昨年の春闘で妥結した労働者1,000人以上の企業の85.8%がベースアップを実施し、ベア額は1万3,000円を超える
――中央労働委員会「2024年賃金事情等総合調査」の集計結果
国内トピックス
中央労働委員会が資本金5億円以上かつ労働者が1,000人以上の企業を対象に実施している「2024年賃金事情等総合調査」の集計結果(5月21日発表)によると、2024年の春闘で交渉が妥結した企業の85.8%がベースアップを実施した。2023年7月~2024年6月の1年間の労働者1人平均のベースアップ分は1万3,453円。ベースアップ分は前年の7,176円から大幅に増加した。
調査は2024年8月2日~9月12日に実施。資本金5億円以上、労働者1,000人以上などに該当する企業から独自に選定した380社を調査対象とした。回答を得た235社から航空、病院、農協団体等一部の企業を除く229社を集計対象とした。
■要求、妥結の状況
88.5%でベア要求があり、要求方式は「平均賃上げ方式」が約70%
介護事業所を除く158社で集計したところ、2024年の春闘で労働組合から賃金に関する要求があったのは148社(93.7%)。
要求内容(複数回答)は、「ベースアップの実施」が131社(要求があった企業のうち88.5%)、「定期昇給の実施・賃金体系維持」が101社(同68.2%)など。
要求方式(複数回答)は、「平均賃上げ方式」が104社(同70.3%)、「個別賃上げ方式」が29社(同19.6%)などとなっている。
要求があった企業のうち交渉が妥結したのは148社(同100.0%)。妥結内容(複数回答)は「ベースアップの実施」が127社(妥結した148社のうち85.8%)、「定期昇給の実施・賃金体系維持」が104社(同70.3%)などとなっている。
製造業のほうがやや高いベアの要求・妥結割合
製造業でみると、2024年の春闘で労働組合から賃金に関する要求があったのは87社(集計92社のうち94.6%)で、要求内容は、「ベースアップの実施」が78社(要求があった87社のうち89.7%)、「定期昇給の実施・賃金体系維持」が63社(同72.4%)など。
要求方式(複数回答)は「平均賃上げ方式」が64社(同73.6%)、「個別賃上げ方式」が15社(同17.2%)などとなっている。
要求があった企業のうち交渉が妥結したのは87社(同100.0%)。妥結内容(複数回答)は「ベースアップの実施」が77社(妥結した87社のうち88.5%)、「定期昇給の実施・賃金体系維持」が62社(同71.3%)などとなっている。
■賃金改定の状況
この1年間で賃金改定したほぼすべての企業がベア実施
基本給部分の賃金表がある148社のうち、2023年7月~2024年6月の1年間に賃金改定があったのは133社(基本給部分の賃金表がある148社のうち89.9%)となっている。その内容はほぼすべてベースアップの実施(132社)となっており、ベースダウンの実施はなかった。賃金を据え置いた企業は14社(同9.5%)。
同期間における定期昇給の実施状況をみると、定期昇給制度のある143社のすべてが実施している。昇給額は、昨年と同額とする企業が71社(定期昇給を実施した143社のうち49.7%)、増額が55社(同38.5%)、減額が15社(同10.5%)となっている。実施時期は4月~6月とする企業が121社(同84.6%)と最も多い。
製造業に限ってみてみると、2023年7月~2024年6月の1年間に賃金改定があったのは、80社(基本給部分の賃金表がある85社のうち94.1%)で、ベースアップを実施した企業は79社(同92.9%)、賃金を据え置いた企業は5社(同5.9%)。
同期間における定期昇給の実施状況をみると、定期昇給制度のある83社のすべてが実施している。昇給額について、昨年と同額とする企業が37社(定期昇給を実施した83社のうち44.6%)、増額が35社(同42.2%)、減額が10社(同12.0%)となっている。実施時期が4月~6月とする企業が71社(同85.5%)となっている。
労働者1人平均の賃金改定額・率は昨年に引き続き大幅にアップ
2023年7月~2024年6月の1年間の労働者1人平均の賃金改定額(昇給分+ベースアップ分)は1万7,505円、率で5.37%だった。ベースアップ分の額は1万3,453円、率で4.02%となっている。製造業では、労働者1人平均の賃金改定額は1万8,399円、率で5.55%となっており、ベースアップ分は1万3,119円、率にして3.95%となっている。
労働者1人平均の賃金改定額について経年での推移を2019年からみてみると、2019年~2022年までは約6,000円、率は2%前後でとどまっていたものの、2024年の調査で1万1,398円、率で3.58%と大幅に上昇した(図表)。今回、昨年の結果からさらに大幅に上昇し、上昇幅は2019年以降で最も大きくなっている。
図表:賃金改定額・改定率の推移
(公表資料から編集部で作成)
(調査部)
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