2025年新卒者の採用で、昨年12月末時点で計画した人数以上の内定者数を確保できた企業は1割台
――東京商工会議所「2025年新卒者の採用・選考活動動向に関する調査」
新卒採用の動向
東京商工会議所(小林健会頭)がこのほど発表した「2025年新卒者の採用・選考活動動向に関する調査」結果によると、2025年新卒者の採用計画人数に対する昨年12月末時点での充足率について、計画以上の内定者数を確保している企業の割合は13.4%と1割台にとどまった。同年新卒者の採用・選考活動について、1月以降も実施する予定だと答えた企業が60.5%と約6割に達した。
調査は、東京商工会議所が主催し、今年1月24日に開催した「会員企業と学校法人との就職情報交換会」に参加した企業を対象に実施したもの。調査は今年1月24日~31日に、Webアンケートで303社を対象に行い、270社が回答した。回答企業の77.4%は従業員500人以下の企業で占めている。
採用環境が厳しいと認識する企業が9割台
それによると、2025年新卒者の採用環境(採用市場)について、「とても厳しい採用環境である(採用がとても困難)」とする企業が71.9%、「多少厳しい採用環境である(採用が多少困難)」とする企業が24.5%、「まあまあ良い採用環境である(多少採用がしやすい)」が3.6%などとなり、厳しい採用環境との認識にある企業の割合が9割台に達した。
充足率が5割に満たない企業が全体の約4割
2025年新卒者の採用計画人数に対する2024年12月末時点での実質的な内定者数の割合である充足率を尋ねると、「0%」が14.6%、「1%~29%」が12.3%、「30%~49%」が13.4%、「50%~69%」が21.7%、「70%~99%」が24.5%、「100%」が9.5%、「100%超」が4.0%となっており、49%以下が全体の40.3%を占めた(図表)。
図表:2025年新卒者の採用計画人数に対する2024年12月末時点の充足率(単位:%)
(公表資料から編集部作成)
2025年新卒者の採用・選考活動をいつ頃まで実施する予定か(いつ頃まで実施したか)については、「2025年1月」が7.1%、「2025年2月」が19.4%、「2025年3月」が19.4%、「未定・分からない」が14.6%などとなり、「未定・分からない」も含めれば、1月以降も実施する予定の企業の割合が60.5%に及んだ。
内定・内々定の辞退者がいるとした企業割合は7割以上
2025年新卒者の採用・選考活動での内定・内々定の辞退者の有無をみると、「内定・内々定者の半数以上の辞退者がいる」が25.7%、「内定・内々定者の半数未満の辞退者がいる」が47.4%、「辞退者はいない」が26.9%で、内定・内々定の辞退者がいると回答した企業が73.1%に達した。
内定・内々定者に実施したフォロー活動や内定辞退防止に向けた取り組み(今後実施する予定を含む)(複数回答)をみると、「採用担当者からの定期的な連絡」(68.0%)の割合が最も高く、これに「内定式・内々定式」(60.5%)、「採用担当者との懇談会」(47.4%)、「会社見学会」(43.9%)、「入社前研修の実施」(33.2%)、「採用担当者以外の役員・社員との懇談会」(25.7%)、「社内報など資料の定期的な送付」(22.5%)などと続いた。
「親」など、内定者・内々定者の親族等に対して実施した取り組み(今後実施する予定を含む)(複数回答)で最も回答割合が高かったのは「内定者・内々定者が自社へ入社することの意向確認、同意の取り付け(内定者・内々定者を通じて実施)」(19.4%)で、それ以外の選択肢も含め、何らかの取り組みを行っている企業の割合は30.4%だった。
採用広報活動でのアピール内容は「社風、職場の雰囲気」などが上位
採用広報活動で力を入れてアピールした内容(複数回答)をみると、「社風、職場の雰囲気」(67.6%)が最も割合が高く、次いで「人材育成・研修制度、自己啓発への支援」(57.7%)が高かった。今後の新卒採用広報活動で特に力を入れてアピールしたい内容(複数回答)でも、「社風、職場の雰囲気」(62.5%)が最も割合が高く、次いで「人材育成・研修制度、自己啓発への支援」(57.7%)が高かった。
採用広報活動で力を入れてアピールした内容(複数回答)について、充足率が100%以上の企業と、100%未満の企業とで結果を比べると、充足率100%以上の企業でよりアピールした割合が高かったのは「働き方改革、ワーク・ライフ・バランス(年休取得状況、時間外労働の状況など)」で、充足率100%以上の企業では73.5%の回答割合だったが、充足率100%未満の企業では49.3%と20ポイント以上の差があった。
55.6%の企業が初任給を引き上げ
2025年新卒者の初任給引き上げの実施状況をみると、「引き上げた(引き上げる予定)」が55.6%、「据え置いた(据え置く予定)」が20.7%などとなり、半数超の企業が引き上げたか、引き上げる予定とした。
その引き上げ率をみると、「1.0%未満」が9.9%、「1.0%以上2.0%未満」が23.9%、「2.0%以上3.0%未満」が15.5%、「3.0%以上4.0%未満」が16.2%、「4.0%以上5.0%未満」が14.8%、「5.0%以上」が19.7%で、3.0%以上引き上げた企業の割合が50.7%とほぼ半数を占めた。
(調査部)
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