診療報酬は2026年度、2027年度の2年度平均で3.09%引き上げ。うち賃上げ分は1.70%引き上げ
 ――2026年度の診療報酬改定

2026春闘の賃上げに向けた動き

2026年度の診療報酬改定が2025年12月24日に決まった。診察など医師の技術料にあたる「診療報酬」については2026年度と2027年度の2年度の平均でプラス3.09%とし、そのうち「賃上げ分」は2年度平均でプラス1.70%とした。2年度でそれぞれ3.2%分のベースアップの実現を支援するための措置を講じるなどとしている。診療報酬については2026年6月から施行する。

経営環境の悪化をふまえた緊急対応も盛り込む

診療報酬は、医療機関等が行う診察やサービスに対して公的医療保険から支払われる公定価格のことで、診察など医師の技術料にあたる「診療報酬」と、処方薬の価格である「薬価等」で構成されている。そのうち、「診療報酬」は、医療従事者の賃上げ原資にも充てられる。

改定は2年に1回行われている。一般的に医療機関の運営財源は診療報酬でまかなわれるが、昨今の物価高や賃上げによる人件費の高騰などにより、診療報酬の改定だけでは対応しきれず、厳しい経営環境にある医療機関もある。厚生労働省は2025年度補正予算で、医療従事者の処遇改善を支援する「医療・介護等支援パッケージ」の措置を盛り込んだ。今般の診療報酬改定に向けて、施設類型ごとの費用構造や経営実態をふまえて経営改善や医療従事者の処遇改善につながる的確な対応を行う方針を掲げ、前回の2024年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化をふまえた緊急的な対応なども盛り込んでいる。

2026年度だけでみた改定は国費2,348億円程度に相当

具体的な中身をみていくと、診療報酬については、2026年度と2027年度の2年度平均で3.09%引き上げる。各年度の改定率は、2026年度がプラス2.41%、2027年度がプラス3.77%。2026年度のプラス2.41%は2026年度国費2,348億円程度にあたる(図表)。

図表:診療報酬改定の内訳
画像:図表

(公表資料から編集部で作成)

3.09%の内訳をみると、①「賃上げ分」プラス1.70%②「物価対応分」プラス0.76%③「食費・光熱水費分」プラス0.09%④「2024年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化をふまえた緊急対応分」プラス0.44%⑤「後発医薬品への置き換えの進展をふまえた処方や調剤に係る評価の適正化、実態をふまえた在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取組強化等による効率化」マイナス0.15%⑥「①~⑤を除く改定分」プラス0.25%――となっている。

看護補助者と事務職員については5.7%のベア実現に向け支援

「賃上げ分」について年度ごとにみると、2026年度はプラス1.23%、2027年度はプラス2.18%。医療現場での生産性向上の取り組みとあわせ、2年度でそれぞれ3.2%分のベースアップ(看護補助者と事務職員については他産業との人材獲得競争に直面していることから5.7%のベースアップ)の実現を支援するための措置を講じ、施設類型ごとの職員の規模や構成に応じた配分となるよう措置する。

また、プラス1.70%のうちプラス0.28%については、2024年度診療報酬改定において新設された「ベースアップ評価料」で対象とされた看護職員、病院薬剤師等の医療関係職種に加えて、入院基本料等で措置することとされた40歳未満の勤務医師や事務職員等も対象に盛り込み、幅広い職種での賃上げの実現を目指す。なお、この措置は「特例的な対応」として位置づけ、「今後の関係調査等において実績等を検証し、所要の対応を図る」としている。

物価高対応分は2年度平均でプラス0.76%

「物価対応分」については、2026年度ではプラス0.55%、2027年度ではプラス0.97%としている。特に2026年度以降の物価上昇への対応として、2年間平均でプラス0.62%(2026年度プラス0.41%、2027年度プラス0.82%)を充てる。

また、これらの引き上げは、「診療報酬に特別な項目を設定することにより対応する」とし、「それぞれの施設類型ごとの費用関係データに基づき配分される」としている。その配分は、病院がプラス0.49%、医科診療所がプラス0.10%、歯科診療所がプラス0.02%、保険薬局がプラス0.01%となっている。

病院のうち、専門性が高い高度機能医療を担う病院については、使用する医療機器の汎用性が低いことや、それにより価格競争の原理が働きにくく、物価高の影響を受けやすいこと等をふまえ、0.14%を物価対応分として引き上げる「特例的な対応」を講じる。

食費は患者負担で原則1日40円分を引き上げる

「食費・光熱水費」については、入院時の食費基準額を患者負担分として原則1食40円引き上げ、低所得者については所得区分等に応じて1食20円~30円を引き上げる。光熱水基準額について、患者負担分として原則1日60円を引き上げる。なお、指定難病患者等については据え置く。

「2024年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化をふまえた緊急対応分」については、配分にあたって「施設類型ごとのメリハリを維持する」とし、その内訳をみると、病院はプラス0.40%、医科診療所ではプラス0.02%、歯科診療所ではプラス0.01%などとなっている。

今後も物価動向をふまえ必要な調整を行う

今回の改定は、2027年度以降の経済・物価動向等への対応について言及している。実際の経済・物価の動向が2026年度診療報酬改定時の見通しから大きく変動し、医療機関等の経営状況に支障が生じた場合には、診療報酬のうち賃上げ分、物価対応分、食費・光熱水費分については、2027年度予算編成時において「加減算を含め更なる必要な調整を行う」と明記した。

そのため、必要な情報を正確に把握するために、2026年度の医療機関の経営状況等について調査を実施するとし、2028年度以降の診療報酬改定における実際の経済・物価の動向や経営状況等をふまえた対応のあり方についても検討する姿勢を示している。

医師会は評価する一方、医労連は抗議の声明

日本医師会のプレスリリースによると、松本吉郎会長は12月24日の定例記者会見で、今回の診療報酬改定についての同会の見解を表明。「インフレ下での『今後の道しるべ』となる極めて重要な改定となった」「今回、通常の改定とは別枠で賃上げ、物価対応のための財源を一定程度確保していただいた。大変感謝している」などと述べた。

一方、日本医療労働組合連合会(日本医労連)は、診療報酬改定の方針がほぼ固まった段階の12月22日に佐々木悦子委員長の声明を発表。「医療や介護、福祉労働者の賃金は、制度の特性上、診療報酬など政府が決定する公定価格が大きく影響する。2026年度の診療報酬改定は、医療従事者の賃上げに対する政府の姿勢といっても過言ではない。その判断が『微増』にとどまったことに対して、日本医労連は満身の怒りをもって抗議し、強く是正を求める」などと強調している。

(調査部)

2026年3月号 2026春闘の賃上げに向けた動きの記事一覧