【近畿】(アジア太平洋研究所)
大阪・関西万博の駆け込み需要に期待、雇用動向は万博が寄与し「回復しつつある」

地域シンクタンク・モニター定例調査

近畿の4~6月期の経済動向は、関税措置の不確実性や物価高の長期化に対する警戒感も根強いことから、モニターであるアジア太平洋研究所は【横ばい】とした。7~9月期の見通しも、大阪・関西万博の閉幕前の駆け込み需要が期待されるものの、米国の関税政策への懸念もあり【横ばい】。雇用動向は、4~6月期実績については、万博の影響もあり雇用情勢は回復しつつあることから【やや好転】とした。7~9月期見通しは、各種統計の動きをもとに【横ばい】としている。

<経済動向>

家計部門は弱い動き、インバウンド関連・公的部門は弱含み

4~6月期について家計部門の動向をみると、全体として勢いに欠き、弱い動きとなった。物価上昇が長期化するなかで暮らし向きに対する不安感が根強く、センチメントは悪化している。

企業部門は、景況感の堅調さや設備投資計画の拡大を背景に一定の下支えがみられる。しかし生産は一進一退で伸び悩んでおり、弱い動きが続いている。

対外部門のうち、財部門では輸出入ともに前年を上回った。インバウンド関連は弱含みで、変調の兆しがみられる。訪日客数は堅調だが、円高の影響や客層の変化により、免税の購買客数や購買単価が鈍化している。

公的部門は弱含みとなっている。請負金額、出来高ともに前年割れが続いており、堅調な全国の伸びとは対照的に弱い動きとなっている。

自社業況・国内景気ともにBSIは9四半期ぶりにマイナス

景況感について日銀短観(6月調査)をみると、業況判断DIは12で前期から1ポイント上昇と横ばいの動き。15四半期連続でプラスを維持している。

関西経済連合会・大阪商工会議所「経営・経済動向調査」をみると、当期の自社業況BSIはマイナス5.4、国内景気BSIはマイナス10.3で、いずれも9四半期ぶりにマイナスに転じた。

モニターは「大阪・関西万博において入場者数やチケット売上高が好調に推移するなど好材料がみられる」とする一方で、「関税措置の不確実性や物価高の長期化に対する警戒感も根強い」として、4~6月期の判断を【横ばい】とした。

鉱工業生産が2カ月ぶりに低下、景気ウォッチャーは分岐点を下回る

7~9月期の見通しについても【横ばい】と判断した。

7月の鉱工業生産指数は95.5で、前月から5.4%低下して2カ月ぶりの減産となった。なお、近畿経済産業局は7月の生産の基調判断を「弱含みで推移」として、前月から据え置いている。

8月の景気ウォッチャー現状判断DIは44.9で、前月から2.0ポイント上昇したものの、景気判断の分岐点である「50」を7カ月連続で下回った。夏季休暇の影響で大阪・関西万博の来場者数が増加したことや、インバウンド消費に下げ止まりがみられたことが景況感の改善に寄与した。

「経営・経済動向調査」によると、7~9月期の自社業況判断BSIは4.9で、前回調査(マイナス5.4)から改善し、2期ぶりにプラスに転じた。

モニターは、「万博閉幕前の駆け込み需要が期待されているが、米国の高関税が依然として景気下押しリスクとなろう」とコメントしている。

<雇用動向>

新規求人倍率が4四半期ぶりに低下、雇用判断BSIは5年にわたって「不足」超

4~6月期の雇用実績について、雇用統計をみると、有効求人倍率は1.15倍で前期から横ばい。新規求人倍率は2.20倍で前期から0.08ポイント低下した。低下は4四半期ぶり。

「経営・経済動向調査」における4~6月期の雇用判断BSIはマイナス33.6の「不足」超で、不足超過は20四半期連続。

日銀短観(6月調査)によると、雇用人員判断DIはマイナス30で前回3月調査(マイナス32)から横ばいで、依然として人手不足感が強い。業種別では製造業がマイナス21、非製造業がマイナス39となっている。

大阪商工会議所「小規模企業の景況調査」によると、当期の従業員数過不足DIは前回調査から2.9ポイント低下してマイナス15.6の「不足」超となった。業種別では前回調査から製造業が0.5ポイント上昇、サービス業が2.5ポイント上昇で、卸売業が4.2ポイント低下、小売業が11.5ポイント低下となっている。

モニターは「大阪・関西万博の影響もあり、雇用情勢は回復しつつある」とみて【やや好転】と判断した。

失業率、失業者数は悪化も、求人の状況は横ばい

7~9月期の雇用の見通しについては、各種統計の動きをもとに【横ばい】と判断している。

7月の完全失業率(モニターによる季節調整値)は2.6%で前月比プラス0.2ポイントと、2カ月ぶりに悪化した。就業者数と労働力人口が増加したものの、完全失業者数も増加した。

7月の有効求人倍率は1.15倍で、前月から横ばいとなった。有効求人数は前月から横ばい、有効求職者数は前月比マイナス0.4%となっている。

新規求人倍率をみると、7月は2.18倍で前月比マイナス0.05ポイントとなっている。新規求人数は同プラス0.4%、新規求職者数は同プラス2.6%となっている。

新規求人数(原数値)の前年同月比を業種別にみると、「製造業」「運輸業・郵便業」「学術研究・専門・技術サービス業」「宿泊業・飲食サービス業」「建設業」「卸売業・小売業」が減少した一方で、「生活関連サービス業・娯楽業」「その他サービス業」は増加した。

「経営・経済動向調査」における7~9月期の雇用判断BSIはマイナス29.6の「不足」超で、前期(マイナス33.6)から「不足」超幅が縮小している。