<企業・業界団体調査 2026年4~6月期の業況実績/7~9月期の業況見通し>
製造業はAI関連やエアコンが好調。来期は熊本地震による工場の操業停止の影響が懸念材料
ビジネス・レーバー・モニター定例調査
JILPTが四半期ごとに実施している「ビジネス・レーバー・モニター調査」によると、2026年第2四半期(4~6月期)の業況実績は、前期からの変化はそれほど大きくなく、「快晴」「晴れ」を合わせた割合は3割超となった。各モニターから寄せられた判断理由をみると、「快晴」「晴れ」の業種では、製造業がAI関連の好調に支えられており、サービス業はインバウンド需要が堅調となっている。電機は、自治体の補助金や省エネ基準の引き上げによってエアコンの売り上げが伸びている。次期(7~9月期)の業況見通しについては、「快晴」「晴れ」を合わせた割合が7.5ポイント低下するなど悪化の見込み。製造業では、熊本地震による工場の操業停止の影響に懸念が生じている。ホームセンターは、熊本地震と千葉豪雨を受けて復旧・防災関連商品の需要が高まるとみている。
<調査の趣旨>
JILPTでは、企業および業界団体のモニターに対し、四半期ごとに業況の実績と次期の見通しを「快晴」「晴れ」「うす曇り」「本曇り」「雨」の5段階で尋ね、企業モニターの回答の平均と業界団体の回答をさらに平均する(端数は四捨五入)ことで、各業種の最終的な判断を算出している。そのため、個々の企業、業界団体の業況評価と必ずしも一致しない。
今回は2026年第2四半期(4~6月期)の業況実績と第3四半期(7~9月期)の業況見通しについて調査した。回答は企業と業界団体の計50組織、40業種から得た。
<各企業・業界団体モニターの現在の業況>
業況実績では「快晴」「晴れ」が合わせて32.5%
2026年第2四半期の業況実績については、回答があった40業種中、「快晴」が2(業種全体に占める割合は5.0%)、「晴れ」が11(同27.5%)、「うす曇り」が17(同42.5%)、「本曇り」が7(同17.5%)、「雨」が3(同7.5%)となった(図表1)。前回調査の2026年第1四半期と比べると、大きな変化はない。
図表1:前期・今期の業況実績と業況見通しの概要

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製造業・非製造業別にみると、「快晴」は製造業が1業種で、非製造業も1業種となっている。「晴れ」は製造業が6業種で、非製造業が5業種。「うす曇り」は製造業が7業種、非製造業が10業種と、非製造業のほうが多い。「本曇り」と「雨」については、製造業(中小企業団体含む)では合わせて6業種、非製造業では合わせて4業種となっている。
<今期(2026年4~6月)の業況の判断理由>
工作機械は内需・外需ともに好調
今期、「快晴」と評価した業界は【工作機械】【遊戯機器】の2業種(図表2)。【工作機械】の業界団体モニターによると、内需・外需のいずれも受注額が前年同期比で4割以上増加しており、「四半期を追うごとに好調さが際立っている」。内需は、いずれの業種向けの需要も旺盛で、外需についても、地域によらず幅広い需要があったとしている。
【遊戯機器】は、推し活やインバウンドなどの来客が堅調で、売り上げも堅調に伸びている。
図表2:業界ごとにみた前期・今期・来期の業況判断(快晴:◎、晴れ:○、うす曇り:△、本曇り:▲、雨:×)

注:ー(ハイフン)は、前回調査結果の掲載時点で回答がなかった。
鉄道は輸送人員の増加で営業収益も増加
「晴れ」と評価したのは、【鉄道】【建設】【百貨店】【商社】【情報サービス】【造船・重機】【パン・菓子】【電機】【非鉄金属】【金型】【印刷】の11業種。
【鉄道】の企業モニターは、不動産販売業における大型物件販売や資産回転型ビル事業などにより増収となっており、判断を「晴れ」とした。業界団体モニターも、輸送人員の増加などにより、各社ともに営業収益が増加したことから「晴れ」と判断した。
【建設】は、国内建設事業では受注時の採算性が安定していることに加え、中東情勢の不安定化に伴う影響も限定的であったことから、売上総利益率が前年同期比で上昇。海外関係会社においても、開発事業における物件売却が実現しており、連結全体では増益となった。
百貨店は営業利益が過去最高を記録、海外顧客とのつながりが順調
【百貨店】は、4~6月期の営業利益・当期純利益としては過去最高を記録。アプリや外商を通じた海外顧客とのつながりが順調に拡大している。
【商社】は大手7社のすべてが前年同期比で増益となった。金属資源事業などが好調となっている。
【情報サービス】は、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」をもとに、売上高がプラスで推移していることを判断理由にあげた。
造船・重機はアメリカの関税還付や円安効果で増益
【造船・重機】はアメリカの関税還付や円安効果もあり、前年同期比で増益となった。売り上げは4~6月期としては過去最高を記録した。
