【山形】(山形銀行やまぎん情報開発研究所)
山形新幹線のトラブルで目立つ、観光分野の落ち込み
地域シンクタンク・モニター定例調査
山形県では、4~6月期の地域経済は、米国の関税政策の影響が懸念されたものの、総じてみれば緩やかな持ち直しの動きとなったことから、モニターである山形銀行やまぎん情報開発研究所は【やや好転】と判断した。7~9月期の見通しは、山形新幹線のトラブルで観光分野の落ち込みが目立っており、【横ばい】とした。雇用動向は、人手不足感の状況などをもとに4~6月期の実績は【やや悪化】とし、7~9月期の見通しは、非製造業で人手不足感が緩和しているものの、一時的な動きとみて【横ばい】と判断した。モニターが実施した調査によると、5%以上の賃上げを実施する県内企業の割合は約14%となっている。
<経済動向>
鉱工業生産指数の前年比が6四半期ぶりにプラスに転じる
4~6月期の鉱工業生産指数は、前年比で6四半期ぶりにプラスに転じたほか、前期比では8.2%上昇した。
個人消費をみると、当期の県内の販売統計は前年比プラス4.2%。モニター作成の「やまぎん消費総合指数」は実質値で前期比マイナス5.8%、名目値でも同マイナス5.4%と、いずれも低下となった。食料品価格が上昇する半面、選択的消費を抑制する動きもみられる。
モニターが実施した「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期比5.9ポイント上昇の2.2となった。上昇は2期ぶり。業種別にみると、製造業は同1.5ポイント低下のマイナス5.3、非製造業は同11.4ポイント上昇の7.7となった。
こうした動きをふまえモニターは、「米国の関税政策の影響が懸念されたものの、総じてみれば緩やかな持ち直しの動きとなった」として、4~6月期の地域経済を【やや好転】と判断した。
自動車関連分野を中心に懸念される米国の関税政策による下押しの顕在化
7~9月期について、生産活動は、自動車関連分野を中心に、米国の関税政策による下押しの顕在化が懸念されるものの、電子部品・デバイスや化学などの主力業種への現状における影響は軽微であることから、総じてみれば横ばい圏内での推移が予想される。
個人消費についても、コメをはじめとする食料品価格の高騰継続をうけて、選択的消費にあたるサービス消費や耐久消費財消費など、一部に弱さがみられ、全体としては横ばいでの推移になるとみられる。
「やまぎん企業景況サーベイ」によると、当期の業況判断BSIは前期比4.0ポイント低下のマイナス1.8で「悪化」超に転じた。
業種別にみると、製造業は同3.8ポイント上昇のマイナス1.5で、米国の関税政策に対する過度な懸念が後退し、前期比では改善する動きとなった。
非製造業は同9.7ポイント低下のマイナス2.0と大幅に悪化。6月中旬から約1カ月半にわたり、山形新幹線が新型車両の不具合で東京~山形間の直通運転が極端に少ない運行となったことなどが影響し、観光関連分野の落ち込みが目立っている。ただし非製造業のなかでも、小売業については改善する動きもみられており、県内世帯における一般消費財消費は底堅く推移している。
こうした状況を総合的にふまえてモニターは、7~9月期の見通しを【横ばい】とした。
<雇用動向>
製造、卸売などで求人の前年比減が続く
労働統計をみると、4~6月の有効求人倍率は1.31倍で、前期に比べ0.04ポイント低下した。製造業、卸売業・小売業、建設業などを中心に、有効求人数の前年比での減少が続いている。なお、有効求職者数も小幅な前年比減が続いているが、事業主都合離職者は9四半期連続で前年比増となっており、倒産や解散・廃業などによる雇用調整の動きが徐々に強まっている様子もうかがえる。
「やまぎん企業景況サーベイ」の雇用判断BSI(「多い」-「少ない」)をみると、前期比4.2ポイント上昇のマイナス29.6で、2四半期連続で上昇した。業種別にみると、製造業は同11.7ポイント上昇のマイナス9.7、非製造業は同1.5ポイント低下のマイナス44.2となっている。2023年7~9月期を底として、2年にわたり製造業を中心とした人手不足感の緩和傾向が続いており、モニターは「県内企業における省人化の進展、あるいは生産能力の縮小を反映している可能性もある」とみている。
モニターは4~6月期の雇用状況を、「求人数の減少が続き、やや弱い動き」として【やや悪化】と判断した。
有効求人倍率では東北6県で最も高い水準を維持
7月の労働統計をみると、有効求人倍率は1.29倍で、前月比では0.01ポイント上昇と横ばいの動き。県内の有効求人倍率は引き続き全国平均よりも高く、また東北6県で最も高い水準を維持している。求人・求職ともに縮小傾向が続くなかで、小幅な動きとなる見込み。
「やまぎん企業景況サーベイ」での7~9月期の雇用判断BSIは前期比0.9ポイント上昇のマイナス28.7で、3四半期連続の上昇となった。依然として人手不足感の強い状態ながら、約4年ぶりの高水準となっている。業種別にみると、製造業は同3.3ポイント低下のマイナス13.0で、非製造業は同4.6ポイント上昇のマイナス39.6。
モニターは7~9月期の見通しについて、「非製造業における人手不足感の緩和は、山形新幹線のトラブルによる観光客の減少などをうけた部分も大きいと考えられ、一時的なものにとどまる可能性が高く、雇用動向は【横ばい】での推移が見込まれる」と判断した。
5%以上の賃上げを実施する企業が約14%
モニターが8月に県内企業に実施した調査によると、今年度賃上げを「実施する(予定を含む)」とした企業は84.1%で、「実施しない」が6.3%、「実施するか検討中・他」が9.6%となった。
賃上げ実施企業の内訳をみると、3%以上の賃上げ率となった企業は41.6%で、前年同時期の調査に比べて1.3ポイント上昇したほか、5%以上の賃上げ率となった企業は14.2%で同1.4ポイントの上昇と、賃上げ率は総じて拡大傾向が続いている。
なお、連合山形の7月末時点の最終集計結果によると、2025年の春季賃上げ率は4.29%で前年の4.02%を上回り、1993年以降では最も高い水準となった。


