企業の事業展開と雇用に関する実態調査

日本労働研究機構 発表
平成11年6月

情報・通信、医療・福祉関連、ビジネス支援で新規進出が多い
新規進出事業での今後の雇用は半数弱の多くの企業で増加を見込む

~企業の事業展開と雇用に関する実態調査~

I.調査の概要

 本調査は、グローバル化、経済のサービス化、技術革新・情報化の進展等の急激な構造変化に対応した企業の経営戦略の見直しやそれに伴う組織面での変革や、雇用面での対応、また新規事業への進出の実態及び雇用拡大への影響等を明らかにすることを目的として実施した。
調査事業所は、従業員規模100人以上の全国の企業の中から、規模別に10,000社を抽出し、平成11年1月25日~2月12日に調査した。
(有効回収数;1857件(18.6%))

II.調査結果の概要

企業の事業展開と雇用に関する実態調査(PDF:316KB)

<骨子>

企業調査の結果

1.企業の経営戦略~ほとんどの企業で「本業の充実・強化」に取り組む、「新規事業展開」は4割の企業で実施~

 過去5年間(平成6年から現在まで)の企業の経営戦略では、「本業の充実・強化」(69.8%)が最も高く、次いで「業務の効率化」(59.8%)、「販売・営業部門の強化」(49.9%)、「人材育成の強化」(48.1%)となっている。(図1)
今後5年間(現在から平成15年程度)では「業務の効率化」(73.7%)が最も高くなり、「本業の充実・強化」(70.1%)、を上回るほか、「人材育成の強化」(68.6%)、「人事処遇制度の改革」(60.6%)、「財務体質の強化」(59.0%)、「販売・営業部門の強化」(56.3%)の割合が大きくなる。
なお、「新規事業展開」は、過去5年間38.0%、今後5年間42.0%。

2.本業の充実・強化、新規事業展開に対する組織面、労働面での対応

(1)組織面での対応~「既存部門の再編成」が主流に~
本業の充実・強化の組織面での対応は「既存部門の再編成」(過去5年間78.0%、今後5年間79.1%)が最も高くなっているのに対し、新規事業展開では、「部門の新設」(同63.7%、50.3%)が、「既存部門の再編成」(同36.1%、49.2%)を上回っている。
また、過去5年間と今後5年間とではいずれも「部門の新設」が低下し「既存部門の再編成」が上昇する。(図2)

(2)労働面での対応~労働者の調達は、本業の充実・強化では「新規学卒者の採用」、新規事業展開では「配転、出向・転籍」が最も多く、今後は非正規労働者のウェイトが高まる~
  1. 労働者の調整・調達法については、本業の充実・強化の場合は「新規学卒者の採用」(過去5年間69.9%、今後5年間58.9%)が最も高く、次いで「他部門からの配置転換又は子会社への出向・転籍」(同56.4%、53.8%)、「正社員の中途採用」(同57.1%、42.2%)の順となっているが、新規事業展開の場合は、「他部門からの配置転換又は子会社への出向・転籍」(同65.3%、58.6%)が最も高く、「正社員の中途採用」(同45.3%、39.5%)、「新規学卒者の採用」(同41.9%、42.7%)と続く。(図3)
  2. 調達する主たる労働者としては、過去5年間では「正規労働者」が、本業の充実・強化(74.0%)、新規事業展開(76.9%)ともほぼ3/4に達しているが、今後5年間ではいずれも6割強に低下する。代わって「非正規労働者」、「両者半々」の割合が高まる。(図4)

3.新規事業展開の状況

(1)新規事業展開の分野~「情報・通信」「医療・福祉」「ビジネス支援」で多い~
進出割合の高い分野は「情報・通信」(過去5年間18.4%、今後5年間14.5%)、「ビジネス支援」(同10.9%、12.8%)、「介護・老人福祉」(同7.6%、10.4%)、「物流」(同9.3%、6.9%)となっている。これを大括りの分野でみると、「情報・通信」、「医療・福祉関連」(同15.0%、16.4%)、「ビジネス支援」、「教育・レジャー関連」(同12.5%、9.9%)となっている。(図5)

(2)これまでの進出状況と今後の見通し~「拡大」「維持」がほとんど~
過去5年間に進出した事業の状況は、拡大が62.1%、維持が33.9%で縮小・撤退は4.0%と少ない。今後の見通しはこれまでと同様の状況となっている。(図6)
分野別にみると、これまでは「ビジネス支援」(75.0%)、「介護・老人福祉」(67.9%)で拡大の割合が高い。(表1)

(3)これまでの進出事業に従事する従業員数の今後5年間の見通し~半数弱の多くの企業で増加を見込む~
これまで過去5年間に進出した事業に従事する従業員数の今後5年以内の見通しは、「企業全体」で「増加する」が44.5%と最も多く、次いで「変わらない」が29.3%。「減少する」は9.6%と少ない。(表2)
また、進出分野別にみると、「企業全体」で「増加する」割合は、「ビジネス支援」(67.6%)、「エンジニアリング」(55.9%)、「住宅」(54.7%)、「環境」(54.2%)、「健康」(53.6%)で高い。(表3)

4.事業展開と雇用をめぐる課題~人件費比率の上昇と人材の質の確保に課題~

 本業の充実・強化、あるいは新規事業展開を図る上で、雇用上の課題は、「人件費比率の上昇」(52.7%)、「質の高い人材の獲得困難」(49.3%)、「積極的に挑戦する人材の不足」(37.9%)、「人材育成が間に合わない」(30.5%)などとなっている。(図7)

(注) ビジネス支援分野は、企業の外部から企業活動を代行・支援するサービスであり、たとえば次のものが含まれる。アウトソーシング、人材サービス、コンサルティング、メンテナンス、セキュリティ・警備、広告・宣伝等

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