70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は29.7%で前年から微増
 ――厚生労働省の2023年「高年齢者雇用状況等報告」

国内トピックス

厚生労働省が昨年12月に発表した2023年高年齢者雇用状況等報告の結果によると、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は29.7%で、1年前の前回調査から1.8ポイント増加した。企業規模別にみると、大企業(301人以上)が22.8%、中小企業(300人以下)が30.3%で、大企業では2割強にとどまる。定年の状況をみると、定年を65歳以上とする企業(定年制の廃止企業を含む)は30.8%と3割を超えた。

調査は、従業員21人以上の企業23万7,006社の2023年6月1日現在の状況をとりまとめた。2021年4月1日の改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が努力義務化されて以来、これが3回目の集計。

65歳までの雇用確保は「継続雇用制度の導入」が依然として約7割

65歳までの雇用を確保する高年齢者雇用確保措置(雇用確保措置)を実施済みの企業は99.9%。内訳をみると、「継続雇用制度の導入」が69.2%(前年比1.4ポイント減)と約7割を占め、「定年の引上げ」が26.9%(1.4ポイント増)、「定年制の廃止」が3.9%(前年と変わらず)となっている。

「継続雇用制度の導入」で65歳までの雇用を確保している企業のうち、対象者を「希望者全員」としているのは84.6%(前年比1.6ポイント増)。企業規模別にみると、中小企業が86.1%(1.5ポイント増)、大企業が68.1%(3.1ポイント増)で、中小のほうが「希望者全員」としている割合が高い。

また、そのうち、経過措置に基づき、対象者を「基準該当者」に限定している企業の割合は15.4%(1.6ポイント減)。企業規模別にみると、大企業が31.9%(3.1ポイント減)で、中小企業が13.9%(1.5ポイント減)となっている。

70歳までの就業確保措置は中小企業が大企業を上回る

70歳までの高年齢者就業確保措置(就業確保措置)を実施済みの企業は29.7%で、前回調査に比べ1.8ポイント増加した。企業規模別にみると、中小企業が30.3%(1.8ポイント増)、大企業は22.8%(2.4ポイント増)で、中小の実施済みの企業割合のほうが高くなっている。

就業確保措置を実施済みの企業の措置内容をみると、「継続雇用制度の導入」が23.5%(1.7ポイント増)と最も割合が高く、「定年制の廃止」が3.9%(前年と変わらず)、「定年の引上げ」が2.3%(0.2ポイント増)と続く(図表)。業務委託契約を締結する制度や、社会貢献事業に従事できる制度を導入する「創業支援等措置」は0.1%(前年と変わらず)だった。

図表:70歳までの就業確保措置の内訳
画像:図表

(公表資料から編集部で作成)

定年年齢を「65歳以上」とする企業がほぼ3割

定年制の状況をみると、定年制を廃止している企業は3.9%(前年と変わらず)で、定年年齢を設定している企業が96.1 %。定年年齢は「60歳」が66.4%(1.7ポイント減)、「61~64歳」が2.7%(0.2ポイント増)、「65歳」が23.5%(1.3ポイント増)、「66~69歳」が1.1%(前年と変わらず)、「70歳以上」が2.3%(0.2ポイント増)だった。定年を「65歳以上」とした企業(定年制の廃止企業を含む)の割合は30.8%と3割に達している。

60歳定年到達者の87.4%が継続雇用

60歳定年企業で、過去1年間(2022年6月1日~2023年5月31日)に定年に達した40万4,967人の動向を聞いたところ、継続雇用されたのは87.4%(前回比0.3ポイント増)で、そのうち、子会社等・関連会社等での継続雇用は3.3%(0.6ポイント増)。継続雇用を希望せず定年退職したのは12.5%(0.2ポイント減)だった。継続雇用を希望したが雇用されなかったのは0.1%(0.1ポイント減)。

経過措置により継続雇用の対象者を限定する基準がある企業で、過去1年間に基準を適用できる年齢(2023年度は64歳)に達した労働者のうち、基準に該当し引き続き継続雇用されたのは92.8%(1.6ポイント増)。継続雇用更新を希望しなかったのは6.2%(1.0ポイント減)、希望したが基準に該当せず継続雇用終了となったのは1.0%(0.6ポイント減)だった。

4割超の企業に70歳以上まで働ける制度あり

定年制度がなかったり、継続雇用制度があるなど、何らかの形で66歳以上まで働ける制度がある企業は43.3%(前年比2.6ポイント増)。企業規模別にみると大企業で40.2%(3.1ポイント増)、中小企業で43.5%(2.5ポイント増)だった。

制度の内容は、「定年制の廃止」が3.9%、「66歳以上定年」が3.4%、「希望者全員66歳以上の継続雇用制度」が11.2%、「基準該当者66歳以上の継続雇用制度」が12.9%、「その他66歳以上まで働ける制度」が11.9%となっている。

また、70歳以上まで働ける制度があるとした企業は41.6%で、前年比2.5ポイント増加し、4割を超えた。制度の内訳をみると、「定年制の廃止」が3.9%、「70歳以上定年」が2.3%、「希望者全員70歳以上の継続雇用制度」が10.9%、「基準該当者70歳以上の継続雇用制度」が12.6%、「その他70歳以上まで働ける制度」が11.9%だった。

(調査部)