【茨城】(常陽産業研究所)
夏のボーナスを増額する企業が4年連続で3割超に
地域シンクタンク・モニター定例調査
茨城県の4~6月期の経済動向は、中東情勢による仕入価格の高騰などの影響で県内企業の業況判断が前期から悪化しており、モニターの常陽産業研究所は【やや悪化】とした。7~9月期も、業況判断の動きをもとに【やや悪化】としている。雇用動向については、雇用判断DIの動きをもとに4~6月期の実績、7~9月期の見通しのいずれも【横ばい】としている。一方、モニターが実施した調査では、夏のボーナスを増額する企業は4年連続で3割を超えている。
<経済動向>
中東情勢による仕入価格の高騰などの影響で業況判断は前期から悪化
モニターが実施した「県内主要企業の経営動向調査(4~6月期)」によれば、県内企業の景況感をあらわす自社業況総合判断DIは「悪化」超23.5%と、前期から11.1ポイント低下した。
業種別にみると、製造業は「悪化」超21.2%で同13.5ポイント低下した。調査に回答した企業からは「原材料や副資材などの仕入価格や、エネルギー費用の高騰が激しく、業績に影響し始めている」(その他の製造)、「ナフサ不足や各種石油製品の値上げの影響から、業績が上向きかけてきた状況に陰りが見える」(食料品)など、中東情勢による仕入価格高騰が業績に影響しているとの声が聞かれた。
非製造業は「悪化」超25.2%で同9.3ポイント低下となっている。調査に回答した企業からは、「ナフサ不足の影響で納期未定になっている物があり、工期に影響を及ぼしている」(建設)など、材料の調達難が業務運営に影響を及ぼしているというコメントがみられた。
こうした結果をもとにモニターは、4~6月期の地域経済を【やや悪化】と判断した。
先行きも「やや悪化」の見通し
7~9月期についても【やや悪化】と判断した。自社業況総合判断DIは全産業で「悪化」超28.7%と、今期から5.2ポイント低下の見通し。これを業種別にみると、製造業が「悪化」超30.6%で同9.4ポイント低下、非製造業が「悪化」超27.4%で同2.2ポイント低下の見込みとなっている。
企業規模で差がみられる取適法の認知度
モニターは6月、県内企業に対し、今年1月に施行された「中小受託取引適正化法(旧下請法)」に関する企業調査を実施している。調査結果によると、県内企業における取適法の認知状況は「名称も具体的な内容も十分に理解している」が21.3%、「名称も内容も概要は知っている」が56.9%、「名称は聞いたことがあるが、内容はよく知らない」が16.8%、「聞いたことがなかった」が5.1%となっている。従業員規模別にみると、「十分に理解している」は300人以上では42.3%だが、30人未満では10.0%に過ぎず、規模による認知度の差が明白になった。
取適法の施行後の対応・見直しは「価格転嫁・価格協議の実施」が4割超でトップ
取適法の施行後、発注・調達業務で行った対応や見直し(複数回答)をみると、「価格転嫁・価格協議の実施」(45.1%)が最も高く、次いで「手形払い廃止・支払条件の改善」(26.4%)、「社内体制の整備・担当者への教育」(22.3%)、「取引先の洗い出し・適用対象の再確認」(19.2%)などとなっている。
取引の適正化に向けた課題(複数回答)については、「価格転嫁・価格交渉の難しさ」(54.5%)が最も高く、次いで、「社内体制の整備・担当者への教育」(19.8%)、「業界の慣習」(15.5%)、「法律の対象となる取引先・対象範囲の把握と判断」(15.5%)などとなった。
なお、調査に回答した企業からは、「取引条件の変更交渉などで、取引先が法律を都合よく解釈するケースがある」(卸売業)という声も聞かれているという。
モニターは、「今後は、受注側が法令や取引条件を十分に理解したうえで根拠に基づく協議を行うとともに、発注側も取適法の趣旨に沿って社内の法解釈や対応ルールを整備し、取引先と対等な関係で誠実に協議することがより一層重要になる」とコメントしている。
