規雇用労働者を正社員転換した事業主に対して助成を行う「正社員化コース」について、非正規雇用労働者の情報開示加算を新設する。
正規雇用労働者への転換実績などを自ら管理するウェブサイトまたは職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に公表した場合に1事業所あたり20万円(大企業の場合15万円)を加算する。
リ・スキリング支援等に1,881億円
「リ・スキリング、ジョブ型人事、労働移動の円滑化の推進」が次に予算額が大きく、総額1,881億円を計上した。個別の施策をみると、雇用する労働者に対して専門的な知識などを習得させるために職業訓練等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する「人材開発支援助成金」に539億円を充てる。
そのうち、中小企業を対象に「設備投資助成」を新設。訓練終了後、労働者が訓練によって得た知識や技能を活用し生産性向上を図ることのできる機器・設備等を購入し、訓練受講者全員の賃金を一定割合引き上げた場合に、受講者数に応じて最大150万円を上限とし、購入費用の50%を助成する。
また、45歳以上を対象としたOFF-JTとOJTを組み合わせた中高年齢者実習型訓練を新設する。具体的には、経費助成率として中小企業60%、大企業45%の経費助成率を設定し、賃金助成額として、中小企業では1人1時間800円、大企業では1時間400円等を助成する。
新規事業としてリ・スキリングを全世代に広める取り組みを実施
新規事業としては、「全世代型リスキリングを促進する国民運動の実施」に8,500万円を投入。全世代に対するリ・スキリングの周知広報を展開する。具体的には4月に有識者会議を設置し広報ツール等の作成を実施。6月にSNS・ウェブ等を通じた情報発信などキャンペーン施策を順次展開し、11月の人材開発促進月間で集中的な取り組みを行う。これまでリ・スキリングに関心がなかった層などに対して、働きかけを行い、行動変容を促す。
また、非正規雇用労働者等のキャリアアップ環境の整備に10億円を充てる。これまで試行的に実施していたオンラインを活用した職業訓練について、都道府県等や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が民間教育訓練機関等へ職業訓練を委託することにより本格的に全国展開を図り、非正規雇用労働者が働きながら学べる環境を整える。
人材確保支援に507億円
深刻化する人手不足への対応として、「人材確保の支援」に総額507億円を投入する。ハローワークの人材確保支援の専門窓口である「人材確保対策コーナー」を拡充する等、「人材確保対策総合推進事業(人材確保対策コーナーにおける就職支援の強化)」に56億円を充てる。
具体的には、「人材確保対策コーナー」の職業相談員を189人から194人に、就職支援ナビゲーターを259人から266人に、就職支援コーディネーターを347人から369人にそれぞれ増員し、職場定着のための雇用管理改善等の支援を一貫して行う体制を拡充する。
また、高齢者雇用への支援として、66歳以上の年齢への継続雇用延長・65歳以上の年齢への定年引き上げ等を行う企業に対して支援を実施する「65歳超雇用推進助成金」に24億円を充てる。2026年度は、将来に不安を抱える高年齢者の希望に応じた高齢期の就業確保等を行う事業主に対して、助成額の増額等拡充を行う。
そのうち、「65歳超継続雇用促進コース」では、15万~240万円に支給額の範囲を広げ、定年引き上げや継続雇用制度の導入等の内容に応じて事業主に支給する。50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対して、その人数(上限10人)に応じて助成する「高年齢者無期雇用転換コース」について、対象者1人について支給する金額をこれまでの30万円(中小企業以外は23万円)から40万円(中小企業以外は30万円)に増額するなどの見直しを行う。
多様な働き方や両立支援等にも重点
多様な働き方を実現していくため、「多様な人材の活躍促進と職場環境改善に向けた取組等」に総額約1,861億円を投入する。
そのうち、短時間正社員や勤務地限定正社員といった多様な正社員等の働き方を実現するために6,200万円を充てる。2026年度の新規事業として、多様な正社員制度に関する調査を非正規雇用労働者や企業に対して実施し、企業や労働者が多様な正社員制度を導入・選択するにあたっての課題やニーズを把握する。また、多様な正社員制度を周知していくために地方等でセミナーを実施する。
育休中に新規雇用した場合の助成額を最大81万円に
仕事と育児・介護の両立支援については、「両立支援等助成金」に392億円を投じる。育児休業や育児短時間勤務期間中の業務体制整備のため、業務を代替する周囲の労働者への手当支給や代替要員の新規雇用などを行った事業主に対して費用を助成する「育休中等業務代替支援コース」を拡充する。具体的には、労働者が育児休業中に代替要員を新規雇用した場合、業務を代替した期間に「1年以上」の区分を設けたうえで、これまでの支給限度額から最大81万円に支給額を増やす。
中小企業が、育児を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入し、制度を利用した労働者に対する支援を行った場合等に助成する「柔軟な働き方選択制度等支援コース」について、障害や医療的ケアを要する子をもつ労働者を対象に、制度利用の期間を子が18歳になる年度末まで引き上げた場合、20万円を加算する。
また、中小企業に対する両立支援へのサポートとして、「中小企業育児・介護休業等推進支援等事業」に3.4億円を充て、専門家が中小企業で働く労働者の状況や課題に応じた労務管理を支援する。2026年度は労務管理の支援担当者を105人に増員し、育児休業・介護休業の取得や休業後の円滑な職場復帰などを支援していく。
新規事業として荷待ち・荷役時間の短縮に向けた取り組みに助成
労働時間の削減等に向けた環境整備に取り組む中小企業に対する支援として、「働き方改革推進支援助成金」に101億円を充てる。2026年度から「取引環境改善コース(仮称)」を新規で設置し、荷待ち・荷役時間の短縮に向けた取り組みを行う荷主等に助成する。具体的には「成果目標」の達成状況に応じて、「改善事業」の実施に要した経費の一部について最大100万円を助成する。
高年齢労働者の熱中症対策を支援
高年齢労働者の労働災害防止対策には、9.8億円を充てる。そのうち、高年齢労働者の労働災害防止のための設備改善や、専門家による指導を受けるための経費の一部を補助する「エイジフレンドリー補助金」について、「熱中症対策コース」を新設する。熱中症リスクの高い暑熱作業のある事業場における休憩施設の整備、体温を下げるための機能のある服の導入等、暑熱な環境による労働災害防止対策に要する費用に対して最大100万円を助成する。
中小企業の女性の活躍促進に取り組む
「女性の活躍促進」については、総額約51億円を投入する。そのうち、「民間企業における女性活躍促進事業」に2.1億円を充て、特に中小企業を対象に支援を展開する。
具体的には、女性の活躍推進に関する自社の課題をふまえた取り組み内容のあり方、男女間賃金差異の要因分析など個別企業の雇用管理状況に応じたコンサルティングを女性活躍推進アドバイザーが行う。2026年度は1社あたりの支援回数を拡充させ、手厚くサポートを行う。また、女性管理職育成のポイントについてデジタルリーフレットを作成し、周知・啓発に取り組む。
(調査部)
2026年6月号 国内トピックスの記事一覧
- 一般会計の総額は35兆433億円。三位一体の労働市場改革の推進などに重点 ――厚生労働省の2026年度予算
- HR部門でのAI活用に向けた対応として、安全性・公平性・透明性の確保などを提言 ――経団連の「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」


