正社員の賃上げ率が4.03%と昨年から0.41ポイント上昇
――日本商工会議所・東京商工会議所の「中小企業の賃金改定に関する調査」
各種調査からみる賃上げ等の状況
日本商工会議所と東京商工会議所(ともに小林健会頭)は6月4日、「中小企業の賃金改定に関する調査」の結果を公表した。それによると、正社員の賃上げ額(月給)の加重平均は1万1,074円で、賃上げ率は4%を超えて4.03%となった。賃上げ額は2024年度調査を1,412円、賃上げ率は0.41ポイントそれぞれ上回った。
調査は全国47都道府県の各地商工会議所を通じた企業への依頼により、2025年4月14日から5月16日にかけて実施。3,042社から回答を得た。
正社員の賃上げ額は1万1,074円、約3割の企業は5%以上の賃上げ率
2024年4月と2025年4月の両期間に在籍し、かつ雇用形態や労働時間の変更がない従業員について、正社員の月給とパート・アルバイト等の時給における賃上げ状況を確認した。
正社員からみていくと、2025年度の賃上げ額(月給、加重平均)は1万1,074円、賃上げ率は4.03%となっており、2024年度調査をそれぞれ1,412円、0.41ポイント上回った。
賃上げ率の区分別の割合をみると、「6%以上」が21.1%、「5%以上6%未満」が9.2%となっており、両者を合わせた計30.3%が賃上げ率5%以上となっている。2024年度調査と比べると、賃上げ率5%以上の割合は約6ポイント上昇している。
業種別にみると、賃上げ額は「情報通信・情報サービス業」が1万5,860円で最も高く、「金融・保険・不動産業」(1万5,293円)、「建設業」(1万1,429円)、「卸売業」(1万1,426円)、「その他サービス業」(1万1,412円)、「製造業」(1万1,014円)などと続く。
一方、賃上げ率では、「情報通信・情報サービス業」が5.31%で最も高く、「金融・保険・不動産業」(5.11%)も5%超となっている。一方、「医療・福祉・介護業」(7,002円、2.61%)は2%台にとどまっている。
20人以下では賃上げ額は9,568円、賃上げ率は3.54%
従業員20人以下の企業でみると、2025年度の賃上げ額(月給、加重平均)は9,568円、賃上げ率は3.54%となっており、2024年度調査をそれぞれ767円、0.20ポイント上回った。全体と比較すると、賃上げ額は1,506円低く、賃上げ率は0.49ポイント低くなっている。
賃上げ率の区分別の割合は、「6%以上」が19.7%、「5%以上6%未満」が7.3%となっており、両者を合わせた計27.0%が賃上げ率5%以上となっている。2024年度の調査と比較すると、賃上げ率5%以上の割合は4.5ポイント上昇した。
パート・アルバイト等の賃上げ額は46.5円
パート・アルバイト等についてみると、賃上げ額(時給、加重平均)は46.5円、賃上げ率は4.21%となっており、2024年度からそれぞれ8.9円、0.78ポイント上昇した。
賃上げ率の区分別の割合は、「6%以上」が22.0%、「5%以上6%未満」が13.6%となっており、両者を合わせた計35.6%が賃上げ率5%以上となっている。
ただし、従業員20人以下の小規模企業に限ってみると、賃上げ額は前年より5.9円低い37.4円で、賃上げ率も同0.58ポイント低下の3.30%。賃上げ率のレンジも、「5%以上の賃上げ」(「6%以上」19.6%と「5%以上6%未満」11.8%の計)が3割(31.4%)を超える一方、3割超(36.8%)が賃上げを見送る(「賃上げ率0%」35.6%と「賃下げ」1.2%の計)など、二極化の傾向がうかがえる。
賃上げを実施する企業(予定を含む)は約7割
2025年度の賃上げの状況についてみると、「業績が好調・改善しているため賃上げを実施(予定を含む)」(前向きな賃上げ)が27.8%、「業績の改善がみられないが賃上げを実施(予定を含む)」(防衛的な賃上げ)が41.8%(図表1)で、賃上げ実施(予定を含む)企業の割合は約7割(69.6%)となっている。2024年度の同時期に実施した調査と比べると、4.7ポイント低下した。一方、「現時点では未定」とする企業は3.1ポイント上昇して、23.5%になっている。
図表1:賃上げの状況
(公表資料から編集部で作成)
賃上げ実施予定企業(「業績が好調・改善しているため賃上げを実施(予定を含む)」もしくは「業績の改善がみられないが賃上げを実施(予定を含む)」と回答した企業)を100とした場合の「前向きな賃上げ」と「防衛的な賃上げ」の割合をみると、「前向きな賃上げ」が39.9%、「防衛的な賃上げ」が60.1%で、「防衛的な賃上げ」のほうが多くなっている。
20人以下では賃上げ実施・予定企業は6割弱にとどまる
賃上げの状況を従業員20人以下の小規模企業に絞ってみると、「業績が好調・改善しているため賃上げを実施(予定を含む)」が21.5%、「業績の改善がみられないが賃上げを実施(予定を含む)」が36.2%で、賃上げ実施(予定を含む)企業は6割弱(57.7%)となっている(図表2)。
全回答企業での結果より約12ポイント低く、また、2024年度の同時期に実施した調査(63.3%)より約6ポイント低くなっている。
図表2:賃上げの状況(20人以下の小規模企業)
(公表資料から編集部で作成)
賃上げ実施予定企業を100とした場合の「前向きな賃上げ」と「防衛的な賃上げ」の割合をみると、「前向きな賃上げ」が37.2%なのに対し、「防衛的な賃上げ」は62.8%となっており、「前向きな賃上げ」の割合は全回答企業の結果を約3ポイント下回っている。
前向きな賃上げの割合は「金融・保険・不動産業」がトップ
全回答企業における賃上げを実施した企業(予定を含む)の割合を業種別にみると、「製造業」が78.8%で最も高く、次いで「卸売業」(77.1%)、「情報通信・情報サービス業」(72.2%)、「運輸業」(71.7%)、「建設業」(71.1%)などの順となっている。一方、最も低いのは「宿泊・飲食業」の57.1%で、「小売業」も58.6%と6割以下にとどまっている。
賃上げ実施予定企業を100とした場合の「前向きな賃上げ」の割合をみると、「金融・保険・不動産業」が48.6%で最も高く、「情報通信・情報サービス業」(47.7%)、「宿泊・飲食業」(46.6%)などと続く。一方、「医療・福祉・介護業」では「前向きな賃上げ」は33.3%にとどまり、「防衛的な賃上げ」が66.7%にのぼった。
正社員の賞与・一時金は2割超が昨年度を上回る水準
正社員における賞与・一時金の支給状況をみると、「昨年度を上回る水準で支給(予定を含む)」が2割超(24.1%)、「昨年度並みに支給(予定を含む)」が約4割(41.1%)となっている。
「昨年度を上回る水準で支給(予定を含む)」割合を業種別にみると、「情報通信・情報サービス業」(37.8%)や「その他」(33.0%)で3割を超えている。「宿泊・飲食業」(17.8%)、「金融・保険・不動産業」(18.7%)は2割を下回った。
(調査部)
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