就職先の会社を決める際に重視したことは、社風・職場の雰囲気、処遇などの順
 ――東京商工会議所「2025年度新入社員意識調査」の集計結果

人材育成に対する企業・労働者の意識

東京商工会議所(小林健会頭)がこのほど発表した「2025年度新入社員意識調査」の集計結果によると、今春の新入社員が就職先の会社を決める際に重視したこと(複数回答)は、「社風、職場の雰囲気」(58.8%)の回答割合が最も高かった。また、社会全体の賃上げの流れを反映してか、「処遇面(初任給、賃金、賞与、手当など)」(52.7%)も5割以上の回答割合だった。入社後、管理職を目指したいか尋ねると、目指したい人が6割近い一方で、目指したくないとする人も約4割いた。就職先の会社でいつまで働きたいかについて、2年連続で「チャンスがあれば転職」の割合が「定年まで」の割合を上回った。

調査は東京商工会議所が主催し、調査期間内(4月1日~4月4日)に開催した研修に参加した企業の新入社員を対象にしたもの。Webアンケートシステムで930人を対象に行い、857人が回答した(回答率92.2%)。

就職活動が順調だったと答えた割合はコロナ禍以降で最高

就職活動が順調だったかを尋ねると、「順調だった」が23.7%、「ほぼ順調だった」が38.9%、「やや厳しかった」が30.2%、「厳しかった」が7.2%で、程度にかかわらず順調だったと認識する人の割合は合計で62.6%となっている。

順調だったと認識する人(「順調だった」と「ほぼ順調だった」の合計)の割合を、過去の調査結果と比べると、2024年度が62.2%、2023年度が57.9%、2022年度が58.4%、2021年度が49.9%であり、コロナ禍以降(2021年度から)で最も高い割合となっている。

就職先を決める際に重視したことのトップは「社風、職場の雰囲気」

就職先の会社を決める際に重視したこと(複数回答)については、「社風、職場の雰囲気」(58.8%)が最も回答割合が高く、「処遇面(初任給、賃金、賞与、手当など)」(52.7%)、「福利厚生」(44.9%)、「就職先の会社の事業内容」(43.1%)、「働き方改革、ワーク・ライフ・バランス(年休取得状況、時間外労働の状況など)」(40.4%)などと続いた(図表1)。

図表1:就職先の会社を決める際に重視したこと(複数回答)
画像:図表1

(公表資料から編集部で作成)

社会人生活で不安に感じること(3つまで回答)を聞くと、「仕事が自分の能力や適性に合っているか」(45.5%)が最も回答割合が高く、次いで「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」(45.0%)、「仕事と私生活とのバランスがとれるか」(41.1%)、「自分の能力や知識が仕事で通用するか」(29.3%)などの順となっている。

入社時点までに身につけたスキルはパソコンスキル、ビジネスマナーの順

入社時点までに身につけたスキル・知識(複数回答)を聞くと、「パソコンスキル(ワード、エクセル、パワーポイント等)」(35.4%)、「ビジネスマナー(身だしなみ、挨拶、敬語、態度、席次等)」(33.1%)、「就職先の会社の業種や業界に関する知識」(25.7%)、「Eメール文の作成」(22.5%)、「電話応対」(19.7%)などの順で回答割合が高かった。

東京商工会議所では、同じ設問を、企業調査の「企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員・中堅社員に対する意識調査」(本号の別記事で紹介)で設けている(企業は身につけてほしいスキル・知識を答えている)。両調査結果を比較すると、「ビジネスマナー(身だしなみ、挨拶、敬語、態度、席次等)」(社員が33.1%だったのに対し企業が64.2%)、「パソコンスキル(ワード、エクセル、パワーポイント等)」(社員35.4%に対し企業53.3%)、「経済社会に関する一般的な知識」(社員8.9%に対し企業18.3%)で企業の回答割合が社員を大きく上回っている。

仕事をするうえで大事にしたいことのトップは主体性

経済産業省が提唱している「社会人基礎力」を構成する能力要素のうち、仕事をするうえで特に大事にしたいこと(3つまで回答)をみると、「主体性(物事に進んで取り組む力)」(60.1%)が最も回答割合が高く、次いで「実行力(目的を設定し確実に行動する力)」(40.3%)、「計画力(課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力)」(29.8%)などとなっている。

この設問についても企業調査の「企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員・中堅社員に対する意識調査」と比べると、「主体性(物事に進んで取り組む力)」の回答割合が最も高いのは両調査同様だったが、「規律性(社会のルールや人との約束を守る力)」の回答割合で、企業が34.5%、社員が7.8%と差が大きいのが目立った。

管理職を目指したいは59.0%

「理想だと思う上司」はどのようなことを大事にしたり重視する人か尋ねると(3つまで回答)、「仕事の指導を丁寧に行うこと」(45.9%)、「人間関係、チームワークを重視すること」(36.3%)、「明確な理念や考えを持っていること」(33.5%)などの順だった。

入社後、管理職を目指したいか(2択)を尋ねると、「管理職を目指したい」が59.0%と半数以上にのぼった一方、「管理職を目指したくない」人も41.0%を占めた。

「管理職を目指したい」と回答した新入社員に理由を聞くと、「仕事を通じて、自分自身を成長させたいから」(44.9%)の回答割合が最も高く、「仕事を通じてやりがい・達成感を感じたいから」(17.2%)、「高い報酬を得たいから」(15.8%)などと続いた。

「管理職を目指したくない」と回答した新入社員に理由を聞くと、「自分には適性がなさそうだから」(42.2%)の回答割合が最も高く、「仕事よりもプライベートを大切にしたいから」(19.1%)、「仕事の責任が重く大変そうだから」(13.1%)などと続いた。

チャンスがあれば転職したいと考える新入社員が大幅増加

就職先の会社でいつまで働きたいか尋ねると、「特に考えていない」が37.5%(前回の2024年度調査37.5%)で最も割合が高く、次いで「チャンスがあれば転職」が25.7%(同26.4%)、「定年まで」が24.4%(同21.1%)などとなった。

同設問を2015年度調査結果までさかのぼって比べると、「定年まで」の回答割合は、2015年度(36.3%)から約10ポイント以上減少した(図表2)。一方、「チャンスがあれば転職」は、2015年度(11.6%)から14.1ポイント増加し、この10年間で新入社員のキャリア意識に変化がみられる結果となっている。

図表2:就職先の会社でいつまで働きたいか(2015年度・2025年度調査結果比較)
画像:図表2
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(公表資料から編集部で作成)

(調査部)

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