301人以上の事業主に「男女の賃金の差異」の開示を義務付け
――厚生労働省が女性活躍推進法の省令・告示を改正
スペシャルトピック
厚生労働省は7月8日、女性の活躍に関する情報公表項目として「男女の賃金の差異」を追加することなどを内容とする、女性活躍推進法の省令・告示の改正を行い、同日施行した。これにより、301人以上の事業主には、「男女の賃金の差異」の開示が義務付けられることになった。対象となる企業には、「正規」「非正規」「全ての労働者」ごとに男女の賃金差の割合について、事業年度終了後、おおむね3カ月以内に公表することが求められる。「男女の賃金の差異」の開示を義務化することについては、6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」で、今夏に実施することが盛り込まれていた。
これまでは情報公表項目に「男女の賃金の差異」は含まれていなかった
女性活躍推進法では、301人以上の事業主に対し、女性の活躍に関する情報を公表することを求めている。今回の改正前は、①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備――の両区分であらかじめ設定された公表項目のなかから、それぞれ1項目以上を選択して、計2項目以上の情報を公表しなければならないことになっていた。
また、改正前は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」で8項目、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」で7項目の公表項目を設定しており、「男女の賃金の差異」は項目に含まれていなかった。
「女性労働者に対する機会の提供」の区分で2項目を公表することに
今回の改正で、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に「男女の賃金の差異」の項目を新設した(表)。同時に、同項目は必ず公表しなければならない「必須項目」に位置づけた。なお、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の7項目については、変更はない。
表:女性の活躍に関する情報公表項目
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※ 今回の改正により、(1)の①~⑧から選択した1つと⑨、(2)の①~⑦から選択した1つを公表することになった。
これにより、301人以上の事業主は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」では「男女の賃金の差異」と、選択したもう1つの項目の計2項目を公表することになった。
「男女の賃金の差異」が情報公表項目で必須項目として新設されたことに伴い、一般事業主行動計画での状況把握と目標設定の項目における「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」の区分でも変更があり、「男女の賃金の差異」が、状況把握が必須である「基礎項目」に変更されることになった。ただし、これは301人以上の事業主だけが対象となる。
これにより一般事業主行動計画では、301人以上の事業主にとっては、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」の区分で「基礎項目」の対象となる項目数が改正前の2から3に増えることになる。なお、これまでの「基礎項目」は、「採用した労働者に女性労働者の割合」と「管理職に占める女性労働者の割合」の2つ。
正規、非正規、全ての労働者について女性の賃金が男性の何割なのかを算出
「男女の賃金の差異」の算出の方法はこうだ。まず、労働者を「男性」「女性」、「正規」「非正規」で4種類に分類。そのため、「女性・正規」「男性・正規」「女性・非正規」「男性・非正規」の4種類の労働者の銘柄ができることになる。そのうえで、4種類の労働者それぞれについて、直近の事業年度の総賃金と人員数を算出する。
なお、総賃金は、「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払う全てのものをいう」としている。また、退職金は除外する扱いとして差し支えないとしている。人員数については、「男女で異なる考え方をしない」とし、初回の公表以降、一貫性ある方法を採用するよう求めている。
そうして算出した総賃金をそれぞれの人員数で除し、平均年間賃金を算出する。さらに、それらをもとに、全ての労働者ベースでの年間平均賃金も算出する。
その後、「正規」「非正規」「全ての労働者」ごとに、「女性の平均年間賃金÷男性の平均年間賃金」の算式で、割合(パーセント)を算出し、公表する。
公表の時期については、「各事業主において、各事業年度が終了し、新たな事業年度が開始した後、速やかに公表する」とし、この場合の「速やかに」については「各事業年度が終了した後、おおむね3カ月以内とする」としている。
(調査部)
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