民営事業所で雇用されている障がい者数が110万人超える
 ――厚生労働省が2023年「障害者雇用実態調査」結果を公表

国内トピックス

厚生労働省が3月27日に公表した2023年の「障害者雇用実態調査」の集計結果によると、従業員規模5人以上の民営事業所に雇用されている障がい者数は、110万7,000人となった。5年前に実施した前回調査より25万人以上増えた。また、身体障がい者の平均勤続年数が12年2月となり、前回調査の10年2月を上回るなど、知的障がい者、精神障がい者、発達障がい者も含めたすべての障がい種別において、前回調査よりも長くなった。この5年間で障がい者雇用が着実に進展していることを裏付ける結果となっている。

調査は厚生労働省が民営事業所における障がい者の雇用実態を明らかにし、今後の障がい者雇用に関する施策の検討や立案に役立てることを目的に5年ごとに実施している。今回の調査は2023年6月に実施。対象は、常用労働者5人以上を雇用している民営事業所から無作為に抽出した約9,400事業所。回収数は、6,406事業所で、回収率は67.9%。企業が雇用している身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者、発達障がい者の雇用者数、賃金、労働時間などについて障害の種別ごとに調査している。

特に身体障がい者数が大きく増加

従業員5人以上の民営事業所に雇用されている障がい者数は110万7,000人となり、100万人を大きく超えた。前回調査が行われた2018年より25万6,000人増えた。

障がいの種別にみると、身体障がい者が52万6,000人(前回42万3,000人)、知的障がい者が27万5,000人(同18万9,000人)、精神障がい者が21万5,000人(同20万人)、発達障がい者が9万1,000人(同3万9,000人)となっており、すべての障がい種別とも増加した。特に身体障がい者数は前回から10万3,000人増え、他の障がい種別に比べ、増加幅が大きくなっている。

障がいの種類別にみると、身体障がい者について「肢体不自由」が35.4%(前回42.0%)、「内部障害」が30.6%(同28.1%)、「聴覚言語障害」12.2%(同11.5%)、「視覚障害」7.5%(同4.5%)となり、「肢体不自由」の割合は減少した。

知的障がい者について程度別にみると、「重度」が11.8%(同17.5%)、「重度以外」が81.0%(同74.3%)となり、「重度」の割合が5.7ポイント減少した。

精神障がい者について精神障害者保健福祉手帳の等級をみると、「3級」が43.0%と最も多く、「2級」が35.5%と続く。また、精神障がい者で最も多い疾病は「そううつ病(気分障害)」で17.0%となったが、46.3%の疾病名が「不明」だった。

発達障がい者について精神障害者保健福祉手帳の等級をみると、「3級」が41.1%と最も多く、「2級」が23.6%で続く。また、発達障がい者で最も多い疾病は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」(69.1%)で、「注意欠陥多動性障害」(15.2%)が次いで多い。

精神障がい者では週所定労働時間30時間以上が9ポイント増加

1週間の所定労働時間をみると、すべての障がい種別とも週所定労働時間が「週30時間以上」の割合が50%以上となった。身体障がい者は、同割合が75.1%となり、他の障がい種別に比べて割合が高かったものの、前回よりは4.7ポイント低かった。

精神障がい者では「週30時間以上」は前回調査より9ポイント増え、56.2%となった。発達障がい者では前回より0.9ポイント増え、60.7%。

「週20時間以上30時間未満」の割合は、すべての障がい種別とも減少し、特に精神障がい者は10.4ポイント減少して29.3%となった。なお、今回の調査から、「週10時間以上20時間未満」「週10時間未満」の区分が追加され、週20時間に満たない所定労働時間をより細かく把握できるようになっている。

身体障がい者だけでみると、「週30時間以上」が75.1%(前回79.8%)、「週20時間以上30時間未満」が15.6%(同16.4%)、「週10時間以上20時間未満」が7.2%で、「週10時間未満」が1.2%となっている。

知的障がい者では、「週30時間以上」が64.2%(前回65.5%)、「週20時間以上30時間未満」が29.6%(同31.4%)、「週10時間以上20時間未満」が3.2%で、「週10時間未満」が2.1%。

精神障がい者では、「週30時間以上」が56.2%(前回47.2%)、「週20時間以上30時間未満」が29.3%(同39.7%)、「週10時間以上20時間未満」が8.4%で、「週10時間未満」が2.7%となっている。

発達障がい者では、「週30時間以上」が60.7%(前回59.8%)、「週20時間以上30時間未満」が30.0%(同35.1%)、「週10時間以上20時間」が4.8%で、「週10時間未満」が3.9%だった。

