70歳以上まで働ける企業の割合はほぼ4割で、この6年間で15ポイント以上の上昇
 ――厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」からみる65歳以降の雇用状況の推移

高齢者雇用の近年の動向

厚生労働省が昨年12月に公表した2022年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果をみると、66歳以上まで働ける企業の割合はほぼ4割まで伸びてきている。70歳以上まで働ける企業の割合は4割弱。一方、定年を66歳以上とする企業の割合は1割にも満たず、65歳以降の雇用形態は、継続雇用制度による再雇用などの形態が依然として中心となっている。

65歳定年は21.2%に到達

厚生労働省では毎年、従業員21人以上の企業の6月1日現在の高齢者雇用の状況について集計し、公表している。2017年以降の集計結果から、特に65歳以降の雇用確保がどこまで進んだのか、確認してみる。なお、以下で紹介する数値は、断りがない限り、常時雇用する労働者が31人以上の企業に限定して集計した数値である。

まず、定年を「65歳定年」とする企業の割合がどう推移しているのか、みていく。集計結果によると、2017年は15.3%で、その後、毎年ほぼ1ポイント上昇のペースでたどり、2021年に20.1%とようやく2割に到達(図表1)。2022年は21.2%となった。なお、21人以上の企業の集計では2022年の同割合は22.2%である。

図表1:定年の状況の推移(単位:%)
画像:図表1

(公表資料から編集部で作成)

定年が66歳~69歳の企業の割合は、2017年は0.7%だった。この6年間で割合はあまり上昇せず、2020年~2022年まではそれぞれ1.0%と変化がない。21人以上の企業の集計では2022年の同割合は1.1%である。

定年が70歳以上の企業の割合は、2017年は1.1%。その後の毎年の伸び幅は0.1ポイント~0.2ポイントであり、2022年でも1.9%と2%にも満たない。21人以上の企業の集計では2022年の同割合は2.1%である。

定年を廃止した企業の割合は、2017年が2.6%で、2020年(2.7%)までほぼ動きがなかったが、2021年に3.1%に上昇し、2022年も3.1%となっている。2021年4月から、70歳までを対象とした雇用措置・雇用以外の措置の実施が努力義務化された影響があらわれた可能性もある。なお、21人以上の企業の集計では2022年の同割合は3.9%である。

66歳以上まで働ける企業割合は5年間で10ポイント以上上昇

定年延長・廃止を含めたさまざまな措置を講じることによって66歳以上まで働けるようになっている企業の割合は、さかのぼることができる最も古い年である2018年で27.6%だったが、その後、2019年30.8%、2020年33.4%、2021年37.5%と着実に上昇しており、2022年は39.9%ともう一歩のところで4割という水準にまで達している(図表2)。なお、21人以上の企業の集計では2022年の同割合は40.7%である。

図表2:66歳以上、また70歳以上まで働ける企業の割合の推移
画像:図表2

(公表資料から編集部で作成)

70歳以上まで働ける企業の割合は、2017年は22.6%だったが、2020年に31.5%と3割台に乗り、2021年に35.7%、2022年に38.2%へと上昇。過去6年間で15ポイント以上、上昇した。なお、21人以上の企業の集計では2022年の同割合は39.1%となっている。

「創業支援等措置」の実施割合は0.1%

最後に、2022年結果から、70歳までの就業確保の状況について、より詳しくみる(以降は21人以上規模の企業についての結果)。70歳までの高年齢者就業確保措置(就業確保措置)を実施済みの企業は27.9%。27.9%の内訳をみると、「定年制の廃止」が3.9%、「定年の引上げ」が2.1%、「継続雇用制度の導入」が21.8%で、業務委託契約を締結する制度や社会貢献事業に従事できる制度を導入する「創業支援等措置」は0.1%(113社)にとどまる。

70歳までの就業確保措置の実施状況を規模別にみると、「21~30人」が31.3%、「31~50人」が30.2%、「51~100人」が27.1%、「101~300人」が23.3%、「301~500人」が20.1%、「501~1,000人」が19.7%、「1,001人以上」が21.7%と、おおむね規模が小さくなるほど実施割合は高くなっている。

産業別にみると、実施割合が最も高いのは「建設業」(37.9%)で、次いで「農、林、漁業」(37.1%)、「医療、福祉」(35.2%)、「運輸、郵便業」(34.6%)、「鉱業、採石業、砂利採取業」(31.9%)、「宿泊業、飲食サービス業」(31.5%)などの順で高くなっている。

70歳以上まで働ける制度がある企業の割合、39.1%の内訳をみると、「定年制の廃止」が3.9%、「70歳以上定年」が2.1%、「希望者全員70歳以上継続雇用」が10.3%、「基準該当者70歳以上継続雇用」が11.5%、「その他70歳以上まで働ける制度」が11.2%という状況となっている。

「66歳以上定年」とした3.2%の内訳をみると、「66~69歳」が1.1%、「70歳以上」が2.1%となっている。

(調査部)

2023年3月号 高齢者雇用の近年の動向の記事一覧