目立つ賃上げ・一時金の満額回答。初任給や企業内最低賃金の増額の獲得も
――【単組】2026春闘ヤマ場までの賃上げ要求・回答状況など
ビジネス・レーバー・モニター定例調査
単組から寄せられた報告では、賃上げや一時金で満額回答を得た組合が多くみられ、初任給や企業内最低賃金についても増額を獲得する組合があった。賃金以外の労働条件改善では、夏季休暇の日数増加や、生理休暇の名称変更・使用事由拡大などを労使合意した組合もみられた。
[賃金・一時金等の処遇改善の要求・回答状況]
自動車の単組は賃金・一時金で満額回答を獲得
春闘の牽引役である金属関連の単組から、賃金・一時金等の処遇改善の要求・回答状況の報告の内容をみていくと、【自動車】の単組は賃金・一時金について、要求どおり(満額回答)で妥結していることを報告。
経営側からは「損益分岐台数の改善が反転していない厳しい現実(稼ぐ力の低下)があり、本当は満額回答できる状況ではない」とのコメントがありつつも、「満額回答によって慢心が生まれる懸念があったものの、『もっと頑張りたい』という現場の想いに応え、全員で未来を変えていく覚悟を示すための決断であった」ことが述べられたとした。
電機の単組は賃金で満額回答を得るも配分方法などに関する交渉は難航
【電機】の単組は、電機連合方針に基づく要求ポイントで、基本昇給を行ったうえでの5%(産別統一闘争の統一要求基準である1万8,000円相当)の賃金水準改善を要求した結果、「会社は交渉中も例年以上に賃金引き上げへの理解を示し、昨年に続く満額回答となった」と報告。一方で、「配分方法や初任給に対する交渉は難航した」とした。
一時金については、「報酬を『年収』としているため、一時金個別の交渉はなく、報酬全体を5%増することで妥結した」としている。
造船・重機の単組では、賃金改善1万6,000円、一時金6.7カ月の満額で妥結
【造船・重機】では3つの単組から報告があった。A社労組では賃金改善として1万6,000円を要求し、要求どおりで決着。年間一時金は6.7カ月(約271.8万円)を要求し、こちらも要求どおり(賃金改善反映後で約282.6万円)となった。
モニターは要求作成に至る背景について、賃金改善は「物価上昇分、人への投資、実質賃金の維持・向上、優秀な人材の確保・定着など総合的に勘案した。また、上部団体である基幹労連の部門・部会でのまとまりをもった内容とした」と説明。一時金は「会社施策への協力・努力や過去最高益に対する成果配分といった観点から策定した」と報告した。
総合重工7社は「横一線で要求どおりの回答を求める」姿勢で交渉
B社労組も賃金改善として1万6,000円を求めた。企業内最低賃金は満18歳ポイント賃金を20万8,000円から22万4,000円へ改定することを要求。年間一時金は労使で合意した業績連動算式による金額および月数を要求した。いずれも、要求どおりで決着している。
モニターは、「本年を『さらなる定着の年』と位置づけ、方針を基軸に交渉を進めた」としたうえで、交渉経過では「支部の委員長から職場の声を力強く主張したり、産別本部による巡回折衝を通じて取り組みの意義を会社側へしっかりと伝えてきた」と報告。
また、「総合重工7社は、それぞれの経営環境に濃淡はあったものの、総合重工部会として『横一線で要求どおりの回答を求める』という頑なな姿勢をあらためて確認し、心を一つに交渉終盤へ臨むこととなった。苦しい時こそ『絆を強めて連帯する』という労働組合ならではの結束力が、各社の結果に確かな成果として表れたのが、今次取り組みの特徴点であった」とコメントしている。
賃金改善は要求どおりに、会社側も「賃金改善は必要」と認識
C社労組は賃金改善で1万6,000円を要求し、要求どおりの回答となった。年間一時金は6.7カ月の要求に対し、会社側からの回答は6.6カ月となった。モニターは「今期交渉において会社側は社会の要請もあり、賃金改善は必要との認識でいた。一時金については、グループとして最高益となるものの、会社諸施策などをふまえて昨年実績をベースにした楽観できない交渉となった」と報告している。
事務・精密機械の単組は臨時昇給1万3,500円で妥結
【事務・精密機械】の単組は、3月17日時点の春闘回答結果として、7月の定期昇給(平均6,500円)と、4月に一律の臨時昇給1万3,500円が加算されることを報告。これに伴う組合員平均での賃金改定額は2万円(賃上げ率5.46%程度)で、「臨時昇給額分、グレード別の役割業績給のレンジおよび下限値・上限値も改定する」と説明した。
また、初任給の一律1万3,500円の加算や、企業内最低賃金の1,240円から1,310円への増額、契約社員等の賃金引き上げ(月額5,000円~6,000円相当額)、海外赴任者の海外基本給の算出に係る改定(単身者は現行の海外基本給の算定式に10%加算など)を獲得したことを報告した。
産業機器の単組は賃上げ1万,8500円、一時金5.4カ月の満額回答
