2030年代には指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会を目指す
――第6次男女共同参画基本計画
男女間格差
政府は3月13日、「第6次男女共同参画基本計画」(6次計画)を閣議決定した。6次計画は、男女共同参画社会基本法に基づき、2026年度から2030年度までの5年間の施策の基本的方向と具体的な取り組みを定めるとともに、それぞれの施策における成果目標を設定している。女性の参画を一層加速させるため、5次計画に続き、「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取り組みを強化させる」とし、そのうえで2030年代には、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指すと掲げた。
<目指すべき社会>
自らの意思で個性と能力を発揮でき、公正で多様性に富んだ活力のある社会を目指す
男女共同参画社会基本法は第13条で、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な計画を定め、施策の総合的かつ計画的な推進を図ることとしている。基本計画の期間は5年間で、今回策定された6次計画は2030年度までが実施期間となる。
6次計画は目指すべき社会の姿として、①男女が自らの意思に基づき、個性と能力を十分に発揮できる、公正で多様性に富んだ、活力ある持続可能な社会②男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会③仕事と生活の調和が図られ、男女が共に充実した職業生活、その他の社会生活、家庭生活を送ることができる社会④あらゆる分野に男女共同参画・女性活躍の視点を取り込み、国際社会と協調する社会――の4つを提起している。
5次計画では指導的地位での割合を可能な限り早期に30%程度にすると打ち出し
政府は2003年に、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも 30%程度となるよう期待する」との目標(202030目標)を設定。前回の5次計画では「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進める」との目標を掲げて取り組みを強化してきた。
進捗はあったが政策決定過程への参画拡大では進展に遅れ
しかし、社会情勢の現状をみると、女性の就業率については、いわゆるM字カーブがほぼ解消し、男性の育児休業の取得率が向上したほか、女性に対する暴力についても、各種の支援体制が拡充されるなど、大きな進捗もあったものの、「出産を契機に女性が非正規雇用化するいわゆるL字カーブ問題が続いており、政策や方針決定過程への女性の参画拡大などについては、進展に遅れが見られる」。
また、「根強い固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」も残り、さらに、「今もなお、育児や介護を始めとしたライフイベントに際し、両立のしづらさや特に女性において着実なキャリア形成が困難となる状況がみられ、その背景には、長時間労働や固定的な性別役割分担意識による女性への家事・育児等の負担の偏りがある」などの状況が確認できる。
あらためて協働参画を推進することはwell-beingに資すると強調
そのため、6次計画は、あらためて「男女共同参画・女性活躍に係る取組を推進することは、男性も含めた全ての人の就業環境の改善につながり、さらには、女性も男性も暮らしやすい多様な幸せ(well-being)を実現する社会形成に資するもの」だと強調。こうした状況に加え、人口減少・世帯構成の変化などの社会構造の動向・変化、意識・価値観の変化、AIの広がりなどテクノロジーの急速な進展・進化などもふまえ、「男女共同参画の取組を更に加速させる」と明記している。
<基本的な視点及び取り組むべき事項>
性別にかかわらず全ての人に働きやすい環境づくりなどを基本的視点に
「基本的な視点及び取り組むべき事項」として6次計画は、「性別にかかわらず全ての人にとって働きやすい環境づくりと女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の一層の推進。その基盤として、両立支援(育児、介護、健康、学び等)、多様で柔軟な働き方の推進、長時間労働の是正、DXによる働き方改革・生産性向上、ハラスメント対策及びリ・スキリングの促進」や、「『2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進める』との目標の達成と、その先の、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会に向け、国際的水準も意識しつつ、男女共同参画社会基本法第2条第2号に定められている積極的改善措置(ポジティブ・アクション)も含め、人材登用・育成を強化する必要」など8項目を示している。