【パン・菓子】の企業モニターは、売り上げが好調に推移したほか、コストコントロールも安定しており、前年同期比で増収増益となったことから、「晴れ」と判断した。業界団体モニターも、人件費や物流費の上昇で厳しい経営環境は継続しているものの、生産量が持ち直してきているとして、「晴れ」と判断している。
エアコンの出荷は前年同期比で23.7%の増加
【電機】の業界団体モニターによると、白物家電機器は、国内出荷金額が前年同期比で8.1%増加。このうちルームエアコンは、自治体による補助金の効果や2027年4月からの省エネ基準の引き上げの影響で同23.7%増となり、全体をけん引した。重電機器の国内生産額も同11.2%増となっていることから、業況判断は「晴れ」とした。
企業モニターの回答をみると、A社は増益となったことから「晴れ」と判断。AIインフラ関連事業に加えてその周辺事業(実装機、サーボモーター、センサー)が想定以上に伸長している。B社は、売上高、営業利益がともに前年同期比で増加したことを理由に「晴れ」とした。C社も、前年同期比で増収となったことから「晴れ」とした。
非鉄金属はAI関連需要の拡大が継続
【非鉄金属】の業界団体モニターによると、上流・中流であるベースメタル部門では、円安や金属価格の上昇で前年度を上回る収益を確保している。下流部門では、AI関連需要の拡大が継続しており、AIサーバー向けやデータセンター関連の電子部品など、多様な商品で好調な売り上げを記録。自動車の生産の回復が進んでいることから、自動車向けの関連製品の売り上げも堅調となっている。
【金型】では、データセンター向けのハードディスクの需要が増加していることから、主力製品であるハードディスク関連部品の売り上げが増加している。
ホームセンターは中東情勢の影響で石油由来商品の需要が増加
「うす曇り」とした17業種では、中東情勢の影響による石油由来商品の動向や、人手不足の状況などが判断要因にあがった。
【ホームセンター】は、主要26社の売り上げが全店ベースで前年同期比2.5%増だった。既存店ベースでは同1.8%増。4月は中東情勢の影響を受けて、塗料やシンナーをはじめ、ゴミ袋、ラップなどの石油由来商品を中心に需要増がみられた。6月は殺虫剤や除草剤などの夏物商品を中心に不調となったが、エアコンや石油由来商品などでは動きがみられた。
【事業所給食】は、価格転嫁が進んでいるものの、食材の高騰、人手不足、人件費の上昇で厳しいという声がある。
シルバー産業は都市部で競争が激化
【シルバー産業】は、業界団体モニターは「うす曇り」と判断。高齢者の増加が進む都市部においては、事業所数の増加により、競争が激化しているとしている。企業モニターも「うす曇り」とした。介護事業における利用者単価と稼働率が計画を下回っており、依然として厳しい状況が続いている。
生成AIの進展で人材需要に変化
【職業紹介】の業界団体モニターによると、底堅い求人需要が継続しているものの、生成AIの進展によって人材需要の内容に一部で変化がみられるという。
【ホテル】は、売上高・利益のいずれも予算に届かなかった。
食品は石油関連資材の供給不安が遠のく
【食品】の業界団体モニターによると、「日銀短観」(6月調査)での食品製造業の景況判断DIは大企業が9(前回調査比変化なし)、中堅企業が5(同マイナス4)、中小企業が4(同プラス1)で、プラス水準を維持していることから判断を「晴れ」とした。中東情勢の急変で石油関連資材の調達に一時は目詰まりが生じていたが、調査回答時点では供給不安は遠のいている。
企業モニターは、新商品の発売による市場の活性化を期待したものの、前期と同様の傾向であったことから、「本曇り」と判断した。
サッカー・ワールドカップによるページ数増加の効果でマイナス幅が縮小
【紙パルプ】は、原燃料価格、物流費、人件費などのコスト上昇が各社業績の重荷となっている。ただし新聞用紙については、夕刊の廃止や販売部数の減少の影響で2021年6月以降の生産高は前年同月比でマイナス基調が続いているものの、サッカー・ワールドカップの開催に伴うページ数増加の効果もあり、2026年6月のマイナス幅は縮小した。
段ボール原紙は、青果物向けの一部で生育不良の影響があったものの、飲料向けは堅調に推移するとともに、価格改定前の前倒し需要が寄与してプラスとなった。衛生用紙の国内出荷は、中東情勢に伴う需要の反動減がみられたとしている。
これらのほかに「うす曇り」と判断した業種は、【繊維】【石油精製】【硝子】【金属製品】【自動車】【電力】【港湾運輸】【ガソリンスタンド】【葬祭】【その他(求人)】。
道路貨物、ゴムなどは中東情勢の影響による原油高や供給不安が続く
「本曇り」と判断した7業種は【道路貨物】【ゴム】【木材】【化繊】【自動車販売】【石膏】【中小企業団体】。
【道路貨物】は、業界団体モニターが実施した景況感調査で前期(マイナス29.4)からやや改善して今期はマイナス28.9となったものの、マイナス水準が継続。中東情勢の悪化に伴う原油高が影響している。
