<企業・業界団体調査 2026年1~3月期の業況実績/4~6月期の業況見通し>
好判断の業種では外需やインフラ整備・インバウンド需要が好調要因に。来期は原材料や燃料の価格上昇への懸念が表出
ビジネス・レーバー・モニター定例調査
JILPTが四半期ごとに実施している「ビジネス・レーバー・モニター調査」によると、2026年第1四半期(1~3月期)の業況実績は、前期からの変化はそれほど大きくなく、「快晴」「晴れ」を合わせた割合は3割となった。各モニターから寄せられた判断理由をみると、「快晴」「晴れ」の業種では、外需が好調とする製造業の業種があるほか、内需ではインフラ整備需要や自治体による補助金の政策がプラスに働いた。サービス業ではインバウンド需要の拡大がみられた。次期(4~6月期)の業況見通しは、「快晴」「晴れ」を合わせた割合が10ポイント低下するなど悪化の見込み。原材料や燃料の価格上昇への懸念が表明されている。
<調査の趣旨>
JILPTでは、企業および業界団体のモニターに対し、四半期ごとに業況の実績と次期の見通しを「快晴」「晴れ」「うす曇り」「本曇り」「雨」の5段階で聞き、企業モニターの回答の平均と業界団体の回答をさらに平均する(端数は四捨五入)ことで各業種の最終的な判断を算出している。そのため、個々の企業、業界団体の業況評価と必ずしも一致しない。
今回は2026年第1四半期(1~3月期)の業況実績と第2四半期(4~6月期)の業況見通しについて調査した。回答は企業と業界団体の計50組織、40業種から得た。
<各企業・業界団体モニターの現在の業況>
業況実績では「快晴」「晴れ」が合わせて3割
2026年第1四半期の業況実績については、回答があった40業種中、「快晴」が1(業種全体に占める割合は2.5%)、「晴れ」が11(同27.5%)、「うす曇り」が18(同45.0%)、「本曇り」が8(同20.0%)、「雨」が2(同5.0%)となった(図表1)。前回調査の2025年第4四半期と比べると、大きな変化はなかった。
図表1:前期・今期の業況実績と来期の業況見通しの概要

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製造業・非製造業別にみると、「快晴」は製造業が1業種で非製造業がゼロ。「晴れ」は製造業が6業種で、非製造業が5業種とほぼ同数だが、「うす曇り」は、製造業が7業種、非製造業が11業種と非製造業のほうが多い。「本曇り」と「雨」については、製造業では合わせて4業種となっており、非製造業では合わせて6業種となっている。
<今期(2026年1~3月)の業況の判断理由>
工作機械は外需を中心に好調
今期、「快晴」と評価した業界は【工作機械】のみ(図表2)。理由として、外需を中心に好調であったことをあげた。内需は好調とまではいかないものの、やや上向き傾向で、特定の業種や特定の地域に偏ることなく受注があったという。
図表2:業界ごとにみた前期・今期・来期の業況判断(快晴:◎、晴れ:○、うす曇り:△、本曇り:▲、雨:×)

注:-(ハイフン)は、前回調査結果の掲載時点で回答がなかった。
鉄道はインバウンド需要の拡大で運輸収入が好調
「晴れ」と評価したのは、【鉄道】【建設】【百貨店】【情報サービス】【造船・重機】【パン・菓子】【電機】【非鉄金属】【金型】【硝子】【遊戯機器】の11業種。
【鉄道】の企業モニターは、ホテル・リゾート事業をはじめ、すべての事業が好調に推移して増収となったと報告。営業利益については、各事業の費用増加などを受けて前年並みの水準での着地となったものの、判断については「晴れ」とした。
業界団体モニターは、インバウンド需要の拡大がみられ、運輸収入が好調に推移したことから「晴れ」と判断した。
【建設】は、国内建設事業では多くの工事で収益性が向上しており、売上総利益率が改善したとしている。海外では開発事業における物件売却が実現しており、連結全体では大幅な増収増益となった。
百貨店は営業利益が過去最高を記録
【百貨店】は、1~3月期の営業利益としては過去最高を記録したとしている。
【情報サービス】は、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」をもとに、売上高がプラスで推移していることを判断理由にあげた。
精密機械・ロボット事業などで需要が堅調に推移
【造船・重機】は、関税コストの上昇や競争環境の激化を背景に採算が悪化した事業があったものの、エネルギーソリューション&マリン事業や精密機械・ロボット事業において需要が堅調に推移し、前年同期比で増益となったとした。特にエネルギーソリューション&マリン事業においては、国内外の分散型電源需要やエネルギーインフラ整備需要が依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要の継続により増収となった。
コメの価格は下がりつつあるなかでも、パン類の販売数量は高水準
【パン・菓子】の企業モニターは、中東情勢に懸念を示しつつも、売り上げが好調に推移したことから「晴れ」と判断した。
