裁量労働についての調査

日本労働研究機構 発表
平成12年11月

25.0%の企業で、企画業務型裁量労働制の導入に向けて現在検討中
実施上の課題は、評価制度の充実、管理者教育の徹底
~裁量労働についての調査(労働に関するWEB企業調査)~

I.調査の概要

 本調査は、今年4月から、これまでの裁量労働制(いわゆる「専門業務型裁量労働制」)に加え、新たな裁量労働制(いわゆる「企画業務型裁量労働制」)が施行されたことを踏まえ、裁量労働をめぐる職場の実態、企業における裁量労働制の導入状況等を明らかにすることをねらいとして実施したものである。
 上場企業と店頭登録企業合わせて3437社に調査への協力をお願いし、そのうちの288社から協力をいただいた。また、調査の実施期間は、平成12年10月10日~10月24日である。
 なお、本調査は、WEB上に調査システムを構築し実施したものであり、インターネットの日本労働研究機構ホームページ上に調査票を設定し、回答をオンラインで提出していただいた。

II.調査結果の概要<骨子>

裁量労働についての調査(労働に関するWEB企業調査)(PDF:85KB)

1.裁量労働をめぐる職場の実態

(1) 労働者の裁量にゆだねる必要性が高まっているとする企業割合は61.5%
 企業の業務実態をみた場合に、労働時間の配分や仕事の進め方を労働者の裁量にゆだねる必要性が高まっているとする企業割合は、61.5%。産業別ではサービス業で71.9%、従業員規模別では、1000人以上の企業で76.8%と高くなっている。必要性が高まっているとする企業について、裁量にゆだねることがふさわしい業務をみると、研究・開発(88.1%)、経営企画(75.1%)、営業企画(72.9%)が高くなっている。(図1、図2、図3、図4)

(2)労働時間ではなく成果で評価してほしいとする労働者の意見があるとする企業割合は71.2%
 労働者側から、労働時間ではなく仕事の成果を見て評価してほしいとする意見が、「かなりある」は12.2%、「ある」とする企業割合は59.0%。そのような意見がある労働者の従事する業務をみると、研究・開発(74.6%)、営業企画(54.6%)で高い。全体の傾向としては、企業として裁量にゆだねることがふさわしいとした業務とほぼ一致しているが、一部に異なるものもある。(図5、図6)

2.裁量労働制の導入の有無

(1)企画業務型裁量労働制を知っている企業は85.4%
 裁量労働制の制度を知っているか聞いたところ、「専門業務型、企画業務型、いずれも知っている」企業が70.1%、「企画業務型裁量労働制は知っている」は15.3%。企画業務型裁量労働制を知った経緯は、「労働省(都道府県労働局、労働基準監督署)からの情報」とする企業が67.9%と最も高い。(図9、図10)

(2)企画業務型裁量労働制の導入に向けて、機械関連製造業が31.8%と高い検討割合
 企画業務型裁量労働制の導入状況をみると、「導入している」とするものは1.4%と少ないが、「現在導入に向けて検討中」が25.0%となっている。産業別にみると「現在導入に向けて検討中」とした企業割合は、製造業で28.4%、その中で特に機械関連製造業が31.8%と高くなっている。また、従業員規模別にみると、「現在導入に向けて検討中」は1000人以上企業で37.4%、1000人未満企業で18.5%と、大企業で高い。(図11、図12、図13)。

(3)企画業務型裁量労働制を実施するための今後の課題は、評価制度の充実、管理者教育の徹底
 「現在導入に向けて検討中」と回答した企業について、企画業務型裁量労働制を実施していくうえでの今後の課題をみると、「労働者の働きがいを引き出すための評価制度の充実」が90.3%と最も高く、「上司による公平な労働者の評価等のための管理者教育の徹底」が84.7%とこれに次ぐ。
 従業員規模別にみると、1000人未満企業では「労働者の働きがいを引き出すための評価制度の充実」、「上司による公平な労働者の評価等のための管理者教育の徹底」が1000人以上企業を上回っており、1000人未満企業では、裁量労働制を有効に機能させるための評価システムの構築が特に課題となっていることがわかる。(図14、図15)

(4)企画業務型裁量労働制の導入・検討をしていない理由
 労働時間の配分や仕事の進め方を労働者の裁量にゆだねる必要性が高まっているとする企業に限って、企画業務型裁量労働制を導入しないことを決定、または導入に向けての検討をしない理由をみると、「企画業務型裁量労働制の手続きが煩雑である」が45.4%、「現行の労働時間管理を変更する必要性を感じない」が30.6%となっている。(図17)。

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