中高年齢者の活躍の場についての将来展望
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調査研究の目的、手法
中高年齢者が今後どういう職場で活躍できるか。これを探るため、(1)性・年齢別に、産業又は職種別就業者数の将来推計を行った。また、これに関連し、(2)マクロデータにより最近の中高年齢者の就業動向を分析するとともに、(3)企業へのアンケート調査により中高年齢者の職業能力、継続雇用、団塊の世代への対応等を調べた。
なお、将来推計は、雇用政策研究会「労働力需給の展望と課題」(1999年)の推計値を基本に、1995年と2000年の国勢調査によって得られた性・年齢別の産業又は職種別傾向をコーホートにより将来延長する手法を用いた。
研究成果の要旨
1 中高年齢者の就業吸収力を高めてきた職業
〜年齢計で需要が伸びた職種が中高年齢者にも有望〜
どのような分野で中高年齢者の活躍が期待できるのか。これをみるため、(1)年齢計でその職種の需要が拡大したか、(2)中高年齢者が働ける職種か、という2つの観点から職種をピックアップした。(2)をみる具体的な指標としては、中高年齢層におけるコーホート入退出率を職種平均と相対比較したものを用いた。なお、中高年齢者として45歳以上と60歳以上の両方について調べたが、傾向に大きな差がなかったので、主として45歳以上について記述する。
(現在の代表職種は伸びていない)
その結果、1995年から2000年にかけて中高年齢者の就業吸収力を高めた職種は、家庭生活支援サービス職業従事者(ホームヘルパーなど)、ビル・駐車場管理人、他に分類されないサービス職業従事者(旅行・観光案内人など)、他に分類されない運輸従事者(車両点検係など)、電子計算機オペレーターなどである(図表1)。
なお、現在、中高年齢就業者が実数として多くまた年齢計に占める中高年齢者の比率も高い農耕・養蚕作業者、会社役員、小売店主、会社・団体等管理的職業従事者は、この5年間で大きく減少している。これらは、現在の中高年齢者の代表的職種であるが、今後の就業吸収力という点で注意が必要である。
(IT関連を含め専門的・技術的職業も有望)
また、情報処理技術者など専門的・技術的職業の多くも、中高年齢者の就業吸収力を高めた職種の上位に挙げられる。
情報処理技術者などIT関連の職種は、今回のアンケート調査の結果からも伺われるように、一部に中高年齢者の職業能力に消極的な見方も存在する。しかし、これらの職種は、実は平均以上に中高年齢者の参入が多いか又は退出が少ない。これは、最近5年間のコーホート入退出率により確認される。
(年齢計で需要が伸びた職種が中高年齢者にも有望)
中高年齢者の就業吸収力に関する著しい特徴は、職種そのものの需要に大きく左右されることである。上で(1)と(2)の2つの観点を示したが、少数の例外を除き、(1)を満たす職種(年齢計で需要が拡大)の多くが(2)を満たしている(高年齢層のコーホート入退出率が平均以上)。すなわち、需要が伸びた職種は、必要とあれば中高年齢者が働きやすいように職場環境を整えるなどして、中高年齢者にも就業の場を提供してきたものと考えられる。逆に、中高年齢者の活躍の場として期待される職種の多くは、中高年齢者に特有のものというより、若年者と中高年齢者のいずれにも期待される職種である。
2 将来推計
〜管理的職業や小売店主の減少。外交員、サービス、情報処理技術者などの台頭〜
将来推計は、上記の傾向が今後も継続するという前提で行った。その結果、一般事務員や農耕・養蚕作業者を始めとして、現在中高年齢者が多く働いている職種の多くは2015年にも中高年齢者の主要職種であり続ける(図表2)。
ただし、会社・団体等管理的職業従事者や小売店主など一部の職種については、需要が減少するため、2015年には中高年齢者の主要職種(上位20位以内)でなくなる。代わって台頭するのは、保険代理人・外交員、他に分類されないサービス職業従事者(旅行・観光案内人など)、土木・測量技術者、情報処理技術者などである。
3 中高年齢者の職業能力と雇用分野
〜対人能力や知的能力に優位性。しかし雇用分野と一致せず〜
上記の動向の背景を探るため、企業に対するアンケート調査を行った。それによれば、65歳ぐらいまでを念頭に「年齢とともに能力が上がる」という回答が多い職種については、対人能力や知的能力を相対的に重視する傾向が強いことが分かった。
しかし、中高年齢者の能力が発揮しやすいとみられる職種であっても、実際に働いている中高年齢者の割合が低いものが広範囲にみられる。研究者・技術者、管理的職業従事者、営業・販売事務従事者などがその例である(図表3)。すなわち、中高年齢者の能力分野と雇用分野に不一致がみられる。不一致の背景には、企業の雇用管理の問題とマクロでの職種別労働力需要の問題があるとみられる。