【産業機器】の単組では、賃上げ水準について平均1万8,500円(内訳は一律加算が7,000円、評価による加算が単純平均で1万1,500円)を要求。一時金については「基本給×5.4カ月」を要求し、いずれも満額を獲得した。
モニターは会社側の主張内容を報告。賃上げについては、「昨年を上回る非常に高い水準であるが、組合員の生活維持の観点をはじめ、社会・経済情勢などもふまえて検討されたものであり、一律加算は生活に必要な最低限の増加分に加え、近年急速に上昇している住居費の影響も考慮した金額であることを理解した」と述べたと報告した。
一時金については、「足元の経営状況を踏まえると厳しい水準ではあるものの、会社が示してきた考え方に概ね沿った内容であることを確認した」と述べたことや、「今回の交渉を通じて、組合員一人ひとりが価値を創造し、会社に貢献しようと努力する姿勢をあらためて認識することができ、また目標を達するという強い決意も感じた」などのコメントがあったことを報告した。
陶業の単組は総額2万6,600円の賃上げを要求し、満額獲得
金属以外の製造業をみていくと、【陶業】の単組は賃上げについて、賃金カーブ維持(5,200円、賃上げ率1.34%)およびベースアップ(2万1,400円、同5.52%)として、1人あたり総額2万6,600円(同6.86%)を要求し、満額回答となった。
モニターは要求の考え方について、上部団体の方針や今春闘を取り巻く社会情勢をふまえ、「組合員の生活水準を守り、実質賃金の持続的な上昇をめざす社会的要請に応えるとともに、人材の確保・定着の観点と、会社のさらなる成長に向けて意欲高く取り組める賃金水準を念頭に置いて設定した」と説明。
一時金については「今期の業績が過去最高益を更新する見通しであることをふまえ、業績の達成に貢献した組合員の頑張りと期待を反映した要求金額」として215万円(5.55カ月分)、企業内最低賃金は1,150円から1,250円に増加改定することを要求し、いずれも満額での回答となったと報告した。
交渉の経過では、「要求内容が会社に真摯に受け止められ、過去に前例のない早期妥結となった。今回の取り組みを通じて、総じて組合と会社が同じ方向をめざしていることをあらためて認識できた」と評価している。
化繊の単組はベア分だけで4%を要求し、満額で妥結
【化繊】の単組は、ベースアップ分として組合員1人あたり1万5,103円(要求時交渉基礎給の4%)を要求し、1万5,090円(妥結時交渉基礎給の4%)で妥結した。
モニターは、会社側が業績の厳しさから「一定程度のベアは行うが他社同様の回答は出せないという姿勢が強かった」ため、「人手不足が深刻ななか、工場を中心に今いる人財を維持・確保するためには世間動向についていくことは不可避。会社を存続させる気があるのであれば、苦しくても決断すべき」などと強く主張したと報告。回答日当日は、「連携している化繊各労組から満額の連絡が入るなか、会社として決断した模様」だと説明した。
化学の単組はベア分4%を要求し、満額にこだわった交渉を展開
【化学】の単組は、ベースアップ分として1万5,308円(賃上げ率4%)、定昇込みで2万3,236円(同6.07%)を要求し、満額で妥結した。
経営側の姿勢、交渉ムードについてモニターは、「会社側は社会情勢と組合員の貢献もふまえベースアップの必要性は理解できるが、足元の環境変化を考慮し慎重に検討したい」との姿勢だったと指摘。一方で、組合としては昨年(4%満額)を下回る情勢ではないと、満額にこだわった交渉を展開したことを訴えた。
医薬品の単組はベンチマークを4%上回るテーブル引き上げを獲得
【医薬品】の単組は、組合員の職務給テーブルについて、「各職務グレードでベンチマークとの乖離を確認し、ベンチマークを上回るテーブル改定を要求した」ところ、会社回答により、「ベンチマークに達するだけではなく、それを4%上回るようにテーブルを引き上げ」ることになったと報告。引き上げ率は各職務グレードで異なるが、最も大きく引き上がったグレードでは24%の引き上げ率となっているという。
また、同水準で賞与テーブルについても引き上げを要求したところ、「満額の回答が得られた」としている。
ほかにも、テーブル改定に加えて、従業員の賃金引き上げのため、通常の定期昇給とあわせて組合員平均で約4.5%となる昇給を要求したところ、会社回答では、「約5.0%の見込みとなる昇給率テーブルを提示された」とし、モニターは、この昇給率は「昇格時の昇給を除くものであり、昇格時昇給を含めるとさらに高い水準となることが想定される」と説明した。
国内貨物輸送量の減少や原油高などの影響で「厳しい交渉」に
【道路貨物】の単組は、賃金改善については1万7,300円、一時金については年間5カ月を要求した結果、賃金は1万2,000円、一時金は年間3.1カ月での妥結となったとした。また、宿泊を伴う作業出張や自動車輸送業務時の1食あたりの食事料について、700円から1,000円に引き上げるよう要求し、要求どおりの回答となったとした。
