男女賃金格差の現状と労働組合の取り組みの好事例を報告
――連合の「2026春季生活闘争 3.8国際女性デー全国統一行動中央集会」
男女間格差
3月8日の国際女性デーを前に、連合(芳野友子会長)は3月6日、都内で「2026春季生活闘争 3.8国際女性デー全国統一行動中央集会」を開催した。ジェンダー平等の推進と多様性を認め合う社会の実現に向けて連合が基調提起を行ったほか、労働調査協議会の後藤嘉代・主任調査研究員が「労働組合調査からみた『男女間賃金格差』」をタイトルに基調講演を行った。また、3つの労働組合が、誰もが働きやすい職場づくりに向けた取り組みの好事例を紹介した。後藤氏は、意識の欠如や育児負担の偏りなどが女性の就業を制限し、それが賃金格差につながると強調した。
<労働調査協議会・後藤氏の基調講演>
男女間賃金格差は上昇傾向にあるものの、まだ男性の約4分の3にとどまる
基調講演で後藤氏は、日本におけるジェンダー平等の現状について、「世界でみたジェンダーランクは下位で、特に政治と経済分野で遅れていると言われている」と紹介。男女間賃金格差(厚生労働省データ)は、1980年代後半はほぼ60%(男性を100)で、2024年では75.8%まで上がってきたものの、「まだ男性の4分の3にとどまる」と話した。単組における男女間賃金格差の取り組みの現状もデータで紹介し、「調査による男女間賃金格差の把握」に取り組んでいる単組の割合は、民間では35.5%と3割台にとどまることなどを説明した。
連合のアンケート調査の結果から、具体的な賃金格差の実態を示した。正規労働者の年齢別賃金(賃金カーブ)をみると、大卒・高卒ともに20歳台からすでに格差が生じている。組合員の所定内賃金での男女間格差をみると、年代があがるにつれて格差が拡大し、29歳以下を100とすると、50代では男性:148.7、女性:125.1となっている。業種別にみると、製造業も非製造業も「30代を境に男女格差が拡大する」ことや、前年に比べた賃金の水準について「増えた」と回答した組合員の割合は、女性よりも男性のほうが高い結果もグラフで示した。
賃金が「増えた」とする割合が大企業の30代後半~40代前半女性で相対的に低い
企業規模別にみると、1万人以上の企業で男女差が大きくなっている点や、1万人以上の企業では、前年に比べて賃金が「増えた」とする女性の割合が30代後半~40代前半で低くなっていることを紹介。後藤氏は、女性の30代後半~40代前半で賃金が「増えた」とする割合が低い理由として、「育児のための短時間勤務を女性ばかりが選択したことの影響が出ている」可能性を指摘しつつ、「女性が通常勤務に戻った後の賃金水準を確認することが必要だ」と強調した。
所定内賃金と賃金満足度の関係をグラフで示した。縦軸を所定内賃金に対する満足および不満の割合、横軸を所定内賃金額として男女で比べてみると、満足と不満の割合がちょうど同じとなる地点の賃金水準は女性のほうが低い(5万円程度低い)。また、賃金満足度とキャリアの関係をみると、女性ではキャリアに「満足」の人でも管理職志向の人が12.7%にとどまる(男性は27.6%)。また、女性の「不満」の人では、転職志向の人が24.6%と男性(21.4%)よりも高くなっており、後藤氏は「女性では企業内で育成しても、賃金に不満な人は外に出て行ってしまうおそれがある」と指摘した。
女性の非正規雇用は年収200万円未満が多いものの、賃金上昇幅は大きい
非正規雇用の賃金については、まず、正社員と非正規雇用の年間賃金の比較を説明。女性の非正規雇用では200万円未満が多い一方、1年前と比べた時間当たりの賃金が上がった人の比率については、パート・アルバイトで特に上昇幅が大きいことを説明した(61.3%→76.4%)。就業調整と年間賃金についてみると、就業調整をしている割合は女性では20.9%(男性は11.9%)。就業調整している人の平均年間賃金額は140.5万円となっており、年収200万円未満の人の割合が、就業調整している人全体の85.5%を占めていることを紹介した。
労働組合役員に女性が入ると賃金の取り組みにジェンダー視点を入れやすい
最後に後藤氏は、春季生活闘争にかかわる男女平等の課題について言及。①ジェンダー平等意識の欠如②女性に対する家族的責任(家事・育児・介護)の偏り③女性の健康に対する理解の不足(男性だけでなく、女性自身も)――によって女性の就業が制限され、その結果、男女間賃金格差が生じてしまうと強調。
特に育児・介護との両立については、親の介護に不安だとする人の割合が、男性正規68.5%に対して女性正規は72.4%、男性非正規52.8%に対して女性非正規は69.2%となっており、後藤氏は「介護は女性がしないといけないものと思っているからか、女性のほうが不安に考えている割合が高い」との見方を示した。また女性の健康については、生理や更年期障害の症状があるときの対応として、「我慢して仕事をした」と答えた女性の割合が高かった結果などを紹介した(6割以上だった)。
男女間賃金格差の解消に向けた労働組合の取り組みについては、後藤氏は、賃金・労働条件を担当する女性役員が増えると、賃金の取り組みにジェンダーの視点が入りやすくなる点などをアドバイスした。
<労働組合の事例紹介>
制度があっても行使できていない生理休暇