これらの方向性のもと、具体的な政策について、「男女共同参画の推進による多様な幸せ(well-being)の実現」「男女共同社会の実現に向けた基盤の整備・強化」「男女共同参画社会の実現に向けた推進体制の整備・強化」――という3つの柱に大括りしながら、重点的に取り組む12の個別分野における政策と成果目標を示した(図表1、2)。
図表1:重点的に取り組む12の個別分野

(公表資料から編集部で作成)
図表2:成果目標 雇用分野に関連するものだけを抜粋

(公表資料から編集部で作成)
<具体的な政策>
第1分野:ライフステージに応じて全ての人が希望する働き方を選択できる社会の実現
1つめの柱である「男女共同参画の推進による多様な幸せ(well-being)の実現」のうち、労働施策と関連が強い第1~第4分野に絞って、その内容をみていくと、第1分野では、①働き方改革の更なる推進と多様で柔軟な働き方の実現②共働き・共育ての実現に向けた仕事と育児の両立支援、男女双方の意識改革・理解促進③仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備――の3点を重要な施策として掲げる。
ライフステージや個別の事情等に対応した多様で柔軟な働き方の実現を図る
①については、「女性も男性も働くことを希望する全ての人が、仕事と子育て・介護・社会活動等を含む生活との両立のしづらさを感じることなく働き続け、キャリア形成やリ・スキリングの機会を得ながらその能力を十分に発揮することができるよう、取引先中小事業者への『しわ寄せ』にも留意しつつ、働き方改革を更に推進し、管理職も含めた長時間労働の削減や生産性の向上を推進するとともに、ライフステージや個別の事情等に対応した多様で柔軟な働き方の実現を図る」とし、人手不足が続くなか、全ての人が多様で柔軟な働き方を選択できるよう、企業における取り組みの後押しをしていく。
具体的な取り組みでは、働き方の実態とニーズをふまえた労働基準法制の見直しについて労働政策審議会で検討するとしている。また、育児・介護・治療等とキャリア形成の両立が可能となるよう、時間単位の年次有給休暇制度を新たに導入した中小企業事業主への助成金による支援や、企業の好事例紹介等の周知などを展開。長時間労働の抑制についても、法定労働条件の履行確保や監督指導体制の充実強化を行う。
共働き・共育ての実現や育休の業務を負担する周囲の労働者を支援
②では、長時間労働や転勤等を当然視する労働慣行や固定的な性別役割分担意識等を背景に依然として家事や育児等の多くを女性が担っており、それにより女性の活躍が困難となっている現状を指摘。そのため、育児休業等の法律の履行確保のみならず、男性の家事・育児参画を促進するための環境整備や、固定的な性別役割分担意識解消に向けた男女双方の意識改革の促進等により、共働き・共育ての実現に向けた取り組みを推進するとしている。
さらに、企業においては、社員の育児休業取得による欠員時の代替要員の確保や職場負担の増加が課題となっていることから、育児休業取得者・短時間勤務者の業務を代替する周囲の労働者を支援する企業の取り組みを促進していくことも掲げている。
そのうえで、具体的な取り組みとして、共働き・共育ての推進に向けた社会的機運の醸成を図るため、企業等に共働き・共育てに関する意識調査結果を周知。また、企業が従業員とその配偶者を対象に両立支援制度や配偶者との協力の大切さ等を学ぶ場として開催する「企業版両親学級」の促進や育休取得にとどまらない男性の家事・育児への参画を促進する企業の好事例等の周知啓発を図る。
中小企業に対しても、仕事と育児を両立する柔軟な働き方の導入や業務の代替等の支援を実現するとともに、男女ともに労働者が円滑な育児休業の取得や職場復帰、その後の仕事・キャリア形成と育児との両立が図られる雇用環境を整備するため、専門家が中小企業・労働者の状況や課題に応じた支援を実施する。
成果目標として、2030年までに、民間企業における男性の育児休業取得率を85%にすることなどを掲げている。
制度を十分に活用しないまま介護離職に至ることを防止
③では、今後も家族などの介護をしながら仕事を続けるワーキングケアラーの増加が見込まれることを想定し、「仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止し、労働者のキャリアの継続を図っていくことが重要である」と指摘。
