【宮城】(七十七リサーチ&コンサルティング)
猛暑による外出控えがサービス消費の下押しに。人手不足感は強まる見込み

地域シンクタンク・モニター定例調査

宮城県の4~6月期の経済動向は、生産活動は基調としては持ち直しているものの、個人消費は総じて弱い動きで、モニターである七十七リサーチ&コンサルティングは【横ばい】と判断した。7~9月期の見通しも、猛暑による外出控えがサービス消費の下押しとなるとみて【横ばい】。雇用については、4~6月期実績は各統計の動きもふまえて【横ばい】とし、7~9月期見通しも人手不足感が強まると見込んだうえで【横ばい】とした。

<経済動向>

自動車関連での輸送機械の前期比減の影響は限定的

モニターは4~6月期の地域経済について、「全体としては足踏みしている」として【横ばい】と判断した。

判断理由を詳しくみていくと、生産は大きく振れているが、基調としては持ち直しの動きとなっている。米国向けに25%の相互関税が課されている自動車関連は、輸送機械が前期比マイナス5.7%と減少したが、モニターは「挽回生産の反動などによるもので、国内向けの小型車中心であるため、影響は限定的」とみている。車載用電池を含む電気機械は同マイナス6.5%と減少しているが、タイヤを含むゴム、皮革製品は同プラス1.4%と増加している。

県内4港通関ベースの米国向け輸出額は前年同期比マイナス2.2%と減少したものの、電池(おもに車載用)は同1.8倍となっており、「相互関税による下押しの影響はまだ顕在化していないとみられる」。

一方、EVやスマホなどの需要回復の遅れなどを反映して、汎用・業務用・生産用機械が前期比マイナス1.2%とやや低調なほか、主力の電子部品・デバイスは同プラス2.7%と増加したものの依然として低い水準にとどまっている。

建設需要は、公共投資では老朽化した公共施設の改修などが相次いでいることから持ち直している。一方、住宅投資では建築基準法改正による駆け込み需要の反動で大幅な減少が続いている。民間非居住建築物は、半導体関連の工場着工があったものの、建設コストの高騰などから慎重な投資姿勢は変わらず。工事費予定額は前年同期比プラス62.1%と大幅に伸びたものの、着工床面積は低調だった前年並みにとどまった。

個人消費は、小売業販売額が前年同期比プラス2.9%と、物価上昇率には及ばず、総じて弱さがうかがわれる。

予想される中小・零細への受注減や価格下げ圧力の強化

7~9月期の経済動向をみると、生産は、県内の製造品出荷額のうち自動車や半導体に関連した業種が4分の1を占めることから、海外・国内経済の減速に伴う需要減退が受ける影響は小さくなく、多重下請け構造下にある中小・零細企業への受注減や価格下押し圧力が強まることが想定される。

個人消費は、コメをはじめとする食料、エネルギーなどの生活必需財価格の高止まりから、日用品を中心に節約志向が根強い。猛暑の影響で、宮城県では少なかった夏場の光熱費(冷房)が家計の追加負担となるほか、外出控えなどサービス消費の下押しとなることも想定される。また、猛暑や記録的少雨などがコメや農作物の生育不良という1次産品の供給減につながる「猛暑インフレ」も懸念される。

モニター実施の「県内企業動向調査」における売上高DI・経常利益DIの動きをみると、製造業で前回調査見通しからの下振れがみられるほか、建設業でも厳しさが増しており、比較的堅調だった旅館・ホテルなどの観光関連にも頭打ち感がみられ、全体として企業の景況感は一層慎重なものとなっている。

モニターは7~9月期の見通しについて、「さまざまな下押し要因がはたらくもとで浮揚感の乏しい動きが続く」とみて、前期同様に【横ばい】と判断した。

<雇用動向>

有効求人は前期並み、新規求人は前年同期を下回る

4~6月期の雇用をみると、有効求人倍率は1.21倍で前期比マイナス0.01ポイントと、小幅な動きとなった。

当期の新規求人数は前年同期比マイナス3.5%となっている。業種別にみると、「宿泊・飲食サービス」(前年同期比プラス3.9%)や「医療・福祉」(同プラス2.8%)などで増加したものの、モニターは「労働生産性・賃金水準が低く離退職の多い業種でもあり、労働需要が増加したとは言い難い」としている。

建設業は求人の減少が続いており、製造業も2四半期ぶりに減少に戻るなど、依然として弱めの動きが続いている。

こうした状況についてモニターは、「労務コスト(賃金)をはじめ原材料仕入れ、エネルギー、物流などあらゆる経営コストが上昇するなかで企業収益の改善は鈍く、採用を控える動きは強まっており、一部ではスポットワークなどの利用で人手をまかなうなど腐心がうかがえる」とみている。

「県内企業動向調査」によると、2025年度に何らかの賃上げ(ベア・定昇・一時金)を実施した県内企業は83.2%で、賃上げ率は加重平均で2.9%程度となっている。

モニターは「総じて雇用情勢は有効求人倍率などが示す数字以上に厳しいものとなっている」とコメントしたうえで、4~6月期の雇用動向を【横ばい】と判断した。

企業収益の改善見通しがないなかで賃金のみが上昇

7~9月期の見通しについては、「県内景気や企業収益の改善見通しが立たないなかで労働市場価格(賃金)のみが上昇しており、労働需要がさらに弛緩するものと思われる」とコメントしたうえで、判断は【横ばい】とした。

「県内企業動向調査」によると、7~9月期の雇用DIの見通しはマイナス40の「不足」超で、前期(マイナス36)よりも不足感が強まる見込み。