4 団塊の世代の処遇
〜多くの企業は解決済み。しかし一部の大企業でまだ課題が残る〜
アンケート調査では、団塊の世代の正社員の処遇について課題を尋ねた。それによれば、8割を超える企業が「特にない」又は「該当する正社員が少ないため課題はない」としている(図表4)。ただ、500人以上の大企業に限ると、4割の企業が「課題がある」としている。課題の内容は、「人件費が多くなる」との回答が多い。
5 中高年齢者の活躍のために(政策的インプリケーション)
〜雇用管理とマクロの労働力需給からの対応〜
雇用管理に関して、希望者全員を定年後も継続雇用することの問題点を企業に尋ねたところ、「求める成果が期待できない従業員を雇用し続けなければならなくなる」「賃金制度の見直しが必要」「新規採用がしにくくなる」との回答が多かった。賃金制度については、現に成果主義などの取り組みがなされつつあり、今後も見直しが進んでいくものとみられる。
新規採用との関係では、今後日本の労働力人口が減少することを考慮しなければならない。国民の生活水準を維持向上させるためには、適度な労働生産性の向上か就業率の上昇、あるいはその両方を達成しなければならない。こうした観点に立てば、若年者と中高年齢者のいずれを優先させるかということではなく、それぞれの層で能力の発揮を阻害する要因があればそれを1つずつ取り除いていく、という発想が必要であろう。
マクロの労働力需給については、中高年齢者の職業能力と職種別労働力需要の2つを軸として、(1)対人能力や知的能力を有効活用できる職種の開拓(能力に合わせて需要を拡大)、(2)需要が存在する職種については能力の低下を補完する配慮(需要に合わせて能力を補完)、(3)対人能力や知的能力を中心とした能力開発(能力自体の向上)、などの対策が考えられる。
図表1 45歳以上の就業吸収力が大きかった職種(男女計)
職種
番号 |
職種名 |
45歳以上の就業者 |
年齢計 |
2000年の
人数(人) |
1995-2000
増減率
(%) |
相対
入退出率 |
就業者
ウェイト
変化率 |
| (T) |
(合計) |
(30,336,716) |
(0.8) |
(1,000) |
(1,000) |
| 78 |
外交員(商品、保険、不動産を除く) |
466,639 |
26.9 |
1.084 |
1.158 |
| 197 |
その他の食料品・飲料・たばこ製造作業者(含総菜類調整工) |
382,597 |
33.1 |
1.273 |
1.258 |
| 9 |
土木・測量技術者 |
225,564 |
32.0 |
1.030 |
1.168 |
| 96 |
他に分類されないサービス職業従事者(含旅行・観光案内人) |
221,222 |
80.7 |
1.705 |
1.889 |
| 100 |
その他の保安職業従事者(含警備員) |
211,238 |
2.9 |
1.330 |
1.228 |
| 52 |
他に分類されない専門的・技術的職業従事者(含通訳) |
146,250 |
20.0 |
1.121 |
1.124 |
| 155 |
金属工作機械作業者 |
144,157 |
21.5 |
1.244 |
1.202 |
| 80 |
家庭生活支援サービス職業従事者(含ホームヘルパー) |
141,145 |
121.9 |
2.478 |
2.205 |
| 25 |
その他の保険医療従事者(含医療・薬事監視員) |
130,079 |
15.0 |
1.020 |
1.258 |
| 79 |
その他の販売類似職業従事者(含商品仲立人) |
126,748 |
38.2 |
1.380 |
1.385 |
| 10 |
情報処理技術者 |
98,250 |
87.1 |
1.040 |
1.331 |
| 93 |
ビル・駐車場管理人 |
94,969 |
17.5 |
1.714 |
1.283 |
| 27 |
その他の社会福祉専門職業従事者 |
93,129 |
9.9 |
1.010 |
1.136 |
| 63 |
郵便・通信事務員 |
62815 |
35.3 |
1.178
|
1.281 |
| 66 |
電子計算機等オペレーター |
61,881 |
86.8 |
1.298 |
1.519 |
| 15 |
薬剤師 |
58,248 |
25.8 |
1.126 |
1.147 |
| 129 |
郵便・電報外務員 |
53,492 |
30.1 |
1.096 |
1.154 |
| 125 |
他に分類されない運輸従事者(含車両点検係) |
51,354 |
46.7 |
1.474 |
1.462 |
| 177 |
その他の輸送機械組立・修理作業者 |
34,109 |
26.8 |
1.136 |
1.169 |
| 11 |
