過去2番目に低い「総争議」件数を記録
 ――厚生労働省が2022年の労働争議統計調査結果を公表

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厚生労働省がさきごろ発表した2022年労働争議統計調査の結果によると、争議行為を伴わない争議も含む「総争議」の件数は270件で、過去2番目に低い件数だった。

総争議とは「争議行為を伴う争議」+「争議行為を伴わない争議」

調査結果をみる前に、同調査が解説する労働争議の種類をみると、争議は、「争議行為を伴う争議」と「争議行為を伴わない争議」に分かれる。

「争議行為を伴う争議」は、ストライキ、ロックアウト、サボタージュなど。ストライキは、「自己の主張を貫徹するために労働組合又は労働者の団体によってなされる一時的作業停止」。ロックアウトは、「使用者側が争議手段として生産活動の停止を宣言し、作業を停止するもの」をいう。サボタージュは、「労働組合又は労働者の団体が自己の主張を貫徹するために、作業を継続しながらも、作業を量的質的に低下させるもの」をいう。

一方、「争議行為を伴わない争議」は、「争議行為を伴わないが解決のため労働委員会等第三者が関与したもの」。

同調査では、この「争議行為を伴う争議」と「争議行為を伴わない争議」を合わせた争議を「総争議」と呼ぶ。

2002年を最後に1,000件を割り込む状況

では、2022年の調査結果をみていくと、「総争議」の件数は270件と前年から27件減少し、1957年の調査開始以来、2番目に低い件数となった。なお、件数が最も低いのは2019年の268件。件数は2002年(1,002件)を最後に、1,000件を割り込む状況が続くとともに、おおむね減少傾向にある。「総争議」の総参加人員は5万3,519人で、前年から6,870人減少した。

「争議行為を伴う争議」の件数は65件で、前年から10件増加した。同件数は1991年から1,000件を下回っており、2009年からは100件をも下回る状況となっている。総参加人員は3万7,881人で前年から659人減少。行為参加人員は6,447人で、前年から1,411人減少した。

「争議行為を伴わない争議」については、件数は前年比37件減の205件で、総参加人員は同6,211人減の1万5,638人となっている。

「争議行為を伴う争議」の件数が最も多い産業は「医療、福祉」

産業別の状況をみると、「争議行為を伴う争議」の件数が最も多いのは「医療、福祉」(22件)で、これに「情報通信業」(13件)、「製造業」(11件)と続く。行為参加人員も「医療、福祉」(4,983人)が最も多く、次いで多いのは「製造業」(748人)となっている。

半日以上のストライキまたはロックアウトが行われた期間に、労働者が実際に半日以上のストライキに参加したまたはロックアウトの対象となったことによって労働に従事しなかった延べ日数を指す「労働損失日数」は、「運輸業、郵便業」(859日)が最多となっている。

「争議行為を伴う争議」は連合が5件、全労連が37件、全労協が3件

民営企業における「争議行為を伴う争議」をみると、争議行為を伴う争議のあった企業数(延べ数)は146企業(前年比3社増)で、行為参加人員が6,447人(同1,411人減)、労働損失日数が1,789日(同401日増)となっている。

主要団体別の状況をみると、「争議行為を伴う争議」の件数は連合が5件(前年比5件減)、全労連が37件(同6件増)、全労協が3件(同1件増)で、行為参加人員は連合が72人、全労連が6,065人、全労協が40人。

労働争議の主要要求事項をみると(複数回答)、「賃金」に関する事項が139件で最も多く、総争議件数全体の51.5%を占めた。なお、「賃金」に関する事項のうち、「賃金額(基本給・諸手当)の改定」は39件(前年比3件増)となっている。

このほかの事項では、「解雇反対・被解雇者の復職」は47件(同10件減)で、「組合保障及び組合活動」が97件(同29件減)などとなっている。

2022年中に解決した割合は76%

労働争議の解決状況をみると、「総争議」270件のうち、2022年中に「解決又は解決扱い」になった件数は206件(総争議件数の76.3%)で、「翌年への繰越」が64件(同23.7%)。

解決方法をみると、「労使直接交渉による解決」が54件(解決又は解決扱い件数の26.2%)、「第三者関与による解決」が68件(同33.0%)、「その他(解決扱い)」が84件(同40.8%)。なお、「第三者関与による解決」をみると、労働委員会関与の「あっせん」が66件(同32.0%)で最多となっている。

解決件数を労働争議継続期間(争議発生から解決に至るまでの日数)別にみると、「91日以上」が77件(解決件数の37.4%)で最も多く、「30日以内」が50件(同24.3%)で次いで多かった。

(調査部)

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