2017年6月の新着図書紹介

1.森信 茂樹他著『税と社会保障でニッポンをどう再生するか』日本実業出版社

(300頁,四六判)

本書は、わが国で中間層の崩壊・二極分化が顕著に表れていると指摘。いま必要なのは中間層崩壊の防止に的を絞った政策だとし、現在の経済政策に欠けている国民の受益と負担の問題を真正面から議論する必要があるとの考えを示す。構造的問題として、①世代間の公平性の確保②所得再分配機能の強化による格差是正――の2点を強調。現在、先進国中最高水準の税率を上げれば、勤労意欲の低下や国外への資金逃避などを招くとし、「富裕高齢層」への負担の強化をまずすべきと述べる。一方で、中低所得の勤労世帯は、年金や医療保険の負担増が大きいため、欧米諸国で標準的な「勤労税額控除」の導入を提唱。最終章では、持続可能社会のための「累進消費税」を提言する。

請求番号:345.1/zei
書誌番号:JB00107920
ISBN:9784534054548

2.諏訪 康雄著『雇用政策とキャリア権』弘文堂

(xiii+343頁,四六判)

職業活動を核として展開されるキャリアの生涯にわたる形成を基礎づける「キャリア権」という法概念を提示した著者による論稿集。第1部では雇用政策をめぐる理論と枠組みを整理し、今後どこに力を注ぐべきかを示したうえで、これまでの能力開発法政策の遅れを指摘。続く第2部からなぜキャリア権を構想し、問題提起したかの背景を論じる。そのうえで、エンプロイアビリティ、キャリアデザイン、若年・中高年におけるあり方、大学におけるキャリアカウンセリングなど関連する広範なテーマに沿ってキャリア権の展開を指し示す。世紀の転換前後の時期に発表した論文をテーマ別に掲載しており、雇用政策とキャリアをめぐる労働法分野からの模索をたどることが可能。

請求番号:366.21/koy
書誌番号:JB00108033
ISBN:9784335354540

3.安藤 潤著『アイデンティティ経済学と共稼ぎ夫婦の家事労働行動』文眞堂

(ix+226頁,A5判)

アイデンティティ経済学とは、アイデンティティ(国や民族、組織など特定集団への帰属意識)を経済モデルに取り込み、ゲーム理論的観点から経済主体が組織や集団をうまく運営するために何が重要なのかを探求する学問。ノーベル経済学賞を受けたアカロフが提唱した理論的フレームワークだ。本書では、夫の家庭外労働時間分担比率が極めて小さいなか、夫婦がどのような家庭内労働分担行動をとるかを検証。アンケート調査によると、夫のジェンダー・アイデンティティの喪失が夫だけでなく妻の家庭内労働分担行動にも影響を与えることがわかった。さらに、夫はジェンダー・ディスプレイ(逸脱中立化)行動をとることが十分にありえることを検証し、政策的含意を提起。

請求番号:366.38/aid
書誌番号:JB00108030
ISBN:9784830949241

4.首藤 若菜著『グローバル化のなかの労使関係』ミネルヴァ書房

(iv+287頁,A5判)

経済のグローバル化とともに、これまで一国内で機能してきた労使関係は、どのように国境を超えて適用されるのだろうか。労使関係は、政労使の三者で構成される。グローバル化の進行は、この三者の活動範囲に大きなズレを生じさせた。とりわけ、世界中に生産工場と開発拠点を持つ大手自動車メーカーにとっては、グローバルな労働規制の実情や各国における労使関係の展開に大きく左右される。こうしたなか、本書はグローバル・ユニオンと企業による国際的な協定の現状および労組の国際的ネットワークの実態を解明。こうした新たな試みを通じて、労使を拮抗させる力も働いているとし、伝統的に労組が強い自動車産業を軸に、グローバルな労使関係の可能性を探る。

請求番号:366.5/gur
書誌番号:JB00108032
ISBN:9784623079094

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2017年3月~4月の労働図書館受け入れ図書

  1. 服部 治著『海外日系企業の人材形成とCSR』同文舘出版(10+234頁,A5判)
  2. 両角 道代著『労働法 第3版』有斐閣(xxv+364頁,A5判)
  3. 桑村 裕美子著『労働者保護法の基礎と構造』有斐閣(xxi+378頁,A5判)
  4. 藤岡 伸明著『若年ノンエリート層と雇用・労働システムの国際化』福村出版(496頁,A5判)
  5. 二神 恭一他著『障害者雇用とディスアビリティ・マネジメント』中央経済社(vii+7+291頁,A5判)
  6. 藤倉 哲郎著『ベトナムにおける労働組合運動と労使関係の現状』東海大学出版部(xxi+306頁,A5判)
  7. 岡田 昌毅編著『働くひとの生涯発達心理学』晃洋書房(x+210頁,A5判)
  8. 北 健一著『電通事件:なぜ死ぬまで働かなければならないのか』旬報社(126頁,四六判)
  9. 石田 浩編『教育とキャリア』勁草書房(viii+286頁,A5判)
  10. 榎本 博明著『「おもてなし」という残酷社会』平凡社(207頁,新書判)