【ゴム】は、業界団体モニターが中小企業会員に実施した景況調査において、売り上げは前期から改善したものの、業況判断と経常利益がマイナスに転じている。調査に回答した企業では、円安の進行による仕入価格上昇のほか、中東情勢の影響によるナフサ関連の原材料・資材等の価格高騰と供給不安が継続している。また、人手不足感も依然として強いという。
【木材】では、主要な需要先である住宅着工が依然として低迷。また、中東情勢の影響により、業界全体において製造コストの上昇を余儀なくされている。
【化繊】は、自動車関連など産業用需要の一部が堅調ではあるものの、物価高などもあり、衣料用需要は全般的に盛り上がりに欠ける状況となっている。
【自動車販売】は、新車販売台数・整備台数がともに前年同期を下回った。
セメントは国内販売が前年同期比で5.5%減少
「雨」と判断したのは【セメント】【出版】【専修学校等】の3業種。
【セメント】は、当期の国内販売が前年同期比でマイナス5.5%となり、依然として厳しい状況が続いているとした。
【出版】は、書籍と雑誌を合わせた推定販売金額が前年同期比でマイナス2.3%となっていると報告。ただ、週刊誌については返品率は低下しているものの、高い水準が続いている。
【専修学校等】は、18歳人口の減少による入学者数の減少を理由にあげた。
<次期(2026年7~9月)の業況見通し>
次期(2026年7~9月)の業況見通しについては、40業種のうち、「快晴」は1(業種全体に占める割合は2.5%)、「晴れ」が9業種(同22.5%)、「うす曇り」が20業種(同50.0%)、「本曇り」が7業種(同17.5%)、「雨」が3業種(同7.5%)となっている。今期と比較すると、「快晴」「晴れ」を合わせた割合が7.5ポイント低下している。
来期の判断が今期の判断より良いのは【自動車販売】だけ
4~6月期から業況の好転を予想したのは、「本曇り」から「うす曇り」に引き上げた【自動車販売】の1業種のみとなっている。
【自動車販売】の企業モニターは、7月に輸入車のニュー・モデルが発売されたことから、「これにけん引されて各メーカーの新車販売台数はある程度伸びる」とみている。ただし、「起爆剤とまではならず、市場全体の動きは鈍いままで推移する」としている。
一方、業況の悪化を予想したのは、「快晴」から「晴れ」に引き下げた【工作機械】や、「晴れ」から「うす曇り」に引き下げた【印刷】【造船・重機】【商社】、「うす曇り」から「本曇り」に引き下げた【紙パルプ】の5業種。
紙パルプは熊本地震による操業停止の影響を懸念
【紙パルプ】の業界団体モニターは、今年7月の熊本地震による操業停止の影響を懸念している。
【印刷】の業界団体モニターは、一定の価格転嫁の進展が業況を下支えすることを期待しているものの、需要面のばらつきやコスト上昇、価格転嫁の未完了による収益面の負担が残るとみている。
遊戯機器は「近場のレジャー」として来客が増加と予想
今期の判断を継続した業種は【ホームセンター】など34業種あった。
【遊戯機器】(快晴→快晴)は、今夏の傾向として海外などへの長距離の移動が回避される傾向にあることから、近場のレジャーとしてゲームセンターへの来客が増加すると予想している。
【パン・菓子】(晴れ→晴れ)の企業モニターは、コストアップをうけて7月に価格改定を実施したものの販売数量は伸びており、「現在のところ、影響はほぼない」状況としている。一方、業界団体モニターによると、熊本地震の影響で工場の稼働が停止している会員企業もあるという。
【百貨店】(晴れ→晴れ)は、7月の国内売上高が前年同期比6.4%増となっている。ラグジュアリーブランドの好調が続いている。
ホームセンターでは非常食やブルーシートなどの災害関連商品で動き
【ホームセンター】(うす曇り→うす曇り)は、熊本地震により、震源地の周辺地域などで非常食、水、ブルーシートをはじめとする災害関連商品に動きがみられた。また、8月の千葉豪雨の影響から、復旧・防災関連商品などの需要が高まると想定している。
【事業所給食】(うす曇り→うす曇り)は、給食の無償化、委託化、センター集約型が進む市場について、「緩やかだが成長の余地はある」とみている。
セメントは好調だった熊本県の被災がマイナス材料
【石膏】(本曇り→本曇り)の業界団体モニターは、子育て世代を中心として住宅購入に慎重な姿勢が続いていることから、当面は住宅着工戸数の本格的な回復は期待しにくいと考えている。また、非住宅市場についても、首都圏を中心とした大型都市再開発案件以外は低調な状況が続くとしている。
【セメント】(雨→雨)の業界団体モニターは、最大のユーザーである生コン業界において、大型物件の工事が徐々に出始めていることから、「当業界の見通しにも明るい兆しはある」としている。しかし猛暑の影響により、工事の進捗が予定よりも遅れる可能性もあるという。また、好調であった熊本県が被災したことをマイナス材料として受け止めている。
調査開始以来の業況判断結果の推移は図表3のとおりとなっている。
図表3:調査開始以来の業況調査結果の推移

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