【茨城】(常陽産業研究所)
物価高や賃金上昇が企業の収支を圧迫。経済動向は今期・来期ともに「やや悪化」
地域シンクタンク・モニター定例調査
茨城県の経済動向は、1~3月期は県内企業の業況判断が前期から悪化しており、モニターの常陽産業研究所は【やや悪化】とした。4~6月期も、業況判断の動きをもとに【やや悪化】。物価高や賃金上昇が企業の収支を圧迫している。雇用動向についても、持ち直しの動きが弱まっていることから1~3月期の実績は【やや悪化】としたが、4~6月期の見通しは雇用判断DIの動きをもとに【横ばい】としている。モニターが実施した調査によると、ベアを実施する企業の割合は3年連続で4割を超えている。
<経済動向>
業況判断は製造業・非製造業ともに前期から悪化
モニターが実施した「県内主要企業の経営動向調査(1~3月期)」によれば、県内企業の景況感をあらわす自社業況総合判断DIは「悪化」超12.4%と、前期から約3ポイント低下した。
業種別にみると、製造業は「悪化」超7.7%で約4ポイント低下した。前期は好調であった半導体関連を含む「素材業種」と食料品を含む「その他業種」が悪化に転じた一方、「加工業種」は前期から約11ポイント上昇した。調査に回答した企業からは、「自動車、建設機械、半導体関連は依然として動きが悪い」(はん用機械)、「生産用機械の受注は低調であるが、金属材料加工は堅調」(生産用機械)などの声があり、業種によって状況に差がみられた。
非製造業は「悪化」超15.9%で約4ポイント低下となっている。前回「好転」超となっていた「運輸・倉庫業」が「悪化」に転じた。調査に回答した企業からは、「継続的に仕入価格が上昇しているため、随時、販売価格の転嫁を図り、業績水準の維持に取り組んでいく」(卸売業)など、コスト高を背景に価格転嫁の取り組みを進めているとのコメントが多くみられた。
こうした結果をもとにモニターは、1~3月期の地域経済を【やや悪化】と判断した。
来期は中東情勢の影響に懸念
4~6月期については、自社業況総合判断DIは全産業で「悪化」超18.9%と、今期から約7ポイント低下の見通し。これを業種別にみると、製造業が「悪化」超13.3%で約6ポイント低下、非製造業が「悪化」超23.3%で約7ポイント低下の見込みとなっている。
企業から寄せられた回答をみると、「原油・ガス価格高騰で世界経済は混乱必至」(電気機械製造)、「LPGの仕入価格上昇が懸念される」(小売業)、「エネルギー価格の先高感が一般消費に影響する」(小売業)など、世界経済の混乱やコスト高、消費マインドの低下を通して県内経済にも影響が波及することが懸念されている。
また、「原材料高や春闘を経た労務費増に対する継続的かつ確実な価格転嫁が最重要課題」(輸送用機械)、「物価高と人手不足による賃金上昇で粗利は微増にとどまり社員の給与ベースアップや投資意欲は持てない」(建設業)など、物価高や賃金上昇が企業の収支を圧迫している様子がうかがえる。
モニターはこうした調査結果について、「先行きの県内経済は、中東情勢をはじめとする海外経済の動向とともに、物価高や春季賃上げをはじめとする賃上げの動向が企業や家計にもたらす影響に注視する必要がある」とコメントしたうえで、4~6月期の地域経済を【やや悪化】と判断した。
<雇用動向>
人手不足で企業は採用をめぐりあきらめムードも
1月の雇用動向をみると、有効求人倍率は前月より0.03ポイント低い1.10倍で2カ月ぶりに低下した。新規求人倍率は1.78倍で、2カ月ぶりに低下した。
新規求人数は前年同月比マイナス10.8%と、13カ月連続で前年を下回った。新規求人数(パートを除く)の内訳を業種別にみると、「宿泊業・飲食サービス業」や「生活関連サービス業・娯楽業」などが増加した一方、「サービス業(他に分類されないもの)」や「卸売業・小売業」などは減少した。