そのためにも、離職することなく仕事を継続できるように、改正育児・介護休業法の周知や、厚生労働省が公表した「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実践的な支援ツール」の積極的な活用促進を図ることや、こうした労働者の雇用継続を図るため就業環境整備に取り組む中小企業事業主に対する助成金の活用を促進していく。
第2分野:あらゆる分野における政策・方針決定過程への女性の参画拡大
学術分野、メディア分野などで女性参画に遅れ
第2分野について6次計画は、わが国は2003年に「『社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する』との目標を掲げて取組を進めてきた。2020年時点では、全体としては期待した水準に到達しなかったものの、目標に向け道筋をつけてきた」などと、これまでの取り組みの進展具合を確認。そのうえで、経済分野など男女共同参画が進展している分野がある一方で、学術分野、メディア分野、スポーツ分野での女性の参画の取り組みを加速させる必要があることや、男性の育児・家事労働等へのさらなる参画を促す施策、女性が指導的地位への参画に意欲を持てるような社会を形成する必要性を指摘した。
そのため、6次計画においても引き続き、「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となることを目指し、取組を強化させる」とし、さらに「その水準を通過点として、男女が社会の対等な構成員として政策・方針決定過程に共同して参画する機会が確保され、女性の参画拡大が継続的に進展するよう取組を進める。こうしたことにより、指導的地位に占める女性の割合が30%を超えて更に上昇し、2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指し、あらゆる分野での女性の参画拡大を進めていく」と掲げた。
東証プライム市場上場企業以外の企業でも取り組みを進めていく
こうした基本認識のもと、「政治分野」「司法分野」「経済分野」などの7分野に分け、それぞれの分野の女性参画の現状にあわせた基本方針や取り組みを掲げた。
このうち、労働施策に関係のある「経済分野」では、国際的に遅れをとっている企業の女性登用を加速するため、東証プライム市場上場企業を対象として「2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す」と政府が掲げた目標について、女性の登用が進んでいる企業とそうではない企業との進捗の差がみられることや、東証プライム市場上場企業以外の企業における取り組みも進めていく必要があることを強調した。
また、「女性活躍推進法に基づく男女間賃金差異の公表義務化に伴い、差異の把握や要因分析が進められているところ、差異の背景にあると考えられる登用の遅れやキャリア継続の課題等について、更なる分析や取組の推進を行うことが重要」だとした。
行動計画の策定、情報公表、ポジティブ・アクションの取り組みを要請
具体的な取り組みとしては、企業に対し、女性の活躍状況の把握・分析、その結果をふまえた目標設定、目標達成に向けた取り組みを内容とする事業主行動計画の策定、女性の活躍状況に関する情報公表、女性活躍の推進に向けて積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の取り組みを要請していく。
特に中小企業を対象として、女性の活躍推進に関する自社の課題をふまえた取り組み内容のあり方、男女間賃金差異の要因分析等について、個別企業の雇用管理状況に応じたコンサルティングを実施するとともに、こうした差異について容易に分析できるツールやマニュアル等の提供・活用促進による支援を展開していく。
第3分野:女性の所得向上の実現と経済的自立に向けた環境整備
第3分野では、①積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の推進等による女性の参画拡大・男女の均等な機会の確保②非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善の推進③多様な働き方における就業環境の整備、再就職等への支援④ハラスメントに係る意識啓発及び防止対策の徹底――の4つを重要な施策に掲げた。
登用の遅れの分析や管理職の長時間労働の改善を推進
