【北海道】(北海道二十一世紀総合研究所)
ラピダスの千歳市への進出でエンジニア・技能職の争奪戦が激化
地域シンクタンク・モニター定例調査
北海道の7~9月期の地域経済について、モニターである北海道二十一世紀総合研究所は、気温が高めに推移したことで、衣料品を中心に秋冬物の需要の落ち込みがみられたものの、OSのサポート終了によるパソコンの買い換え需要で家電大型専門店の売上額が増加していることなどから【横ばい】と判断した。10~12月期の見通しも、観光関連の好調が続いていることなどから【横ばい】としている。雇用動向は、7~9月期、10~12月期のいずれも有効求人倍率や日銀短観の動きをもとに【横ばい】と判断している。モニターによると、ラピダスによる千歳市での半導体工場の建設で、市内では賃金水準が大きく上昇しており、道内ではエンジニアや技能職の争奪戦が激化している。
<経済動向>
家電大型専門店の販売額が約1割増、OSのサポート終了によるパソコンの買い換え需要が寄与
モニター実施の「道内企業の経営動向調査(7~9月期実績)」によると、売上DIは3でプラス圏を維持したが、利益DIはマイナス9で3期連続のマイナスとなった。業種別にみると、製造業は売上DIがマイナス2で、利益DIはマイナス20。非製造業は売上DIが5で、利益DIがマイナス5となっている。
分野別の動向をみると、当期の販売額は家電大型専門店(前年同期比プラス9.8%)、コンビニエンスストア(同プラス2.6%)、ドラッグストア(同プラス2.3%)が前年を上回り、百貨店(同マイナス2.9%)、ホームセンター(同マイナス0.6%)、スーパーマーケット(同マイナス0.6%)は前年を下回った。合計では前年同期比プラス1.2%となった。
モニターによると、「物価上昇が続いていることで消費者の節約志向は根強く、さらに例年よりも気温が高めに推移したことで、衣料品を中心に秋冬物の需要の落ち込みもみられた」という。一方、家電量販店の大幅プラスについては「好調なエアコン需要、既存OSのサポート終了に伴うパソコンの更新需要が寄与した」とみている。
乗用車新車登録台数は前年同期比マイナス3.2%で、3四半期ぶりに前年を下回った。
外国人入国者数が前年同期比15.8%増
観光関連をみると、国内来道客数は前年同期比プラス3.7%となっている。外国人入国者数は同プラス15.8%で増加傾向が続いている。
公共投資は、公共工事請負金額が前年同期比プラス0.8%で、2四半期連続で前年を上回った。
住宅投資は、新設住宅着工戸数が前年同期比マイナス15.3%と減少している。建築物分野の省エネ推進を目的とする改正建築物省エネ法の全面施行の影響がみられ、足元の動きは鈍い。
これらの動きをもとにモニターは、「物価高を背景に、消費者の節約志向、企業のコスト負担増加といった影響が続いている」ものの、「総じて個人消費が底堅く推移していること、観光関連の好調が続いていること、住宅投資の落ち込みがみられる一方で公共投資が好調に推移している」ことから、7~9月期の地域経済を【横ばい】と判断した。
利益DIは運輸業以外の全産業でマイナスを見込む
「道内企業の経営動向調査(10~12月期見通し)」によると、売上DIは3で前期から横ばい、利益DIもマイマス7で横ばいとなった。業種別にみると、食料品や木材・木製品などの製造業、建設業で持ち直しの動きがみられるものの、利益DIは運輸業以外の全産業でマイナスが見込まれている。
10月の業態別販売額は、すべての業態で前年を上回り、合計では前年同月比プラス4.0%で、2カ月ぶりに前年を上回った。
観光関連では、10月の国内来道客数、外国人入国者数はともに前年同月比でプラスとなっている。
住宅投資は、10月の新設住宅着工戸数が前年同月比マイナス3.6%で、駆け込み需要の反動減が続いているものの、落ち込み幅は縮小しており、「改正建築物省エネ法の全面施行の影響が徐々に薄れていることがうかがえる」。
公共投資は、10月の公共工事請負金額が同マイナス14.9%となっている。