雇用指標では、有効求人倍率が長期にわたり低下傾向にあり、広告求人件数も前年割れが続いている。一方で、労働力減少や求人・求職のミスマッチを背景に、日銀短観の雇用人員判断DI(2025年12月)はマイナス30と、大幅な「不足」超となっている。
こうした状況についてモニターは、「企業側からみると、人手不足という構造的な問題を抱えるなか、『募集をかけても応募が来ない』『賃金上昇による負担増で前向きな採用が難しい』など、採用を巡りあきらめムードが広がる厳しい情勢が続いている」と分析している。
「県内主要企業の経営動向調査結果(1~3月期)」によると、雇用判断DIは「減少」超7.3%で前期比1.0ポイント上昇と、おおむね横ばいとなった。業種別にみると、製造業は「減少」超7.8%で同0.2ポイント低下、非製造業は「減少」超6.9%で同1.9ポイント上昇となっている。
モニターは「持ち直しの動きが弱まっている」とコメントし、1~3月期の雇用の実績を【やや悪化】と判断した。
雇用動向の先行きは「横ばい」
同調査の先行き(4~6月期)をみると、「減少」超4.3%で今期から約3ポイント上昇している。業種別では、製造業が「減少」超5.5%と今期から約2ポイント上昇、非製造業が「減少」超3.4%で今期から約4ポイント上昇となっている。
調査に回答した企業からは、「人材不足のため、合理化による生産の効率化や増産を目的とした設備の導入」(繊維製造)など、人材不足を補うため、設備の導入を行うといったコメントもみられている。
モニターは4~6月期の雇用動向については【横ばい】と判断した。
ベアを実施する企業が3年連続で4割超に
モニターは3月に県内企業に対して「春季賃上げに関する企業調査」を実施している。それによると、2026年に「賃上げを実施する」企業は70.9%と、前年から5.9ポイント上昇し、2015年調査以降初めて7割を超えた。賃上げの中身に注目すると、定期昇給を行う企業が59.2%、ベースアップを行う企業が40.3%となり、ベアの実施率は3年連続で4割超を維持している。
また、「賃上げを実施する」企業にその理由を尋ねたところ(複数回答)、「従業員のモチベーションの質の維持・向上」が88.1%で最も割合が高く、次いで「従業員の離職防止」が56.3%、「従業員の貢献・スキルアップの評価」が42.2%などとなった。2025年調査と比較すると、「従業員の貢献・スキルアップの評価」(前年比プラス4.6ポイント)、「従業員のモチベーションの質の維持・向上」(同プラス5.2ポイント)、「採用活動における競争力の維持向上」(同プラス2.7ポイント)、「地域の賃金水準上昇」(同プラス3.1ポイント)など、従業員の確保につながるような理由が高まっている。
調査に回答した企業からは、「従業員のモチベーション維持には欠かせない」(電気機械製造業)、「今春は賃上げをしない予定だったが、ニュースや周囲の会社の声を聞き離職防止対策として賃上げをせざるを得ないと判断」(食品製造業)など、他の企業の賃金水準上昇を考慮しつつ、従業員のモチベーションの維持・向上や離職防止のために賃上げに取り組むコメントがみられた。一方で、「世間の実状にあった賃上げを目指しているがとても厳しい」(建設業)など、持続的な賃上げの難しさを指摘する声も多いという。
モニターは、「中東情勢の緊迫化による企業経営への影響も懸念されており、先行きの経済情勢の動向次第では、企業の賃上げ方針や、賃金に占めるウエイトが高い賞与の動向などにも変化が生じる可能性がある」としたほか、「賃上げ継続に向けた機運が今後も続くためには、各企業において、付加価値向上とともに、提供する製品やサービスを適正に評価し、人件費上昇分も含めた適正な価格転嫁を図っていくことが求められる」とコメントしている。


