大手の回答・妥結のアップ率は2年連続で5%超水準に
 ――経団連の2025年春季労使交渉の大手企業業種別回答状況

各種調査からみる賃上げ等の状況

経団連(筒井義信会長)が5月22日に公表した「2025年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況(加重平均)」の第1回結果によると、大手97社の回答・妥結額の加重平均は1万9,342円となり、アップ率は5.38%で、2年連続で5%を超える水準となっている。

調査は、原則従業員500人以上の主要22業種に属する大手244社を対象に実施。21業種160社から回答があり、平均金額が不明な企業などを除く17業種97社(約61.9万人)の結果を集計している。回答・妥結額は定期昇給(賃金体系維持分)などを含む。

非製造業平均は1997年以降最も高い引き上げ額・アップ率に

それによると、大手97社の回答・妥結額の加重平均は1万9,342円で、同一企業の昨年実績(1万9,835円)から493円減少したものの、ほぼ同水準の引き上げ額となっている(図表)。アップ率は5.38%と昨年(5.75%)から0.37ポイント減少したものの、5%を超える水準は、1991年以来33年ぶりとなった昨年に引き続き、2年連続となった。

図表:2025年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況(加重平均)第1回集計
画像:図表

注1:平均欄の( )内は1社あたりの単純平均。

注2:(従)は従業員平均の数値を含む。

注3:集計社数が2社に満たない場合など数字を伏せた業種があるが、平均には含まれる。

注4:上記回答・妥結額は、定期昇給(賃金体系維持分)等を含む。

(公表資料から編集部で作成)

製造業82社の平均は、回答・妥結額が1万8,985円(昨年2万185円)、アップ率が5.34%(同5.95%)、非製造業15社の平均は、回答・妥結額が2万234円(同1万8,978円)で、アップ率が5.48%(同5.30%)。製造・非製造業別での集計を開始した1997年以降でみると、引き上げ額・アップ率ともに、製造業は過去2番目、非製造業では最も高い水準となった。

回答・妥結額が最も高い「建設」は唯一3万円台

業種別にみると、回答・妥結額が最も高いのは「建設」(4社)で、従業員平均で3万946円となり、昨年(3万1,384円)から438円減少するも、唯一3万円台となっている。アップ率は5.64%と、昨年(5.85%)から0.21ポイント下回った。

次いで高いのは「情報通信」(3社)で2万3,900円(昨年2万8,913円)、アップ率は7.97%(同10.03%)となっている。

このほかの業種をみると、「機械金属」(4社)が2万1,202円(同2万2,141円)でアップ率6.08%(同6.67%)、「造船」(3社)が2万918円(同2万5,324円)で5.94%(同7.61%)、「化学」(17社)が2万845円(従業員平均、同1万6,728円)で5.84%(同4.81%)、「非鉄・金属」(8社)が2万796円(同2万595円)で6.21%(同6.42%)などとなっている。

「商業」や「自動車」は全体から見て回答・妥結額が低め

回答・妥結額が最も低かったのは「商業」(3社)で1万5,368円(従業員平均、同1万4,769円)。アップ率は3.73%(同3.69%)。次いで低いのは「自動車」(8社)の1万6,957円(同1万8,081円)で、アップ率は4.72%(同5.19%)だった。

(調査部)

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