モニターはこれらの動きをもとに、「コスト上昇要因により企業収益が厳しくなりつつある」ものの、「気温低下により秋冬物商材を中心に個人消費が好調」「観光関連の好調が続いている」ことから、10~12月期の見通しも【横ばい】と判断した。
<雇用動向>
人手不足感の強い状況に変化はみられず
労働統計をみると、有効求人倍率は7月が0.98倍(前月比マイナス0.02ポイント)、8月が0.97倍(同マイナス0.01ポイント)、9月が0.94倍(同マイナス0.03ポイント)と、やや低下傾向で推移している。
新規求人数は7月が前年同月比マイナス5.6%、8月が同マイナス4.2%、9月が同マイナス0.5%と推移しており、3カ月連続で前年を下回っている。
7~9月期の完全失業率は3.1%で、前期比では0.6ポイントの上昇、前年同期比では0.5ポイントの上昇となっている。
日銀短観(9月調査)の雇用人員判断はマイナス47の「不足」超で、前期から2ポイント低下した。業種別にみると、製造業がマイナス36で同5ポイント低下、非製造業がマイナス47で同1ポイント低下となっており、「人手不足感の強い状況が継続している」。
モニターは7~9月期の雇用について、「新規求人数が減少傾向にあるものの、総じてみれば、人手不足感の強い状況に変化はみられない」として【横ばい】と判断した。
新規求人数は減少傾向が続くが人手不足感は変わらない見通し
日銀短観の12月先行きの雇用人員判断はマイナス50で、今期から3ポイント低下しており、人手不足感が強い状況が続く見込み。
10月の有効求人倍率は0.96倍で前月から0.02ポイント上昇し、4カ月ぶりに前月を上回った。新規求人数は前年同月比マイナス2.0%と、4カ月連続で前年を下回った。業種別にみると、「医療、福祉」や「公務(他に分類されるものを除く)・その他」、「運輸業、郵便業」などで増加したものの、幅広い業種で前年を下回った。
10~12月期の見通しについてモニターは、「新規求人数の減少傾向が続いているものの、総じてみれば人手不足感の強い状況が継続している」として【横ばい】と判断した。
ラピダスの進出で千歳市の賃金水準が大幅アップ
モニターは、次世代半導体の国産化を目指すラピダス(Rapidus株式会社)が千歳市に進出した影響について報告している。
ラピダスでは2027年の量産化を目指しているが、半導体産業は素材、装置、部品、物流、サービスといった幅広い分野での連携が求められることから、千歳市やその周辺地域では、製造装置や材料、設計、物流などの関連企業の進出が相次いでおり、周辺の工業団地のなかには用地が飽和状態に達したところもある。
雇用面をみると、パイロットラインの稼働が始まった2025年4月時点で約300人が千歳工場に勤務しており、2027年の量産化開始時点には約1,000人まで増員する見込みとなっている。ラピダスでは優秀な技能系人材の確保に向けて、これまでの道内の給与水準を大きく上回る好待遇で人材を募集している。半導体関連企業の進出に伴う求人が始まっていることも影響して、千歳市における求人の平均月給は2023年1月時点との比較で1.5倍近くまで上昇している。
中小企業では優秀な人材の流出に懸念も
一方で、急速に変化が進んでいることで「課題も散見される」という。
道内企業も含めた人材の採用環境についてみると、ラピダスや半導体関連企業との間で人材の争奪戦が激化している。特にエンジニアや技能職の獲得競争が激しく、地場中小企業からは、優秀な人材が流出するとの声も聞かれる。サービス業や建設業の労働力不足も顕著になっており、地域全体の人手確保に影響が生じている。
こうしたなか、半導体関連の技能人材の育成についてモニターは、「千歳科学技術大学や北海道大学などで教育カリキュラムを拡充しているが、安定して人材を輩出していくためには、分野横断的な人材育成、半導体研究・応用分野の魅力発信といった仕組みづくりが求められる」とコメントしている。


