IT活用企業についての実態調査・情報関連企業の労働面についての実態調査

日本労働研究機構 発表
平成13年6月

IT化の進展で「定型的業務」の一般職は減少、
中間管理職は「情報判断能力」が求められる
IT適応のための教育訓練を必要とする企業割合は8割以上

~IT活用企業についての実態調査・情報関連企業の労働面についての実態調査~

I. 調査の概要

 本調査は、IT化が急速に進展し、企業組織のあり方や雇用のあり方にも影響を及ぼすと考えられる中で、企業におけるITの活用を中心とした企業組織変化や雇用の実態、情報関連企業における雇用を中心とする労働面の実態等を明らかにすることを目的として実施した。
IT活用企業調査は、従業員数300人以上の企業10,000社、情報関連企業調査は、ソフトウェア業、情報処理サービス業、情報提供サービス業に属する従業員数10人以上の企業7,413社に調査票を郵送した。そのうち回答があったのは、IT活用企業調査が1,637社、情報関連企業調査が1,536社であった。なお、調査の実施期間は、平成12年12月7日~12月22日。回答企業の構成は、参考表を参照のこと。

II. 調査結果の概要

IT活用企業についての実態調査・情報関連企業の労働面についての実態調査(PDF:227KB)

<骨子>

I 「IT活用企業についての実態調査」

1 情報サービス業を中心に進む企業のIT化

(1)情報サービス業、機械関連製造業で高いパソコン普及率
パソコンの普及状況を1人1台以上の普及でみると、全産業計で49.5%、情報サービス業で90.3%、機械関連製造業で65.9%(図1-1)。

(2)情報関連のツールは、インターネット、電子メールを中心に普及
情報関連のツールの導入状況は、インターネット(94.1%)、電子メール(92.1%)などで高く、産業別には、どのツールでみても、情報サービス業の導入割合が高い。なお、情報サービス業以外の産業について特徴をみると、自社ホームページについては、金融・保険業、不動産業が、グループウェアについては、機械関連製造業が、基幹業務系の統合システムについては、建設業、卸・小売業、飲食店が、電子商取引については、機械関連製造業、卸・小売業、飲食店が相対的に高い導入率となっている(図1-3)。

2 雇用や働き方に大きな影響を与えるIT化

(1)今後のIT化の進展に伴い進行する雇用の削減効果
ITが雇用に与える影響を過去3年の実績でみると、雇用削減効果と拡大効果が同程度であるとする企業が53.6%で過半数となるが、今後、3年間については、削減効果と拡大効果が同程度とする企業割合が低下し(38.9%に低下)、削減効果の方が大きいとする割合が46.5%に高まる(36.2%から46.5%に上昇)(図1-8)。

(2)IT化の進展に伴い求められる職務能力の変化
IT化に伴い変化する職務・役割については、中間管理職の場合、「情報の重要性の判断」、「新規事業や業務改善の企画」、「顧客開拓」の重要性が高まるとされる(図1-16)。また、一般職(非管理職)の場合、「専門性の高い仕事」、「創意工夫の余地の大きな仕事」、「個人の仕事の裁量性」のウェイトが高まる(図1-17)。
また、求められる能力や知識という観点では、中間管理職・一般職ともに、「インターネット等を活用して必要な情報を検索、収集する能力」、「収集した情報を整理、分析する能力」の重要性が高まるとされている(図1-18,図1-19)。

(3)IT化に伴い、中途採用の割合が高まる見込み
IT化による職員数の増加は、新規採用が45.1%、中途採用が21.1%、配置転換が18.5%。企業規模別では大企業ほど新規採用を重視しているといえるが、今後については、中途採用の増加を見込んでいる(図1-20)。

3 IT化に伴う雇用環境の変化と企業の雇用責任への積極的な対応

(1)雇用責任への企業の積極的な対応
IT化に伴う過剰人員の発生に対し、教育訓練、配置転換等によって企業としての責任を果たそうとする割合が76.3%、1000人以上の大企業では80.0%。職員の減員の方法についても、退職者不補充(62.5%)、配置転換(33.4%)とする割合が高い(図1-22,図1-23)。

