2021年3月の新着図書紹介

1.坂本 貴志著『統計で考える働き方の未来』筑摩書房

(2020年10月刊,286p,新書判)

急激な高齢化が進む日本では、将来の生活や仕事に対し、多くの人が不安を抱いている。日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は1980年の9.1%から2000年17.4%に、2020年には29.1%にまで上昇。2040年には35.3%にまで増加すると見込まれている。こうした超高齢社会では、「キチンとした年金はもらえるのか」「生活のために死ぬまで働かなければならないのか」という疑問が生じやすい。ある調査では、現在の仕事について「働かなくてもいまと同じレベルの生活を続けられるのなら辞めたいか」という問いに、半数近くが同意した。

しかし、本書は日本の未来をそんなに悲観的に考える必要はないと強調。将来の賃金や社会保障制度の行方を豊富な統計データを用いて描き出し、今後の日本人の働き方を前向きに展望する。ただし、そうなる大前提として、高齢者が参加する生涯現役社会の構築が必要と訴える。高齢者も働くことが当たり前の世の中が実現すれば、年金や医療費など現代日本が抱えている根本的な構造問題を解決する政策の糸口となりうるとの見方を示した。

請求番号:366.021/tok
書誌番号:JB00114173
ISBN:9784480073495

2. 濱田 孝一著『介護離職はしなくてもよい』花伝社

(2020年10月刊,211p,四六判)

ある調査で40代、50代を対象に将来の親の介護について聞いたところ、約8割が「不安がある」と回答した。著者は親の介護を行うためには、4つの余裕が必要だと述べる。すなわち、「気持ちの余裕」「時間の余裕」「体力の余裕」「金銭の余裕」。このなかで最も重要なのが「気持ちの余裕」だという。著者は今後確実に激増するのが「介護離職」だと指摘。厚生労働省の調査では介護を理由に仕事を辞める人は現在年間約10万人。介護は突然必要になることが少なくないが、介護休業の取得で気持ちに余裕を持ち、介護離職を回避する必要があると説く。

著者は、介護離職は企業・社会にとっても極めてリスクの高い選択だと警告。そうなる前に介護休業の取得率を向上させる必要性を主張する。現在の取得率はわずか2.2%。介護休業を取れない理由には、① 事前準備ができない ② 介護期間が想定できない ③ 休業者の年齢・業務内容――などがあるが、介護休業の目的は要介護者の生活・介護環境を整えることだという点に留意して取得すれば、あわてて離職をせずに済むとの考えを紹介する。

請求番号:369.26/kai
書誌番号:JB00114155
ISBN:9784763409447

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2020年12月~2021年1月の労働図書館受け入れ図書

  1. 増島 雅和ほか著『事例に学ぶサイバーセキュリティ』経団連出版(159頁,A5判)
  2. 労使関係実務研究会著『労務トラブル予防・解決に活かす“菅野「労働法」”3訂版』日本法令(461頁,A5判)
  3. 藻谷 ゆかり著『コロナ移住のすすめ』毎日新聞出版(222頁,四六判)
  4. 花見 忠著『労働問題六〇年』信山社出版(xi+485頁,A5判)
  5. 竹下 浩著『精神・発達・視覚障害者の就業スキルをどう開発するか』遠見書房(150頁,A5判)
  6. 網 あづさほか著『ハラスメントを行動科学で考えてみました。』生産性出版(253頁,四六判)
  7. 雪丸 武彦ほか編著『教職員の多忙化と教育行政』福村出版(247頁,A5判)
  8. 日下田 岳史著『女性の大学進学拡大と機会格差』東信堂(xiii+286頁,A5判)
  9. 大政 謙次編『持続可能な社会への道』日本学術協力財団(263頁,A5判)
  10. 山崎 亮一著『労働市場の地域特性と農業構造 増補版』筑波書房(xii+294頁,A5判)