組合員との交流を促進する取り組みを掲げる組合も。AIへの対応については多くの組合が肯定的な姿勢
――【単組】1年間の運動・活動での特徴的な内容や2025年の定期大会で決定・補強した運動方針など
ビジネス・レーバー・モニター定例調査
単組モニターから寄せられた報告をみると、この1年間の運動・活動での大きな成果としては、賃上げ交渉での要求満額の獲得などの報告が目立った。運動方針のポイントでは、労働条件の向上以外で、組合員との交流を促進する取り組みをあげる組合も少なくない。職場でのAI技術の活用への対応については、業務の効率化などの面から肯定的な回答が目立ち、組合の業務に生成AIを積極的に活用して運営の効率化を図っているとの報告もあった。
ボトムアップの職場課題解決に向けたサイクルにこだわる
金属関連の単組から、報告の内容をみていくと、【自動車】の単組は、この1年間の特徴的な取り組みとして、「2年前に策定したミッション、ビジョン、バリューに基づき、これまでも大切にしてきた『組合員と家族の真の幸せと会社と産業の持続的な成長』の実現のための活動と、ビジョン『一人ひとりが変革の主役となり、共創しつづける』の実現に向けて力を入れていく活動に整理して、活動を推進している」と紹介。
また、組合活動に対する組合員へのアンケート結果で、活動に対する肯定回答の割合が昨年比で増加していたことから、「組合活動の成果が出始めており、前進していることがわかる」と評価。この結果をふまえて、ボトムアップの職場課題解決に向けたサイクルを確実に回すことにこだわり、全員参加で活動していくとしている。また、課題解決にあたり、「会社と議論することに加えて、そこで解決しきれない課題については、上部団体や組織内議員を通じ産業全体や行政にも働きかけを行っていく」とした。
組合としても一人ひとりがAI等を活用していくことには積極的
職場でのAI技術の活用への対応については、「方針で直接的にAIに関する言及はない」としつつも、一人ひとりが日常業務において生産性を向上させていくことが必要だという点は労使共通の認識となっており、「会議録の作成業務などで、一人ひとりがAI等を活用していくことには積極的」とコメント。組合の活動でも好事例の横展開などを日常的に行っていくことを報告している。なお、中長期の視点で各種業務がAIに置き換わることによる要員体制への影響については、「具体的な労使議論はない」として、積極的に活用を進める段階にあるとの認識を示した。
4支部から3支部へ体制を変更
【電機】の単組は、特徴的な取り組みとして、会社側の組織改編に基づき、2025年度から4支部体制を3支部体制に変更したことをあげ、「役員体制はもちろん、今後の3支部の活動の見直しなどにもつながる内容」とした。
また、選挙時だけではなく、「政治の日常化に関する取り組みの強化」についても言及。「年間を通じて、職場課題を政策制度要求として組織内・協力議員に進言する取り組みを維持・強化した」としている。
業務の高度化・効率化を目指してAI技術サービスの利用を検討
職場でのAI技術の活用への対応については、「労働組合としても業務についての高度化・効率化に取り組むことを目指し、各種サービスの利用を検討している」と報告。すでに業務での利用を開始している事例もあり、「個々に進めている利・活用内容を相互共有する場を設けている」とした。
賃金改善や年末一時金で要求どおりの満額回答を獲得
【造船・重機】では2単組から報告があった。A社労組では1年間で成果をあげた取り組みとして、上部団体である基幹労連のAP25春季の取り組みにおいて、賃金改善や年間一時金の要求に対していずれも要求どおりの満額回答となったことや、労働諸条件の一部改正についてもほぼ組合要求どおりとなったことを報告。政策実現活動の推進においては、基幹労連と連携して組織内議員の当選を果たしたとしている。
定期大会におけるポイントでは、「グループ労連を解消し、単一組織への移行大会として、内部の体制も4専門部体制から2局体制とし活動することとなった」としている。
3年連続で1万円以上の満額回答を達成
B社労組も成果として、2025年度春闘における賃金改善要求において、「上部団体の指導もあり、1人平均1万5,000円の満額回答を得て、3年連続で1万円以上の満額回答となった」と報告。単組における政策実現活動の推進に向けては、組織内議員候補者の擁立決定を行ったことをあげている。
職場でのAI技術の活用への対応については「現状はないが、会社の利・活用状況を確認して可能な範囲で取り入れていきたい」としている。
役割業績給への一律加算と上・下限値の改定を実施
【事務・精密機械】の単組は、特徴的な取り組みとして、労働協約・就業規則の改定関連に言及。仕事と治療の両立支援規程としてのサポート休暇の新設や、失効年休積立保存制度について、子育て支援での使用用途の拡大や再雇用者への新設、労働協約に基づく役割業績給の定期改定の実施(組合員平均で6,500円の改定)、役割業績給への1万3,000円の一律加算および加算分の下限値、上限値の改定などを実施している。
また、賃金改定については、組合員平均の賃金改定額を1万9,500円(改定率平均5.51%程度)、企業内最低賃金の1,190円から1,240円への改定なども行ったことをあげている。
職場でのAI技術の活用への対応については、「社内用のChatGPTの活用拡大と、さらなる生成AIの充実を、労使専門委員会で議論予定」としている。