労働組合の事例紹介は、日教組、JR連合、生保労連の3組織が行った。
日教組からは、菊池ゆかり・女性部長が「女性の健康課題と休暇」について報告。日教組の学校現場調査によると、生理休暇を「知っている」割合は女性が89.8%で、男性が73.7%だった。取得状況をみると、「毎月取得している」が0.4%、「時々取得している」が14.6%、「取得したいが取得できない」が28.7%、「取得する必要はない」が54.6%などとなっており、制度があっても行使できていない現状を紹介するとともに、使い切れていない年次有給休暇を使っている可能性を指摘した。
また、生理休暇を取得できない理由について、「休んでしまったら、他の教職員に負担がかかってしまう」「管理職が男性なので、言い出しにくい」「生理休暇をとってない人もいるので、『そのくらいで休むのか』と思われる気がする」などの回答があったことを紹介した。
子どもたちのロールモデルだからこそしっかりと取り組む
菊池氏は、「管理職が男性なので、言い出しにくい」といった声に対応するため、日教組内では「健康管理休暇」など名称変更の動きもみられたが、名称変更によって「生理休暇が保障されていることが、分かりにくくなっていないか」と提起。また、「生理休暇をとってない人もいるので、『そのくらいで休むのか』と思われる気がする」との声への対応策としては、生理痛などの症状には個人差があり、症状の違いがあっても、困難さには変わりがないことを訴えるとともに、「取得しやすい長期休業中等に積極的に取得する取り組みを進める」と強調した。
最後に菊池氏は「教師の働き方が、子どもたちのロールモデルになる」として、「家族や自分の事情で休むなんてあり得ない」といった誤った考え方を「子どもにすり込んではいけない」と訴えた。
カスハラの明確な定義や同意ない撮影などの規制を求める
JR連合からは、今井孝治・事務局長が、交通関連の産別でつくる交運労協でのカスタマーハラスメント対策に向けた取り組みを報告。2025年6月にカスハラ対策を雇用主に義務づける改正労働施策総合推進法が国会で成立したが、法制化に向けてJR連合では、①カスハラを明確に定義し、防止・抑止できる環境を整備したうえで、その認識を社会全体で共有する②本人の同意なく動画や写真をSNSにアップした場合の処罰対象などの法規制③鉄道業においても繰り返しカスハラを行う者へのサービス提供を中止できるようにする仕組みの創設――を考え方に据えて取り組んできたと紹介した。
単組の取り組みでは、JR西日本労使が2024年5月24日に「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定したことや、JR東海労使がカスハラ基本方針の策定に伴い、駅係員・乗務員向けの「カスハラ対応マニュアル」を策定したことを紹介。また、労使協議の事例として、①録音・録画などによる証拠保全、無断の写真・動画撮影・SNS拡散への毅然とした対応②企業(グループ)としての姿勢を内外へ明示③管理者の教育、具体的な対応ルールの制定④カスハラの明確な定義と明示・社会共有化など――があると報告した。
業務の幅が広い機関長の長時間労働などが特有の課題
生保労連からは阪本裕実子・中央副執行委員長が長時間労働是正に向けた取り組みを報告。阪本氏は生保産業特有の課題として、①機関長の長時間労働②業務範囲の拡大――の2点があると説明した。
機関長とは10数人~100人程度の営業職員のマネジメント役(営業組織の長としての役職、組合員)。経営管理者であると同時に、採用・教育・営業支援・コンプライアンスなどを担当し、業務の幅が広いことから長時間労働となる傾向がある。一方、業務範囲の拡大については、AIなどのデジタル化の進展で事務の効率化は図られているが、煩雑な事務作業が残存するとともに、本社の要員が削減されるなかで、付加価値のある業務が求められ、業務が逼迫していると説明した。
働き方改革より先に経営側と共同宣言を採択
こうしたなか生保労連は、春の総合生活改善闘争での取り組みに加え、働き方改革がスタートする前の2017年12月に、経営者団体である生命保険協会と「働き方改革に関する労使共同宣言」を採択したことを紹介。また、各組合の担当者を集めての外部講師による講演会や、機関紙での労働時間短縮に関する事例紹介の活動、労働組合による長時間労働が恒常化している部署への見回りや声かけ、職場を訪問した結果の会社協議への活用を取り組みの事例として披露した。阪本氏は組合の見回りでは「組合の『見える化』につながっている別の好影響もある」と話した。
このほか、労使共同の取り組みとして、19時に絶対退社する運動や振替休日の完全取得などを紹介。総合生活改善闘争での交渉の成果では、多くの組合でPCシャットダウン時間の短縮を取り入れているとし、「導入しても大きな混乱はない。組合員が効率的な仕事の仕方を考えるようになっている」と報告した。
(調査部)
2026年5月号 男女間格差の記事一覧
- 2030年代には指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会を目指す ――第6次男女共同参画基本計画
- 男女賃金格差の現状と労働組合の取り組みの好事例を報告 ――連合の「2026春季生活闘争 3.8国際女性デー全国統一行動中央集会」