<雇用動向>
新規求人数は16カ月連続で前年同月比マイナス
4月の雇用動向をみると、有効求人倍率は前月より0.02ポイント高い1.14倍で2カ月ぶりに上昇した。新規求人倍率は同0.02ポイント低い1.93倍で、3カ月ぶりに低下した。
新規求人数は前年同月比マイナス0.8%で、16カ月連続で前年を下回った。新規求人数(パートを除く)の内訳を業種別にみると、「宿泊業・飲食サービス業」「卸売・小売業」などが増加した一方、「運輸・郵便業」「医療・福祉」「生活関連サービス業・娯楽業」などで減少している。
雇用指標では、有効求人倍率が長期にわたり低下傾向にあり、広告求人件数も前年割れが続いている。一方で、労働力減少や求人・求職のミスマッチを背景に、日銀短観の雇用人員判断DI(2026年3月)はマイナス38と、大幅な「不足」超となっている。
「県内主要企業の経営動向調査結果(4~6月期)」によると、雇用判断DIは「減少」超2.7%で前期比1.6ポイント上昇と、おおむね横ばいとなった。業種別にみると、製造業は「減少」超6.0%で同0.5ポイント低下、非製造業は0.0%で同3.4ポイント上昇となっている。
調査に回答した企業によると、「人手不足による売上・生産の停滞が続いている」(輸送用機械)、「必要資格保持者について、求人難が続いている」(その他の非製造)など、依然として人手不足や人材難が課題となっている。
こうした状況をふまえ、モニターは4~6月期の雇用の実績を【横ばい】と判断した。
雇用動向の先行きは「横ばい」
同調査の先行き(7~9月期)をみると、「減少」超1.8%で今期から0.9ポイント上昇している。業種別では、製造業が「減少」超1.0%と同5.0ポイント上昇、非製造業が「減少」超2.4%で今期から同2.4ポイント低下となっている。
この結果をもとにモニターは、7~9月期の雇用動向についても【横ばい】と判断した。
夏のボーナスを支給する企業は8割超
モニターは6月に県内企業に対して「夏季賞与に関する企業調査」を実施した。それによると、夏季賞与の支給状況(前年比)は「増加」が33.7%、「横ばい」が45.7%、「減少」が4.3%、「支給しない」が6.3%、「未定」が10.1%となっている。「増加」「横ばい」「減少」を合わせた「夏季賞与を支給する」企業割合は83.7%で、2013年に調査を開始してから初めて8割を上回った。また、「増加」と回答した企業が3割を超えるのは4年連続となった。
物価上昇をふまえて従業員の生活の質の維持・向上を意識
夏季賞与の支給理由(複数回答)は、「従業員の意欲の維持・向上」(78.7%)が最も高く、次いで「従業員の生活の質の維持・向上」(67.2%)、「従業員の貢献・能力の評価」(57.5%)、「従業員の離職防止」(47.1%)などとなっている。
調査に回答した企業からは、「物価が上昇している現状を踏まえ従業員の生活の維持・向上を会社としても支えていきたいと考えている」(食料品製造)、「物価上昇などを背景に、賞与自体の生活給としての側面が強くなっている」(運輸・倉庫)、「物価上昇を鑑み、社員が生活水準を落とさずに安心して暮らせるよう考慮した」(運輸・倉庫)など、物価上昇を考慮し従業員の生活の質の維持・向上を意識したとの声が聞かれた。
また、「賃上げによる人件費の増加のため、賞与支給額は昨年と同水準に抑えざるを得ない」(食料品製造)、「賃上げの影響により賞与については、前年並みの金額としている」(医療・福祉)など、賃上げの影響を受け、夏季賞与は横ばいにとどめるとの声も多く聞かれたという。
一方、夏季賞与を減額・不支給とする理由としては、「中東情勢の影響で受注が減少したため」(電気機械製造)、「原材料高騰で、利益が出ていない」(食料品製造)など、中東情勢による受注の減少や原材料価格の高騰を要因にあげる声もあった。


