2013年11月の図書紹介(2013年10月受け入れ図書)

1.東大社研他編『希望学あしたの向こうに』東京大学出版会(ⅷ+429+8頁,B6判)

 『希望学』全4巻に引き続き、2009年に開始された福井調査の成果。福井新聞に連載されたエッセーに加筆。序章、本文27章、結章で構成、政治・経済、生活・家族、文化・歴史別に編集。希望と社会との関係を切り拓く試みである。日本の原風景の一つと見なす福井の奮闘が、困難の中にある各地に希望を育むことを編者達は切望している。

2.稲上毅著『ヴェブレンとその時代』新曜社(703頁,A5判)

 『有閑階級の理論』や「顕示的浪費」で知られるヴェブレン(1857~1929)は、いかに生き、いかに思索したのか。境界人、ユートピアン、懐疑主義者等々、多様な性格を覗かせるヴェブレン踏査の果てに、終に600頁余の大作として本書を公刊。ヴェブレン詣では当分打ち止めとなるのか、はたまた、豊饒な成果は、一層の探求へと誘うのか。

3.真家陽一編著『中国新時代の経営戦略』JETRO(ⅶ+307頁,A5判)

 産業構造の転換、少子高齢化の進展、環境問題の深刻化等、見通しが困難な中国の経済・ビジネス動向を展望するための視点の提供が本書の目的。持続的経済成長に向けた課題、環境・エネルギー問題、サービス産業の将来、日本企業の中国ビジネスの留意点、の4部構成。JETRO『月刊中国経済』掲載論文に加筆・修正、最近の動向も付加。

4.シェリル・サンドバーグ著『Lean in(リーン・イン)』日本経済新聞出版社(301頁,B6判)

 会社での交渉術、メンターの見つけ方、キャリア設計等実務的ノウハウを、今最も注目を集めているフェイスブックCOOが、統計も多用して伝授。リーン・インは、「一歩踏み出せ」という女性支援のメッセージ。長時間労働や保育所等の未整備、職場・家庭の協力不足等、女性が働き続ける環境が特に厳しい日本にこそ相応しいだろう。

5.Dave Gray他著『コネクト』オライリー・ジャパン(ⅹⅹⅰ+294頁,A5判)

 企業存続のためには、効率性を最優先する専門化した企業から、顧客との相互接続を重視する企業への変革が必要と主張。半自律的なユニットが緩やかに結合する、ネットワーク型であるコネクト企業は、現場実験をフィードバックする学習する有機体でもある。経営者の役割を強調する本書は、企業におけるNPM理論の書の趣ももっている。

6.宮本太郎著『社会的包摂の政治学』ミネルヴァ書房(ⅶ+280+6頁,A5判)

 経済格差・貧困として現れる社会的排除に対する処方箋である社会的包摂に関する欧米の政策展開を紹介、争点の検討も加え、非生産主義的包摂社会の可能性を追究。経済政策、雇用政策、社会保障の連携を求めるとともに、現実の政策としては、アクティベーション型包摂政策を展望する。大幅な加筆・修正が加えられた既発表論文等で構成。

7.大竹文雄他編著『最低賃金改革』日本評論社(ⅹⅱ+190頁,A5判)

 政府が主体的に賃金の引上げを行う手段である最低賃金をテーマに、経産研がワークショップを開催。エビデンスに基づく議論が行われてこなかったという問題意識の下、内外の最低賃金に関する理論的・実証的研究の紹介、大規模パネルデータによる分析等の後の最終章で、貧困対策として、給付付き税額控除、現物給付の充実が有効と指摘。

8.松村文人編著『企業の枠を超えた賃金交渉』旬報社(229頁,A5判)

 賃金引上げのための戦後の産業レベル交渉・企業横断交渉の発展・後退・終了の過程を明らかにし、企業の枠を超えて形成された労使関係の実像に迫ることが狙い。3人の研究者による3年間の研究会の成果である。実質的な産業レベル交渉が行われた私鉄、石炭、海運等の6産業を取り上げ、当時の担当者へのヒアリング等により実態を追究。

9.乾彰夫編『高卒5年どう生き、これからどう生きるのか』大月書店(365頁,B6判)

 ノンエリートの高卒者に対する、2002~08年に行われた追跡インタビュー調査の成果。高卒者が実際に体験する学校から職場への移行、離家、家族形成のプロセスを浮かび上がらせている。2つの高校の89人で始められた調査は、5回目の最終調査では31人となったが、マクロデータでは想像困難な現場実態を迫力をもって描出している。

10.野村総合研究所他著『なぜ、日本人はモノを買わないのか?』東洋経済新報社(ⅹⅱ+202頁,A5判)

 野村総合研究所が1997年以来、訪問留置法による6回の「生活者1万人アンケート調査」を実施。長期時系列データにより、日常生活と消費動向を追跡。2007年に1人当たり消費支出がピークに達したが、6つのキーコンセプト、5つのセグメント消費者、7つの消費者攻略法で消費動向を把握、企業のマーケティング戦略立案を支援する。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2013年8月-2013年9月に労働図書館受け入れ

  1. 根本彰他編『情報資源の組織化と提供』東京大学出版会(ⅷ+198頁,A5判)
  2. 牧野広義著『知のエッセンス』学習の友社(127頁,B6判)
  3. 河合江理子著『自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい』ダイヤモンド社(ⅹⅹⅰ+214頁,B6判)
  4. NHK「プロフェッショナル」制作班著『運命を変えた33の言葉』NHK出版(249頁,新書判)
  5. 大西康夫編『習近平政権の中国』アジア経済研究所(ⅷ+163頁,A5判)
  6. 大岳秀夫著『戦後政治と政治学(新装版)』東京大学出版会(ⅷ+226頁,B6判)
  7. ジェフリー・A.ベーダー著『オバマと中国』東京大学出版会(ⅲ+301+ⅹⅹⅳ頁,B6判)
  8. 寺田貴著『東アジアとアジア太平洋』東京大学出版会(ⅹⅲ+299頁,A5判)
  9. 加藤景司著『意欲のある人、求めます。ただし60歳以上』PHP研究所(221頁,B6判)
  10. 倉重公太朗他著『なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか』労働調査会(234頁,新書判)
  11. 両角道代他著『労働法(第2版)』有斐閣(ⅹⅹⅶ+367頁,A5判)
  12. 労使関係実務研究会著『労務トラブル予防・解決に活かす“菅野「労働法」”』(401頁,A5判)
  13. 今野晴貴著『ヤバい会社の餌食にならないための労働法』幻冬舎(137頁,文庫判)
  14. ILO著『雇用は二番底からの回復途上にある』一灯舎(ⅹⅵ+175頁,B5判)
  15. 木曽順子著『インドの経済発展と人・労働』日本評論社(ⅵ+208頁,A5判)
  16. 鈴木克也編著『はたらく』エコハ出版(230頁,A5判)
  17. 森岡孝二著『過労死は何を告発しているか』岩波書店(ⅳ+338頁,文庫判)
  18. 末木新著『インターネットは自殺を防げるか』東京大学出版会 (ⅶ+209頁,A5判)
  19. 澤田康幸他著『自殺のない社会へ』有斐閣(ⅹ+227頁,A5判)
  20. 菊池馨実編『ふくしま・震災後の生活保障』早稲田大学出版部(ⅴ+129頁,A5判)