①では、改正女性活躍推進法の着実な施行や、差異の背景にあると考えられる登用の遅れやキャリア継続の課題等について、さらなる分析や取り組みの推進を行う。また、女性が管理職を希望しない一因として考えられる管理職の長時間労働の改善や、長時間労働や転勤といった労働慣行を前提にしない働き方などを推進していく。
また、管理職登用については、非管理職の女性に対するメンター制度導入やロールモデルの提供・提示、管理職に必要なスキルを習得する研修の実施に向けてのマニュアルや好事例の周知啓発等の支援、管理職の時間外・休日労働の実態把握と長時間労働等の改善に係る対応を検討するとしている。中小企業等を対象として、女性の活躍推進に関する自社の課題をふまえた取り組み内容のあり方、男女の賃金の差異の要因分析等について、個別企業の雇用管理状況に応じたコンサルティングを実施する。
同一労働同一賃金ガイドライン見直しの議論結果をふまえた措置を講じる
②については、所得向上・経済的自立に向け、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を解消する同一労働同一賃金に向けた取り組みや、非正規雇用労働者に対するリ・スキリングの支援に取り組むとしている。
そのために、同一労働同一賃金ガイドライン等の必要な見直しについての議論の結果をふまえた所要の措置を講じることや、非正規雇用労働者に対し、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練等を実施した事業主に対する助成などを実施するとしている。
フリーランス、副業・兼業の就業環境の整備を行う
③については、多様な働き方が広がっていくなかで、フリーランスが安心して働けるよう、取引の適正化や就業環境の整備等を図ることや、フリーランスとして副業・兼業に取り組むことができるよう就業環境の整備を行う。また、出産・育児等によりキャリアにブランクがある女性の再就職支援のため、スキルのアップデートや人材不足分野のスキル習得等の支援を展開していく。
④については、各種ハラスメントが行われない職場づくりを促進するため、カスタマーハラスメントの防止措置を盛り込んだ改正労働施策総合推進法の周知・理解促進や、フリーランスに対するハラスメント対策を円滑に実施できるよう発注事業主に対する周知・啓発を行う。また、同法違反があった場合等には調査等適切に対応することを通じて履行確保を図るとしている。
第4分野:生涯を通じた男女の健康への支援
第4分野については、①生涯にわたる男女の健康の包括的な支援②仕事と健康課題の両立の支援③医療分野における女性の参画拡大――の3つの施策を掲げた。
女性特有の健康課題への支援を進める
このうち、②についてみていくと、女性がキャリア形成を図っていくためには、「月経随伴症状等の女性の健康課題への理解・支援等の『健康との両立』を推進する必要がある」と指摘。そのうえで、仕事と健康の両立を支援していくためには、「女性と男性それぞれの健康課題に関する研修・啓発の実施、プライバシーに配慮した上での健康診断の受診に対する支援、健康に関する相談先の確保等が重要である」としている。
また、女性が健康課題を抱えながらも働きやすい職場は、「男性を含めて全ての人々にとって働きやすい職場となること」だと強調し、柔軟な働き方といった取り組みを促進していくことや、女性の健康課題に取り組み、成果を上げている企業の事例も広く周知し、企業における女性の健康課題への取り組みを推進することも求められるとしている。
具体的には、女性の健康確保に向けた取り組みを推進していくため、プライバシーに配慮したうえで、職場の健康診断の問診票に月経随伴症状や更年期障害等に係る質問を追記することや、女性自身のヘルスリテラシーを高めるため、厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」による情報提供を行っていく。
取り組みを進める企業を評価する仕組みも検討
企業に対しては、改正女性活躍推進法において、女性の職業生活での活躍の推進にあたっては、女性の健康上の特性に留意して行わなければならない旨が盛り込まれたことをふまえ、こうした女性の健康課題の取り組みを積極的に行っている企業を評価する仕組みを検討するとした。
(調査部)
2026年5月号 男女間格差の記事一覧
- 2030年代には指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会を目指す ――第6次男女共同参画基本計画
- 男女賃金格差の現状と労働組合の取り組みの好事例を報告 ――連合の「2026春季生活闘争 3.8国際女性デー全国統一行動中央集会」