正社員の割合がすべての障がい種別で前回より増

正社員(無期・有期を含む)として企業で雇用されている障がい者数の割合をみると、すべての障がい種別においてその割合が前回調査よりも増えている。特に身体障がい者が前回調査より7ポイント高い59.3%となり、6割に近づいた。

精神障がい者は前回調査よりも7.2ポイント増え、32.7%。発達障がい者も同様に前回調査より13.9ポイント増え、36.6%となった。知的障がい者の正社員の割合は0.5%増え、20.3%(前回19.8%)となった。

職業をみると、身体障がい者と精神障がい者では、「事務的職業」の割合が最も高く、同割合は身体障がい者が26.3%で、精神障がい者が29.2%となっている。

知的障がい者と発達障がい者では、「サービス業」の割合が最も高く、同割合は知的障がい者が23.2%で、発達障がい者が27.1%となっている。一方で、「保安の職業」「農林漁業の職業」「輸送・機械運転の職業」「建設・採掘の職業」の割合はいずれの障がい種別でも低かった。

平均賃金をみると、超過勤務手当を除く1カ月あたりの平均賃金は、発達障がい者以外は2万円程度上昇した。身体障がい者では23万5,000円(前回21万5,000円)、知的障がい者で13万7,000円(同11万7,000円)、精神障がい者で14万9,000円(同12万5,000円)、発達障がい者で13万円(同12万7,000円)となった。

すべての障がい種別で前回より平均勤続年数が増加

採用されてから調査日時点(2023年6月1日)までの平均勤続年数はすべての障がいの種別とも増加した。最も勤続年数が増加したのは精神障がい者で、増加幅は2年1月。

勤続年数を障害種別にみると、身体障がい者が12年2月(前回10年2月)、知的障がい者が9年1月(同7年5月)、精神障がい者が5年3月(同3年2月)、発達障がい者が5年1月(同3年4月)となっている。

企業にとっては適切な仕事の切り出しが課題

いずれの障がい種でも、雇用する際の課題が「ある」と回答した企業はそれぞれ6割以上となっている。

障がい者を雇用する際の課題(複数回答)は、いずれの障がい種別とも「会社内で適当な仕事があるか」の回答が70%以上となっている。

「会社内で適当な仕事があるか」の回答割合を障がい種別にみると、身体障がい者が77.2%、知的障がい者が79.2%、精神障がい者が74.2%、発達障がい者で76.9%。前回調査でも、選択肢のなかで「会社内で適当な仕事があるか」の回答割合が最も高く(身体障がい者は71.3%、知的障がい者は74.4%、精神障がい者は70.2%、発達障がい者は75.3%だった)、雇用障がい者への仕事の切り出しは5年を経過しても依然として主要な課題となっている。

雇用障がい者に対して配慮事項が「ある」と回答した企業の割合を障がい種別にみると、身体障がい者が58.7%、知的障がい者は61.0%、精神障がい者が63.3%、発達障がい者が38.0%。

企業が雇用障がい者に対して配慮していること(複数回答)を障がい種別にみると、「休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮」の回答割合が最も高いのは、身体障がい者(40.2%)と発達障がい者(61.2%)だった。「能力が発揮できる仕事への配置」の回答割合が最も高いのは、知的障がい者(51.1%)。「短時間勤務等勤務時間の配慮」については、精神障がい者で最も高い割合(54.3%)だった。

半数以上の企業が今後の障がい者雇用について「わからない」

企業の今後の障がい者雇用について尋ねると、すべての障がい種別とも「わからない」の割合が最も高かった。障がい種別にみると、身体障がい者で50.7%、知的障がい者で54.5%、精神障がい者で53.6%、発達障がい者で56.3%となっている。

「一定の行政支援があった場合に雇用したい」と回答した割合を、障がい種別ごとにみると、身体障がい者で22.3%、知的障がい者で16.6%、精神障がい者で16.7%、発達障がい者で18.4%。一方、「雇用したくない」と回答があった割合を、障がい種別ごとにみると、身体障がい者では14.2%、知的障がい者で22.5%、精神障がい者で23.1%、発達障がい者で19.3%だった。

障がい者を雇用しない理由(複数回答)は、「当該障害者に適した業務がないから」がいずれの種別でみても最も高くなっており、同割合を障がい種別にみると、身体障がい者で74.4%、知的障がい者で78.3%、精神障がい者で72.6%、発達障がい者で77.3%となっている。

(調査部)