34.5%の企業が管理職を希望する中堅社員が少ないことを育成の課題にあげる
 ――東京商工会議所「企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員・中堅社員に対する意識調査」結果

人材育成に対する企業・労働者の意識

東京商工会議所(小林健会頭)がこのほど発表した「企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員・中堅社員に対する意識調査」の集計結果によると、企業の管理職候補の中堅社員への育成に関する課題(複数回答)について、34.5%の企業が「管理職になることを希望する中堅社員が少ない、以前よりも減った」をあげ、最も回答割合が高かった。「管理職候補になる人材が育っていない・対象者がいない」の回答割合もほぼ3割にのぼっており、管理職のなり手不足や人材不足が課題として浮き彫りとなっている。

調査は東京商工会議所が主催し、2020年4月~2025年2月に開催した研修講座を利用した企業に対して実施したもの。2025年3月3日~21日にWebアンケートシステムで5,777社を対象に行い、377社が回答した(回答率:6.5%)。回答企業のうち75.4%を従業員規模100人未満の企業が占めている。

上長の育成力不足も32%の企業が課題にあげる

管理職候補の中堅社員の管理職への育成に関する課題(複数回答)を尋ねたところ、「管理職になることを希望する中堅社員が少ない、以前よりも減った」(34.5%)が最も回答割合が高く、次いで「上長の育成力・指導意欲が不足している」(32.1%)、「管理職候補になる人材が育っていない・対象者がいない」(29.7%)、「業務繁忙等により、管理職育成に掛けられる時間が不足している」(28.6%)、「管理職への育成について効果的な方法が分からない」(21.8%)などの順で高かった(図表)。

図表:管理職候補の中堅社員の管理職への育成に関する企業としての課題(複数回答)
画像:図表1

(公表資料から編集部で作成)

管理職候補の中堅社員が管理職になるにあたり特に身につけて欲しいスキルや知識(3つまで回答)をみると、「後輩・チームメンバーの指導・育成力」が47.7%と最も高く、次いで「業務管理・進捗管理能力」が46.4%、「課題解決力・問題解決力」が36.9%、「リーダーシップ・統率力」が32.6%、「組織全体やチームの活性化を促す動機づけ力」が28.4%などとなった。

入社時点までに身に付けてほしいのはビジネスマナーやパソコンスキル

社会人1年目の新入社員が入社時点までに身に付けて欲しいスキル・知識を尋ねたところ(3つまで回答)、「ビジネスマナー(身だしなみ、挨拶、敬語、態度、席次等)」が64.2%と最も回答割合が高く、次いで「パソコンスキル(ワード、エクセル、パワーポイント等)」が53.3%、「電話対応」が23.9%、「経済社会に関する一般的な知識」が18.3%、「ビジネス文書の作成」が15.6%などという結果だった。調査は今回新たに「生成AIに関する知識」という選択肢を設けたが、回答割合は5.3%と1割未満だった。

1年目社員が大事にしてほしいのは主体性、規律性、実行力

経済産業省が提唱している「社会人基礎力」を構成する能力要素のうち、社会人1年目の新入社員が仕事をするうえで特に大事にしてほしいこと(3つまで回答)を尋ねたところ、「主体性(物事に進んで取り組む力)」(71.9%)が最も回答割合が高く、次いで「規律性(社会のルールや人との約束を守る力)」(34.5%)、「実行力(目的を設定し確実に行動する力)」(34.2%)、「柔軟性(意見の違いや立場の違いを理解する力)」(22.5%)などの順となっている。

なお、社会人基礎力は【前に踏み出す力(アクション)】【考え抜く力(シンキング)】【チームで働く力(チームワーク)】の3つの能力に大きく分けられ、【前に踏み出す力(アクション)】は「主体性」「働きかけ力」「実行力」、【考え抜く力(シンキング)】は「課題発見力」「計画力」「創造力」、【チームで働く力(チームワーク)】は「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」という能力要素で構成される。

1年目社員の上司が大事にすべきは丁寧な指導

社会人1年目の新入社員を指導する上司が特に大事にすべきこと、心掛けるべきこと(3つまで回答)を尋ねると、「仕事の指導を丁寧に行うこと」(39.8%)が最も回答割合が高く、次いで「若者の感覚や考え方を理解すること」(30.0%)、「部下の意見や考えを真摯に聞くこと」(29.3%)、「明確な理念や考えを持っていること」(28.3%)、「部下との仕事上のコミュニケーションを重視すること」(27.2%)などの順となった。「部下を厳しく指導すること」をあげた企業は1社もなかった。

7割以上の企業が新卒者向けの研修講座を手配

新入社員の入社に際して行った人材育成や教育訓練に関する取り組みや準備(3つまで回答)では、「新卒者が受講する研修講座を手配した」が76.3%で最も回答割合が高く、そのほか「新卒者の育成計画(研修計画等)を作成した」が63.3%、「メンターやOJTの指導役となる社員を選定した」が38.8%、「新卒者を対象とした研修制度や人材育成に向けた取組内容を見直した」が22.3%、「入社前の内定の時点で研修を受講させた」が14.4%などとなった。

1990年代中期から2010年代初頭の間に生まれたZ世代の若手社員が他の世代の社員と比較して優れている点や特徴だと感じる点(複数回答)を尋ねると、「ITやデジタル関連のスキルがある」を約半数(49.9%)の企業があげ、「効率性を重視した発想ができる(いわゆる『タイムパフォーマンス』重視)」が26.5%、「自己成長に対する意欲が高い」が24.7%、「柔軟性がある」が14.3%、「仕事上のコミュニケーションがとりやすい」が9.3%などとなっている。

4割の企業が指導・育成の困難な点は「打たれ弱いこと」と回答

Z世代の若手社員を指導・育成する際に困っていること(複数回答)を尋ねると、「若手社員が(ストレスやトラブルに対して)打たれ弱い」が42.2%と最も高く、「若手社員の価値観や就労観が分からない」が35.0%、「若手社員の承認欲求が強い」が18.6%、「若手社員の自己成長に対する意欲が低い」が18.0%、「若手社員の仕事に対するモチベーションが低い」が17.0%などとなっている。

(調査部)

2025年6月号 人材育成に対する企業・労働者の意識の記事一覧