モニターは要求の組み立てに際し、連合や上部団体である運輸労連の方針をふまえて「『生活の維持・向上』と『雇用の確保・拡大』を図るための重要な闘い」と位置づけ、①賃金要求は定期昇給相当分に加え、物価上昇への対応も含め賃金の引き上げに取り組む②一時金については、生活費の補てんと成果配分との位置づけをもって、要求の実現に取り組む③会社経営諸施策に対しては、働きがいや希望のもてる職場づくりに向け、会社対応にあたる――の3点を意識して、交渉に臨んだと説明。
交渉のムードについては、「世界経済、日本経済、地政学リスクなどをふまえ、先行き不透明な状況にあること、国内貨物輸送量の減少傾向が続いていること、原油価格の高騰など各種コスト高が、会社業績に影響を与えていることなどについて説明があり、厳しい交渉となった」としつつ、「最終的には、会社としても昨今の物価上昇等の影響をふまえ、従業員の日頃の労苦に報いたいとの発言がなされた」と報告している。
建設の単組はすべての等級で一律3%のベースアップを獲得
【建設】の単組では、「全体平均として3%のベースアップを要求」したうえで、近年の若手の重点的なベースアップによって賃金カーブが緩やかになっている現状から、「おおよそ32歳以下の等級に関しては2.5%アップ、33歳以上の等級に関しては4%アップの要求」をしたことを報告。その結果、すべての等級で一律3%のベースアップとなったとしている
[その他の労働条件改定の内容]
柔軟な勤務形態の導入やメリハリのある評価実施の徹底などを協議
その他の労働条件改定の内容について報告をみていくと、【自動車】の単組は、「働き方の見直し」として、柔軟な勤務形態の導入など意志のある人の頑張りを後押しする施策を速やかに実行すること、「評価制度の運用」として、幹部職・基幹職が今まで以上にメリハリのある評価を行うことを徹底すること、「コミュニケーションの促進」として、チームワークを支える場づくりなどの一環で10月から食堂の価格を半額程度に見直すことなどを協議した。
また、交渉・協議した特徴的なテーマについては、品質問題・稼働停止、プロジェクト遅れの際の対応、挑戦と技を磨くための場づくり、AI活用などをあげた。
介護・看護等を目的とした海外テレワークの導入などを要求
【電機】の単組は、交渉・協議した特徴的なテーマとして、継続的な総実労働時間の削減や従業員の健康確保に加え、「今年は・忌引きの対象範囲拡大(血族と姻族の区分撤廃)や、海外に居住する親族の介護・看護などを目的とした海外テレワークの導入なども要求し、前者は要求が認められたが、後者は今交渉期間中の拡大には至らなかった」と報告。また、有給休暇取得促進施策として、夏季休暇を5日から6日に拡大する組合提案が合意に至ったことも説明した。
単身赴任時の帰省回数拡大や生理休暇の名称変更・使用事由拡大を要求
【造船・重機】のA社労組は、交渉・協議した特徴的なテーマとして、「会社が持続的に成長していくための『人への投資』はどうあるべきかなど、会社が考える観点や組合として果たすべき責務について、今次交渉のなかで意見を交わした」ことや、「労使が一体となって取り組み、社会の期待に応えていくために協力・努力していくことを共有した」ことをあげた。
B社労組は、単身赴任における帰省回数を現行の「1カ月を経過するごとに1回」から拡大することや、事業所間特別派遣における帰省回数を現行の「2カ月を経過するごとに1回」から拡大すること、長期宿泊出張における帰省回数を現行の「2カ月を経過するごとに1回」から拡大することなど、帰省回数について要求。また、生理休暇の名称を変更して使用事由を拡大することも要求したとし、いずれも要求どおりの回答を得たとした。
月の出勤時間の上限引き下げや女性活躍推進行動計画の更新を実施
【事務・精密機械】の単組は、春闘後の労使専門委員会で交渉・協議したテーマとして、平日および全休日出勤を合計した1カ月の上限時間を「99時間まで」から「90時間まで」に改定したことを報告。
また、女性活躍推進行動計画を更新して、「『2030年に女性管理職比率20%以上』の目標達成に向けた計画の作成や、女性従業員の継続的な採用強化、男性の育児休職取得率向上などの目標を立てられないかも検討した」としている。
60歳以上の処遇のあり方の見直しの協議を進めることで合意
【化繊】の単組は、交渉・協議した特徴的なテーマとして、労働力不足への対応や、交替勤務者(生産職場)の労働環境整備、リスキリングと現役社員へのリテンション(特に生産職場について)などをあげた。
【化学】の単組は、交渉・協議した特徴的なテーマとして、「65歳定年延長制を2023年4月に実施して以降、60歳以降の処遇水準や60歳で原資が確定する退職金・退職年金のあり方が継続協議事項になっていた」としたうえで、60歳以上の処遇のあり方(本給、退職金・年金ポイントの積み増し)について、「2026年度末を目途に具体的な見直しの方向性を示せるよう労使専門委員会にて協議を進めることで労使合意した」と報告した。