その他の技術者(含労働安全衛生技術者) |
32,020 |
22.9 |
1.057 |
1.165 |
| 29 |
その他の法務従事者(含公証人)) |
25,925 |
12.7 |
1.382 |
1.123 |
| 36 |
盲学校・ろう(聾)学校・養護学校教員 |
22,310 |
57.6 |
1.111 |
1.207 |
| 19 |
診療放射線・エックス線技師 |
14,524 |
25.8 |
1.061 |
1.212 |
| 65 |
キーパンチャー |
11,674 |
78.6 |
1.046 |
1.198 |
| 191 |
乳・乳製品製造作業者 |
10,735 |
19.0 |
1.117 |
1.154 |
| 145 |
非鉄金属製錬作業者 |
10,496 |
33.9 |
1.259 |
1.277 |
| (注) |
1) |
45歳以上就業者が10,000人を超える職種のうち、1995年から2000年までの伸び率が職種計を10%以上上回り(就業者ウェイト変化率が1.1以上)かつ、相対入退出率が1を上回る職種を掲載した。
|
| 2) |
「就業者ウェイト変化率」とは、職種計に占める当該職種の割合について、2000年と1995年の比率をとったもの。職種計を上回って就業者が増加したとき、これが1を上回る。
|
| 3) |
「相対入退出率」とは、1995年から2000年の5歳階級別コーホート入退出率の45歳以上平均について、当該職種と職種計の比率をとったもの。当該職種のコーホート入退出率が職種計を上回るとき、これが1を上回る。
|
図表2 2015年における45歳以上就業者が多い上位20職種(将来推計値)
職種
番号 |
職種名 |
45歳以上就業者(人) |
| (T) |
(合計) |
(31,299,453) |
| 58 |
一般事務員 |
4,698,222 |
| 101 |
農耕・養蚕作業者 |
2,033,241 |
| 73 |
商品販売外交員 |
1,460,939 |
| 59 |
会計事務員 |
1,215,398 |
| 85 |
調理人 |
1,015,221 |
| 78 |
外交員(商品、保険、不動産を除く) |
959,872 |
| 117 |
自動車運転者 |
946,509 |
| 54 |
会社役員 |
884,191 |
| 273 |
他に分類されない労務作業者(含清掃員) |
880,707 |
| 70 |
販売店員 |
804,315 |
| 197 |
その他の食料品・飲料・たばこ製造作業者 |
471,437 |
| 271 |
配達員 |
457,001 |
| 18 |
看護婦・看護士 |
420,975 |
| 10 |
情報処理技術者 |
405,634 |
| 96 |
他に分類されないサービス職業従事者(含旅行・観光案内人) |
371,897 |
| 162 |
その他の金属加工作業者(含金属製家具・建具製造工) |
355,836 |
| 265 |
土木作業者 |
339,574 |
| 76 |
保険代理人・外交員 |
323,409 |
| 87 |
飲食物給仕・身の回り世話従事者 |
311,338 |
| 9 |
土木・測量技術者 |
302,473 |
(注)網掛けは、2000年より順位が上がる職種
図表3 能力分野と雇用分野の関係
| |
60歳以上割合平均以上 |
60歳以上割合平均未満 |
| 「年齢とともに上がる」平均以上 |
総務事務員、集金人・検針員、運輸事務従事者、採掘作業者 |
科学研究者、農林水産業・食品技術者・鉱工業技術者、建築技術者・土木・測量技術者、医師・歯科医師、管理的職業従事者、会計事務従事者、生産関連事務従事者、営業・販売事務従事者、販売店員、商品仕入・販売外交員、通信従事者 |
| 「年齢とともに上がる」平均未満 |
飲食物調理従事者、居住施設・ビル等管理人、警備員、鉄道運転従事者、自動車運転者、定置機関運転・建設機械運転・電気作業者、建設作業者・土木作業者、運搬労務作業者、清掃員 |
情報処理技術者、看護師、薬剤師、社会福祉専門職業従事者、企画事務員、電子計算機オペレーター、接客・給仕職業従事者、製造・製作作業者 |
| 資料出所 |
労働政策研究・研修機構「企業における今後の中高年齢者活用に関する調査」(2004年)
|
| (注) |
「60歳以上割合」平均以上とは、集計された労働者数のうち60歳以上の割合が職種計の平均である6.3%以上の職種を指す。「年齢とともに上がる」平均以上とは、「年齢とともに能力も上がる」と回答した事業所の割合が職種計の平均である20.2%以上の職種を指す。
|
図表4 団塊の世代の正社員の処遇についての課題の有無

資料出所 労働政策研究・研修機構「企業における今後の中高年齢者活用に関する調査」(2004年)
|