【九州】(九州経済調査協会)
プラスで推移していた実質賃金が4月以降は中東情勢の影響でマイナスを予想
地域シンクタンク・モニター定例調査
九州の2025年10~12月期の経済動向は、消費、投資、生産関連に大きな変調がみられないことから、モニターである九州経済調査協会は【横ばい】と判断した。1~3月期も、景気判断の動きなどをもとに【横ばい】としている。雇用動向は、10~12月期は【横ばい】とし、1~3月期も各種統計の動きをもとに【横ばい】としている。九州地域では実質賃金がプラスで推移していたが、中東情勢の影響による消費者物価指数の上昇を受けて、4月以降は実質賃金がマイナスになるとモニターはみている。
<経済動向>
景気ウォッチャー調査が改善も、鉱工業生産・所定外労働などは悪化
九州地域のモニターは10~12月期の地域経済を【横ばい】と判断した。
モニター作成の九州地域景気総合指数は、10月が前月比マイナス1.1%、11月が同マイナス0.3%、12月が同マイナス2.8%と推移した。
指数を構成する個別の指標をみると、非居住用建築着工床面積や景気ウォッチャー調査が前期と比較して改善したものの、鉱工業生産指数や有効求人倍率、所定外労働時間などが前期と比較して悪化している。
個人消費については、当期の百貨店、スーパーマーケットの販売額は前年同期比プラス1.0%となっている。スーパーマーケットはコメをはじめとした食料品などの動きも良く、対前月比でプラスが続いている。その他の業態についても、ドラッグストアが同プラス7.0%と好調を維持している。
生産については、当期の鉱工業生産指数は前期比マイナス3.9%と5期ぶりに悪化している。10月に半導体関連業種が低下したことが当期の指数低下に寄与したものの、主な要因は出荷のタイミングや反動減などにあり、需要の減退を受けたものではなく持ち直しの動きが続いている。
住宅投資については、建築基準法および建築物省エネ法改正に伴う3月の駆け込み着工の反動減が長引いており、新設住宅着工戸数や新設住宅着工床面積は多少の収束をみせつつも、前年比マイナスが続いている。
設備投資は全産業で堅調さを維持
設備投資については、日本政策投資銀行「九州地域設備投資計画調査(2025年8月)」によると、2025年度の九州地域の設備投資計画は製造業で前年度比プラス5.9%、非製造業で同プラス3.1%、全産業で同プラス4.5%と堅調さを維持する見通し。
10~12月期の非居住用建築物着工床面積は前年同期比プラス30.3%と大幅に増加している。
公共投資については、当期の公共工事請負金額は前年同期比プラス18.3%と増勢が続いている。
モニターはこうした動きをもとに、「九州地域景気総合指数は弱含みで推移しているものの、消費や投資、生産関連に大きな変調はみられない」とコメントしている。
中東情勢の悪化で消費者物価は上昇の見込み
1~3月期の見通しについても【横ばい】と判断した。
九州地域景気総合指数の先行指数は、12月が138.3で、2カ月連続で上昇した。先行指数を構成する個別の指標の動きをみると、鉱工業在庫指数や新規求人数、企業倒産件数が前期から悪化したものの、消費者態度指数や東証株価指数などは改善している。
九州7県における景気ウォッチャー調査の先行き判断DIをみると、2025年12月調査では50.6で、景況判断の節目となる50を4カ月連続で上回った。
なお、中東情勢の悪化についてモニターは、「原油価格急騰により、3月からガソリンや灯油価格が高騰することが見込まれ、4月以降の消費者物価指数は押し上げられる」とみている。
<雇用動向>
1人あたり現金給与総額の前年比上昇率は全国を上回る状況
雇用の実績(10~12月期)について、モニターは【横ばい】と判断した。
当期の有効求人倍率は1.09倍で、前期比0.03ポイント低下した。完全失業率(原数値)は九州7県が2.2%で前年同期比マイナス0.2ポイント、沖縄県が3.3%で同プラス0.4ポイントとなった。
当期の非農林業雇用者数は652万人で、前期から1.7%増加した。「卸売業、小売業」「運輸業、郵便業」などが減少した一方で、「教育、学習支援業」「製造業」「宿泊業、飲食サービス業」などが増加した。
厚生労働省「毎月勤労統計調査地方調査」について、1人あたり現金給与総額の前年比上昇率の動きをみると、九州8県は全国を上回る水準で推移している。当期の九州8県合計では、名目賃金の伸びが物価上昇率を上回っており、実質賃金が上昇している状態で推移した。
中東情勢が春闘に与える影響は軽微だが、懸念される景気回復ペースの抑制
1~3月期の見通しについても【横ばい】と判断した。
先行指標であるパートタイム有効求人数(原数値)は、10~12月期が前年同期比マイナス10.1%、新規求人数は10~12月期が前期比マイナス3.2%となった。
日銀短観の12月調査における雇用人員判断DIの次回(3月)予測では、製造業はマイナス29、非製造業はマイナス52で、ともに「不足」するとみている。
モニターは中東情勢の悪化の影響について、「2026年春闘に与える影響は軽微と考えるが、2026年4月以降の実質賃金は物価上昇と相まってマイナスとなる可能性が高く、景気回復ペースを抑制する懸念が高まっている」とみている。
地場主要企業の賃上げは連合目標をおおむね達成
モニターによると、2026年春闘は九州においても全国同様、深刻な人手不足、物価高、企業の高収益が続くなか、実質賃金のプラス定着や賃上げの裾野拡大が争点となっている。
「ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率5%以上、中小企業6%以上」という連合の目標水準に対して、3月26日時点で結果が公表されている地場の主要企業の賃上げは、おおむねこの目標を達成しており、「前年並みの高水準な賃上げが実現していると評価できる」という。
福岡県の主要な企業をみると、全体の賃上げ幅は前年以上の水準が多く、前年を下回る場合でも、満額回答の企業が多い。また個別企業においては、賃上げのみならず労働環境の改善や副業解禁、勤務地の選択制度など要望の多様化がみられる。
そのうえでモニターは、「企業の人件費負担が大きくなるなかで、中小企業の労働分配率は約8割まで高まっており、中小企業・小規模事業者の更なる賃上げ余力は大企業と比較して厳しい状況にある」とした。


