一般労働者の賃金が2.1%増加となり、1994年以来の2%超え
――厚生労働省「2023年賃金構造基本統計調査」
国内トピックス
厚生労働省が3月27日に発表した「2023年賃金構造基本統計調査」結果によると、一般労働者(いわゆるフルタイム労働者)の月額賃金(賞与、残業代除く)は31万8,300円で、前年に比べ2.1%増加した。男女別にみると、男性は前年比2.6%増の35万900円で、女性は同1.4%増の26万2,600円。男女計と男性の賃金の前年比が2%超となるのは1994年以来のこと。
一般労働者の賃金は31万8,300円で過去最高額に
2023年の一般労働者の月額賃金は31万8,300円で、前年から2.1%増加し、データを取り始めた1976年以降で最高額となった。男女別では、男性は前年比2.6%増の35万900円に対して、女性は同1.4%増の26万2,600円。物価の変動を考慮しない名目賃金の推移をみると(図表1)、2000年以降はおおむね減少か横ばい傾向で推移しており、男女計および男性での2%を超える上昇は1994年以来のこと。
図表1:一般労働者の賃金の推移(男女別)
注:2020年より推計方法を変更している。
(公表資料から編集部で作成)
男性の賃金を100としてみた場合の女性の賃金は74.8で、前年から0.9ポイント低下しているが、長期的には男女間の賃金格差は縮小傾向にある(図表2)。
図表2:男女間賃金格差の推移(男性=100)
注:2020年より推計方法を変更している。
(公表資料から編集部で作成)
60歳以上で高い伸び
月額賃金の増加率を年齢階級別にみると、「65~69歳」が前年比4.7%増、「60~64歳」が同3.5%増と、比較的に年齢が高い層での増加が目立つほか、「~19歳」が前年比3.1%増、「20~24歳」が同2.8%増、「25~29歳」が同2.8%増と、若年層も3%前後の増加となっている。一方で30~59歳の各年齢階級での増加率は2%未満にとどまっている。
賃金カーブの形状を男女別にみると、男性は年齢が高くなるにつれて賃金が高くなっており、55~59歳(42万7,400円)でピークとなり、その後は下降している。女性も年齢が高くなるにつれて賃金が高くなり、50~54歳(28万5,900円)がピークとなっているが、男性に比べると賃金の上昇は緩やかとなっている。
大卒の35~54歳はおおむね横ばい
賃金を学歴別にみると、高校が28万1,900円(前年比3.0%増)、専門学校が30万200円(同2.0%増)、高専・短大が29万7,400円(同1.7%増)、大学が36万9,400円(同1.8%増)、大学院が47万6,700円(同2.7%増)となっている。
増加率を学歴別かつ年齢階級別にみると、高校はいずれの年齢階級でも2%を超えており、「20~24歳」(前年比5.4%増)、「25~29歳」(同5.5%増)などの若年で高い増加率が目立つ。大学は「65~69歳」(同11.4%)が目立って高いほか、20~34歳の各階級や55~64歳の各階級も増加しているが、35~54歳の各階級ではおおむね横ばいとなっている。
大企業は前年比0.7%減の34万6,000円
企業規模別にみると、1,000人以上の大企業が34万6,000円(前年比0.7%減)、中企業(100~999人)が31万1,400円(同2.8%増)、小企業(10~99人)が29万4,000円(同3.3増)となっている。
大企業について、増加率を年齢階級別にみると、「~19歳」(同2.7%増)、「20~24歳」(同3.0%増)、「25~29歳」(同1.6%増)などの若い世代が増加している一方で、「35~39歳」(同2.1%減)、「40~44歳」(同0.6%減)、「45~49歳」(同1.3%減)、「50~54歳」(同1.2%減)などは減少している。
男女ともに増加率は「正社員・正職員以外」のほうが高い
雇用形態別にみると、「正社員・正職員」が33万6,300円(前年比2.5%増)、「正社員・正職員以外」が22万6,600万円(同2.4%増)となっている。
男女別にみると、男性では「正社員・正職員」が36万3,600円(前年比2.8%増)、「正社員・正職員以外」が25万5,000円(同3.0%増)に対して、女性では「正社員・正職員」が28万1,800円(前年比2.0%増)、「正社員・正職員以外」が20万3,500円(同2.3%増)となっており、男女いずれにおいても、「正社員・正職員以外」のほうが「正社員・正職員」よりも増加率が高くなっている。
新規学卒者の賃金は、高校で18万6,800円、専門学校21万4,500円、高専・短大21万4,600円、大学23万7,300円、大学院27万6,000円だった。
短時間労働者の時給は3.3%増
短時間労働者の1時間あたりの賃金は1,412円(45.2歳、勤続6.3年)で、前年から3.3%上昇した。男性は1,657円(前年比2.0%増)、女性は1,312円(同3.3%増)となっている。
産業別にみると、「教育,学習支援業」が2,584円(前年比5.6%増)で最も高く、次いで「医療,福祉」が2,017円(同6.9%増)となっている。最も低いのは「宿泊業,飲食サービス業」の1,136円(同2.8%増)、次いで「製造」が1,171円(同0.5%減)となっている。「建設業」が1,577円(同11.9%増)で増加率が最も高かった。
(調査部)
2024年5月号 国内トピックスの記事一覧
- 一般労働者の賃金が2.1%増加となり、1994年以来の2%超え ――厚生労働省「2023年賃金構造基本統計調査」
- 派遣労働者の賃金が1.7%上昇して1万5,968円に ――厚生労働省が2022年度の「労働者派遣事業報告書」を公表
- 民営事業所で雇用されている障がい者数が110万人超える ――厚生労働省が2023年「障害者雇用実態調査」結果を公表
- 不妊治療中の従業員が受けられる支援に取り組んでいる企業の割合は26.5% ――厚生労働省が「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果を公表