産業機器の単組は平均2万円の賃上げを獲得
【産業機器】の単組では、賃上げについて「ベアと定期昇給(制度あり)で平均2万円となった」と成果を強調。次期の活動方針としては、「組合員の参画意識向上に向け、アンケートを実施する」ことや、「予算を増額し、総額の1割強を織り込んだ」としている。
従来は会社の専権事項だった原資の配分にこだわって要求し、獲得
金属産業以外の製造業をみていくと、【陶業】の単組は、成果をあげたこの1年間の取り組みとして、まず2025春闘について「組合員平均で2万4,000円(6.50%)の賃上げを満額で妥結した」と報告。「従来は会社の専権事項とされていた原資の配分先について、中核層への配分にこだわって要求し、原資の獲得に成功した」としている。
また、社外との交流活動組合役員(中央委員・職場委員)の資質向上を目的として、異業種の他労組との交流や、社内の他事業本部の工場見学を実施。そのほか、働き方や制度改定、職場の課題などをテーマに、組合員どうしが意見交換を行うイベントを、①「職場のゆたかさ」の実現に向けた課題の抽出と解決する取り組みの推進②有休20日取得に向けた職場ごとの課題や休暇制度に関する意見の会社への提言――の2つのテーマで実施したとしている。
次期方針では執行部による組合役員全員との交流会を実施
次期方針については、「中間期であるため活動方針に変更なし」として昨年度の取り組みを継続しつつ、「組合関与の向上と組織の活性化を目的とした新たな施策として、執行部による組合役員(中央委員・職場委員)全員との交流会を実施している」と報告。「組合活動の目的や組合役員としての役割を改めて認識してもらい、役員自らが主体的に行動することを期待する」としている。
職場でのAI技術の活用への対応については、「会社側が積極的にAIの活用を推進しており、労働組合としても生産性向上や人手不足の課題解決のため、これに同調している。労働組合の業務においても生成AIを積極的に活用し、運営の効率化を図っている」と説明した。
化繊の単組はベア満額での妥結や事業構造改革に伴う要員対応を提示
【化繊】の単組は、労働条件改定交渉においてベア満額(4%)で妥結したことや、事業構造改革に伴う要員対応、組織拡大したグループ会社での制度改定などを1年間の特徴的な取り組みとして報告。
次期運動方針として掲げたポイントでは、新中期経営計画策定に向けた組合としての意思反映や、さらなる経営チェックの強化、「労働時間管理」と「人員計画策定」でのさらなる役割発揮をあげている。
職場でのAI技術の活用への対応については、「生産性向上に向けたAI活用を含むDX促進は、現状のタイトな人員状況や、今後加速度的に進む人財確保の困難さを打開するため、早急に進めるべきと考えている」とする一方、予算の確保や、移行期間中の適切な工数やスケジュール管理、業務内容が変化することに対する社員への十分な教育の必要性を示した。
化学の単組は対話を通じた参画の推進などを重点施策に掲げる
【化学】の単組は、「組合員一人ひとりとともにつながり、考え、創ることを通じて組合員と組合がともに成長する活動を推進する」として、具体的には「参画を通じて組合員と組合がともに成長する好循環」を目指すことを掲げている。そのために組織全体で取り組む重点施策として、①対話を通じた参画の推進②全員で創る職場自治③ワーク&ライフの基盤領域でのきっかけづくり――の3つを設定している。
活動立案の際には、「活動を通じて誰にどういった状態になってもらいたいか、ストーリーを意識することを実践」したことや、対話活動についても対話の質を意識して展開したことを紹介。職場自治については、実践事例の共有などを通じた知恵や工夫の横展開を強化したとしている。
職場でのAI技術の活用への対応については、「職場に限らず組合活動でも活用が当たり前のものとして根付きつつある」とした。
医薬品の単組はつながりを醸成する活動を重視
【医薬品】の単組は、特徴的な取り組みとして、「COVID-19による対面活動の制限後、つながりを醸成する活動を重視してきた」と報告。各事業場の状況に応じて対面・オンラインの活動を展開したことや、担当者を置いて研修・セミナーなどの支部活動を推進したことを強調した。また、5年程度のサイクルで労組ビジョンを策定しており、2026年度(2025年9月からの1年間)は新たに「つながりを力に変えて、輝く仲間と未来を切り拓く」との労組ビジョンを掲げた。
道路貨物の単組は新会社の新たな賃金や労働条件を会社と協議
【道路貨物】の単組は、1年間の運動活動の特徴として、「2025年1月より、会社の1事業部門を切り離し、新会社としてスタートした」と説明。事業部門に所属していた社員が転籍という形になったものの、引き続き組合員であることから、「新会社での新たな賃金、労働条件を会社と協議し、組合主張を取り入れつつ、決定することができた」としている。
次期方針では、2026年春闘の対応について、「これまでは1つの会社に対し要求を行っていたが、新会社が設立されたことからこれまでの取り組みに加え、新会社に対する春闘の要求方針について確認した」としている。
【建設】の単組は、職場でのAI技術の活用への対応について、社内サイトで推奨している通知はあったものの、「業務にどう生かすかは個人の裁量に任されている状況」としている。