(2)社員のIT化適応のための訓練は8割以上の企業で必要
社員のIT化適応のための教育訓練の必要性については、とても必要とする企業が22.2%、必要とする企業が63.3%(図1-28)。教育訓練の実施方法としては、「自社独自の研修会を開催している」(中間管理職41.1%、一般職44.5%)、「社内各部署におかれたIT能力の高いIT推進担当者がITに関する相談を受けたり、OJTによる教育訓練を行ったりしている」(中間管理職41.0%、一般職46.0%)(図1-29)。
教育訓練を行っている企業について、その障害となっている点をみると「教育訓練にあてる時間がない」(中間管理職47.5%、一般職37.7%)、「教育訓練に費用がかかりすぎる」(中間管理職24.1%、一般職24.7%)となっている(図1-30)。

(3)成果主義的な賃金への急速な切り替わり
賃金制度については、年功主義的な要素の高いものから、成果主義的要素の高いものに急速に切り替わっていくことが見込まれ、特に、そのテンポは大企業で早い(図1-24)。

II 「情報関連企業の労働面についての実態調査」

1 拡大が予想される情報関連企業の採用

(1)すべての職種で採用増加の見通し、小規模企業ほど中途採用に傾斜
情報関連企業で、ここ3年間の正社員数について増加(「少し増加」+「大幅に増加」)したとする比率が高い職種は、「初級SE」(55.7%)、「上級SE」(44.1%)。正社員を増やした際の方法を企業規模別にみると100人以上の企業では「新規採用」が55.3%と半数を超え、10~29人規模では「中途採用」が54.4%である。今後3年間に予想される変化では、すべての職種において、増加を見込む割合が、ここ3年間の実績を上回っている(図2-1)。

(2)小企業ほど困難な職員採用
ここ3年間の採用の達成状況をみると、「10割」とした企業が44.6%、「7割」程度が32.0%となっている(図2-5)。本来採用したかった人数を達成できていない企業は、その理由としては「応募者は多かったが、採用希望職種に必要な知識・技術を持った人が少なかった」が56.0%と半数を上回った(図2-6)。企業規模別にみると、100人以上規模では、「10割」採用できたとするものが62.0%であるのに対し、10~29人では38.0%となっており、企業規模間の違いが顕著である(図2-5)。採用未達成の影響として規模の小さな企業では「新規事業展開の困難」を挙げる割合が高まる(図2-7)。

(3)要求水準が高い中高年採用~「事業拡大のため」、「能力がより高い人」を期待~
求人年齢の上限については、「定めている」企業(38.2%)と「定めていない」企業(37.6%)にほぼ二分。上限年齢を定めている場合、「35歳~39歳」が30.3%と最も高く40歳以降は大きく減少する(図2-8)。一方、求人年齢を定めていない場合「良い人材なら年齢に関係ない」との理由が88.8%にのぼる(図2-10)。この3年間で中高年の中途採用を行った企業は全体の41.3%であった(図2-16)。その理由として「事業拡大」(40.0%)と「能力がより高い人を採用」(34.2%)をあげており、中高年採用の要求水準は高い(図2-18)。

2 長期を見据えた情報技術者のキャリア形成と能力の蓄積が課題

(1)一人前の技術者になるには「4~5年必要」
新規採用の技術者が、一人前の技術者のレベルに達するまでの平均的な年数をみると、「4~5年目」(46.1%)(図2-21)、プロジェクトリーダーは「6~10年目」(50.7%)が最も多い(図2-22)。この傾向は小規模の企業では、若干早期化する傾向を示す。

(2)職務能力と年齢
技術者の職務能力と年齢との関係のイメージについては、「ある年齢まで上昇し、あとは一定」が44.8%と最も高く、「年齢とともに能力は一貫して上昇」が24.6%とこれに次ぐ(図2-23)。

(3)退職者の半数は勤続年数3年未満
退職者の勤続年数をみると「1年未満」と「1年以上3年未満」を合計すると48.7%とおよそ半数に達する(図2-20)。

(4)企業規模による教育訓練の実施格差
OJT以外の教育訓練の実施状況をみると、「初級SE」(49.3%)、「上級SE」(42.3%)、「プロジェクトマネージャー」(30.1%)と続く。いずれの職種でも教育訓練の実施率は大規模企業ほど高まる傾向が顕著である(図2-28)。

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