【中国】(中国地域創造研究センター)
不透明な関税の影響、物価上昇のなか見えない購買意欲の高まり
地域シンクタンク・モニター定例調査
中国地域では、4~6月期の経済動向は、生産活動は米国の関税政策の影響の判断が難しいほか、消費活動は物価が上がり続けるなかで購買意欲が高まる様子がみえないことから、モニターである中国地域創造研究センターは【横ばい】とした。7~9月期は、倒産件数や住宅着工件数の動きをもとに【やや悪化】。雇用動向については、有効求人倍率の動きなどをもとに4~6月期の実績を【やや悪化】と判断し、7~9月期の見通しも【やや悪化】とした。
<経済動向>
「米国の関税政策の影響は現時点では判断が難しい」
モニターは、4~6月期の中国地域の経済動向について【横ばい】と判断した。
生産活動についてモニターは、「自動車産業の動向で製造業全体の生産水準が上下した期間となったが、米国の関税政策の影響は現時点では判断が難しい」としている。
自動車の生産関連では、4月は一部車種の減産の影響が和らぎ、大型車体部品も好調だったが、プラスチック部品の加工機械が落ち込んだ。5月は乗用車の一部車種の増産、シャシー系部品の伸びが目立ったものの、6月に入って車体主要部品の受注が落ち込み、関連する機械装置も生産水準を落としている。
舶用エンジンや金属機械など一部に好調な業種もあったが、多くは大型受注やその反動での一時的な動きにとどまっている。環境対応による買い替え需要で豊富な受注残を抱える造船の好調は目立つものの、「全般的に景気回復を牽引する要素は多くない」という。
消費は、価格上昇によるコメの売上増のほか、エアコンや制汗剤など熱中症対策関連商品が売り上げを伸ばしたが、消費者物価が上がり続けるなかで購買意欲が高まる様子はみえない。
自動車部品メーカーで受注減を心配する声が増加
7~9月期の見通しについては、【やや悪化】と判断した。
6月終盤ごろから、自動車部品メーカーで受注減を心配する声が増えている。自動車産業に限らず、関連する機械、プラスチック、ゴム、石油製品など全体的に一進一退を繰り返しているが、「米国の関税政策の影響が本格的に及んでくれば、地域経済が大きく落ち込む可能性がある」とモニターはみている。
また、企業倒産が昨年秋から増加傾向にある。建設は公共事業が前年比で増えているものの、住宅着工件数は減少している。新車登録件数はこの数カ月のあいだ減少している。
入学祝いやゴールデンウイークといった特別な機会での消費は旺盛であるものの、百貨店やスーパーでは値ごろな商品への需要が高まるなど、生活防衛的な動きがみられる。
<雇用動向>
有効求人倍率が低下傾向で推移
4~6月期の雇用実績について、モニターは【やや悪化】と判断した。
有効求人倍率は継続的に全国平均を上回っているものの、4月が1.46倍、5月が1.44倍、6月が1.40倍と低下傾向にある。
一部の自動車部品メーカーでは、派遣社員から正社員への切り替えが進むといった前向きな動向もあるが、物価高が企業の経営を圧迫して求人が鈍るなかで、高齢者を中心に求職者が増加するなど、これまでの人手不足一辺倒から転換する様子もみられる。
建設や製造業で求人を控える動き
7~9月期の見通しも【やや悪化】としている。
新規出店により卸売や小売では求人が増えているが、人件費の高騰により建設や製造業で求人を控える動きが目立っている。
広島県では高校生への求人倍率が5倍を超えており、これまでは大卒しか採用してこなかった企業が高卒や専門学校卒を採用するケースが増えるなど、若者の採用意欲は高い。
モニターは「人手不足の深刻さに変わりはないが、業種や年齢での雇用の格差が少しずつ広がっている」とみている。