業界団体モニターは、コメの価格が下がりつつあるなかでもパン類の販売数量は引き続き高水準にあり、持ち直してきているとして「うす曇り」と判断している。
エアコンの出荷が自治体の補助金効果などで2割近く増加
【電機】の業界団体モニターによると、重電機器は受注生産品である発電用原動機のボイラ、ガスタービン、電力・産業向け電気設備の特別高圧・高圧配電盤などの生産が前年同期を上回った。白物家電機器は、国内出荷金額が前年同期比で6.5%の増加。さらに、ルームエアコンが自治体による補助金の効果などで同プラス18.2%となり、全体をけん引した。業況判断は「晴れ」とした。
企業モニターの回答をみると、A社は増収増益となったことから「晴れ」と判断。パワーグリッド事業や国内IT事業がけん引している。B社は売上高、営業利益がともに前年同期比で増加したことを理由に「晴れ」とした。C社はAIインフラ関連などが好調だが、車載電池や家電の分野がマイナス要因となり「本曇り」とした。
【非鉄金属】は、2025年度決算が2月に発表した予想よりも改善し、増収増益となったとしている。産業機械部門は大幅な減収減益となったものの、ロックドリル部門などは増収増益となっている。
【金型】では、主力製品であるハードディスク関連部品の売り上げが増加している。
事業所給食は食材費・人件費の高騰で厳しい状況
「うす曇り」とした18業種では、主に人手不足や価格転嫁の状況が判断要因にあがった。
【事業所給食】は、価格転嫁への理解が進んで売り上げが増加している企業があるものの、これまでと同様に、食材費等の高騰、人手不足とそれに伴う人件費の高騰などで業績の悪化が続いている企業も多く、厳しい業況となっている。
【ホームセンター】は、1月は気温の低下に伴い、暖房用品や除雪用品などの冬物商品を中心に動きがみられ、前年同月比の売り上げは全店ベースでプラス2.0%、既存店ベースでプラス1.2%となった。2月は平年と比べて気温が高かったことから冬物商品を中心に不調となったが、園芸用品では動きがあった。3月も平年と比べて気温が高かったことから、園芸用品をはじめとする屋外関連商品で動きがみられた。
人材確保が「深刻化しつつある」シルバー産業
【シルバー産業】では、業界団体モニターは「うす曇り」と判断。介護報酬の改定などにより介護職員の処遇改善は前進しているものの、全産業平均の賃金とはいまだにかい離があることから、人材確保は深刻化しつつあるとしている。とりわけ在宅訪問系のサービスについては、基本報酬の引き下げもあり、事業の縮小や廃止が増加している。
企業モニターも「うす曇り」としている。売上面では、医療関連事業における価格適正化の効果や、保育事業における公定価格改定などの増収要因はあったものの、介護事業における福祉用具のサービス提供の終了を主因として、予算計画を下回る結果となった。利益面では、介護事業を中心に人材確保に伴う人件費や人材紹介手数料の増加が継続していることに加え、最低賃金の上昇などを背景としたコスト増の影響もあり、厳しい状況となっている。
職業紹介はスポットワーク紹介の伸長が目覚ましい一方、先行きは不透明
【職業紹介】は、スポットワーク紹介の伸長が目覚ましいものの、業界全体では景気の先行き不透明感などにより、求人者の採用計画に慎重な姿勢が目立っているとしている。
【ホテル】は、売上高が予算と前年同期を上回ったとした。経常利益については、予算を達成したものの、前年同期比で減少したとしている。
自動車販売は電気自動車の在庫が重荷に
【自動車販売】は、中古車販売事業、整備事業の利益は堅調に推移したものの、新車販売事業が対予算で15%程度のマイナスとなったとした。その要因について、「新車販売の起爆剤となる新規モデルがなかったことや、物価高による消費マインドの冷え込みも一因」とみている。また、電気自動車の需要がなかなか高まらず、在庫が重荷となっている。
【商社】は大手7社のうち4社が過去最高益となった。資源分野の影響を受けた企業では昨年比減益となった一方で、非資源分野を強化している企業は増益を確保しており、事業ポートフォリオの違いが業績に大きく影響した。
食品では買い控えが生産に反映している可能性
【食品】の業界団体モニターによると、「日銀短観」(12月調査)での食品製造業の景況判断DIは大企業が9(前回調査比変化なし)、中堅企業が9(同マイナス5)、中小企業が3(同変化なし)でプラス水準を維持しているが、中堅企業は前回から低下しており、モニターは判断を「うす曇り」とした。価格転嫁は進んでいるものの、それによる買い控えが生産に反映している可能性があるという。
企業モニターは、新商品の発売による市場の活性化を見込んだものの、前期と同様の傾向であったことから、「本曇り」と判断した。
紙パルプは中東情勢の緊迫化を受け、在庫確保の前倒し需要が発生
【紙パルプ】は、印刷・情報用紙は経費削減による使用量減少傾向が続いており、商業印刷向け、出版印刷向けのいずれも荷動きが依然低調となっているとしている。パッケージング用紙の国内出荷については、中東情勢の緊迫化に伴う供給不安から、在庫確保による前倒し需要が寄与して前年比プラスとなった。
【印刷】は、当期の生産金額が前年同期比でおおむね横ばいとなったとしている。分野別では、包装分野が堅調の一方、出版・商業印刷・建材関連は厳しい状況にある。
これらのほかに「うす曇り」と判断した業種は、【繊維】【石油精製】【金属製品】【自動車】【電力】【港湾運輸】【ガソリンスタンド】【請負】となっている。
道路貨物は中東情勢を受けて景況感が悪化
「本曇り」と判断した8業種は、【道路貨物】【ゴム】【その他】【木材】【専修学校等】【石膏】【葬祭】【中小企業団体】。
【道路貨物】は、業界団体モニターが実施した景況感調査で前期(マイナス22.4)から悪化しており、今期はマイナス29.4となった。中東情勢の影響による燃料調達への不安や、燃料価格の高騰への懸念があるとしている。
【ゴム】では、業界団体モニターが中小企業会員に実施した景況調査で経常利益が改善しているものの、売り上げが大幅に低下していると報告。継続した円安や中東情勢による原材料価格の値上げの影響のほか、人手不足感も依然として大きいとしている。
求人情報の業界団体である【その他】は、求人広告件数が減少していることを理由にあげた。
【木材】では、主要な需要先である住宅着工が依然として低迷。【専修学校等】は、18歳人口の減少が続くなかでも、入学者数は前年並みだとしている。
セメントは国内販売が減少傾向
「雨」と判断したのは【セメント】【出版】の2業種。
【セメント】は、当期の国内販売が前年同期比マイナス5.0%で、減少傾向が続いているとした。
【出版】は、書籍と雑誌を合わせた推定販売金額が前年同月比でマイナス3.8%となっていると報告した。
<次期(2026年4~6月)の業況見通し>
次期(2026年4~6月)の業況見通しについては、40業種のうち、「快晴」はゼロ、「晴れ」が8業種(業種全体に占める割合は20.0%)、「うす曇り」が22業種(同55.0%)、「本曇り」が8業種(同20.0%)、「雨」が2業種(同5.0%)となっている。今期と比較すると、「快晴」「晴れ」を合わせた割合が10ポイント低下している。
来期の判断が今期の判断より良い業界は【中小企業団体】だけ
1~3月期から業況の好転を予想したのは、「本曇り」から「うす曇り」に引き上げた【中小企業団体】の1業種のみとなっている。
一方、業況の悪化を予想したのは、「快晴」から「晴れ」に引き下げた【工作機械】、「晴れ」から「うす曇り」に引き下げた【パン・菓子】【硝子】【非鉄金属】【造船・重機】と、「うす曇り」から「本曇り」に引き下げた【紙パルプ】の6業種。
【工作機械】では、内需・外需ともに受注が好調だとしつつも、ホムルズ海峡の閉鎖の影響を懸念している。
【パン・菓子】の企業モニターは、売り上げは堅調に推移することを想定しているが、ほとんどの原材料価格が上昇していることから価格改定を実施する予定だとし、生産数量の減少を懸念している。
紙パルプは前倒し需要の反動減を想定
【紙パルプ】では、グラフィック用紙はデジタル化やコスト削減に伴う使用量減少によって引き続きマイナス傾向が続くと予想。パッケージング用紙は、前倒し需要による反動減も想定されるとしている。
ホームセンターは塗料・シンナーなどの石油由来商品の需要が増加
今期の判断を継続した業種は【百貨店】など33業種あった。
【百貨店】(晴れ→晴れ)は、4月の国内売上高が前年同期比プラス5.6%と好調だと報告。宝飾時計などの堅調さが際立っているという。
【ホームセンター】(うす曇り→うす曇り)は、暖かい日が多いことから、園芸用品や屋外関連用品を中心とした動きを期待。また、中東情勢の影響を受けて、塗料やシンナーをはじめ、ゴミ袋、ラップ等の石油由来商品を中心に需要が増加しているとしている。
道路貨物は景況感が大幅悪化
【道路貨物】(本曇り→本曇り)は、軽油引取税の暫定税率が4月1日から廃止されたものの、中東情勢の影響による燃料調達への不安や燃料価格高騰への懸念があるとしている。業界団体モニターが実施した景況感調査ではマイナス47.2となっており、1~3月期のマイナス29.4から大幅に悪化する見込みだという。
セメントは働き方改革による工期の適正化が大きく影響
【セメント】(雨→雨)は、従来であれば年度初めはある程度のスタートダッシュが期待できるが、今年は1~3月期と変わらない状況だと報告。その理由についてモニターは、「働き方改革による工期の適正化が大きく影響している」とみている。
【職業紹介】(うす曇り→うす曇り)の業界団体モニターによると、生成AIの急速な普及による新卒採用計画などの見直しも報じられており、求人意欲には慎重さの影が見受けられるという。
調査開始以来の業況判断結果の推移は図表3のとおりとなっている。
図表3:調査開始以来の業況調査結果の推移

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