実施率は10%~20%台。現状での課題はコミュニケーション面などが主
 ――テレワークに関する各種調査の結果から

テレワークの現状

今年に入ってから発表された各種調査で、テレワークの実施率をみると、最近はそれほど大きな変動もなく、労働者ベースでは10%台~20%台となっている。実施頻度は、出勤と組み合わせている人が多く、週のほとんどをテレワークする人はそれほど多くない。テレワークの課題としては、現状では、コミュニケーションや他の社員との不公平感、評価上の不安などが目立ち、長時間労働を指摘する割合は高くない。

テレワークを実施している企業の割合は45.9%

まず、各調査におけるテレワークの導入割合からみていくことにする。

東京都は毎月、都内企業のテレワーク実施状況を調査し、発表している。2024年10月調査の結果によると、従業員30人以上でテレワークを実施している企業割合は45.9%で、9月調査から2.6ポイント上昇した。実施率を企業規模別にみると、「30~99人」が46.6%、「100~299人」が50.5%、「300人以上」が38.1%となっている。また、テレワークを実施した社員の割合は30.0%で、9月調査の30.4%からわずかに低下した。

従業員に聞いたテレワークの実施回数をみると、「週1日」が34.7%、「週2日」が27.2%、「週3日」が10.5%、「週4日」が9.0%、「週5日」が18.5%となっており、週3日以上が計38.1%と4割近くを占めている。

正社員の7月のテレワーク実施率は22.6%

民間のパーソル総合研究所が8月22日に発表した「第9回テレワークに関する調査」によると、2024年7月の正規雇用社員でのテレワーク実施率は22.6%で、前年同月(22.2%)とほぼ同割合だった。企業規模別にみると、正社員ベースで、「10~100人未満」が13.2%、「100~1,000人未満」が20.1%、「1,000~1万人未満」が30.2%、「1万人以上」が38.2%となっている。前年同月から「1万人以上」(2.8ポイント上昇)と「10~100人未満」(0.7ポイント上昇)が上昇している。

生産性本部調査では20歳以上雇用者で16.3%の実施率

公益財団法人日本生産性本部が7月29日に発表した「第15回働く意識に関する調査」によると、2024年7月の20歳以上の雇用者のテレワーク実施率は16.3%で、前回の1月調査の14.8%からわずかに上昇した。企業規模別にみると、「100人以下」が10.9%、「101~1,000人」が17.7%、「1,001人以上」が26.7%となっている。こちらの調査では、「100人以下」(1.5ポイント上昇)と「101~1,000人」(4.3ポイント上昇)が前回調査から上昇している。

直近1週間(営業日ベース)の週あたり出勤日数は、「0日」が16.2%、「1~2日」が26.8%、「3~4日」が33.0%、「5日以上」が24.0%で、3日以上出勤している人が約57%を占めている。

国交省調査での直近1年間で実施した人の割合は16.1%

国土交通省が3月26日に発表した「2023年度テレワーク人口実態調査」の調査結果によると、雇用者でテレワークを実施したことがある人の割合は24.8%で、前年度の26.1%をやや下回った。直近1年間のテレワーク実施率は、16.1%となっている。

雇用者のテレワーカーに聞いた実施頻度をみると、「週1日」が16.9%、「週2日」が17.2%、「週3日」が13.6%、「週4日」が10.4%、「週5日以上」が17.7%などとなっている。

部下の時間管理が難しいとの回答も3割弱

次に、テレワークでの課題と対応策についてみていくと、パーソル総合研究所の調査では、正社員テレワーカーが答えたテレワークに関する困りごと(複数回答)は順に、「運動不足を感じる」(57.5%)、「テレワークでできない仕事がある」(44.4%)、「プリンターなどの必要機器がない」(36.2%)、「仕事に適した机や椅子がない」(35.0%)、「部下の仕事の様子がわからなくなった」(32.2%)などとなっており、「部下の労働時間の管理が難しくなった」が28.1%となっている。

また、テレワーク時の不安感を尋ねると(複数回答)、「非対面のやりとりは、相手の気持ちがわかりにくく不安だ」(35.5%)が最も回答割合が高く、次いで「上司から公平・公正に評価してもらえるか不安だ」(27.2%)、「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安だ」(26.2%)などの順となっている。

健康維持や事故が心配とする回答は1割以下

日本生産性本部の調査で、テレワークの課題(複数回答)をみると、前回の1月調査に比べ、「オーバーワーク(働きすぎ)を回避する制度や仕組み」の回答割合(11.7%)は6.1ポイント低下している。

労務管理上の課題(複数課題)では、「仕事ぶりが評価されるか不安」(24.6%)は前回から上昇した一方、「仕事の成果が評価されるか不安」(24.0%)、「勤務時間管理が働き方にそぐわない」(10.1%)、「健康維持や勤務中の事故が心配」(8.9%)などは低下した。

導入企業の約7割が「社内コミュニケーションの減少」をデメリットにあげる

東京都が4月1日に発表した「2023年度多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」の結果によると、テレワークを導入していると回答した企業(常用雇用者規模30人以上)があげたテレワーク導入後の課題(デメリット)は(複数回答)、「社内コミュニケーションの減少」が70.6%で最も回答割合が高く、次いで「利用する従業員と利用できない従業員との間に不公平感が生じる」(51.9%)、「従業員の勤務状況の把握」(49.8%)などの順だった。

導入企業におけるテレワークの今後の意向をみると、「今後もテレワークを継続する(同規模程度)」が71.6%と7割以上を占め、「今後もテレワークを継続する(縮小の方向)」(9.4%)と「テレワークをやめる」(2.3%)はあわせても1割程度となっている。

縮小・中止の理由では「コミュニケーションに不安」が51.3%

テレワークを縮小・中止の方向の企業にその理由を尋ねると(複数回答)、「コロナの感染状況が落ち着いたため」(81.6%)以外の回答では、「コミュニケーションに不安があるため」(51.3%)、「従業員間に不公平感が生じるため」(44.7%)、「対面の方が業務管理しやすいため」(36.8%)、「連帯感、一体感が損なわれるため」(36.2%)などの回答割合が比較的高かった。

また、過去1年間にテレワークを実施したことがあると回答した従業員に対し、テレワークを実施してみての課題を複数回答で聞くと、「社内のコミュニケーションに支障がある」が47.6%で最も高く、これに「勤務時間とそれ以外の時間の管理」(30.9%)、「周囲の社員にしわ寄せがある」(22.2%)などが続いた。「長時間労働になりやすい」は18.8%だった。

■東京都「テレワーク実施率調査結果(2024年10月)」

調査対象:
常用雇用者規模が30人以上の都内企業約3万3,000社。従業員調査は都内企業に勤める18~69歳の従業員
調査規模:
約1,000社。従業員調査は2,000人
抽出方法:
無作為抽出
調査方法:
電話調査。従業員調査はインターネットアンケート

■東京都「2023年度多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」

<企業調査>

調査対象:
都内に所在する常用雇用者規模30人以上の企業
調査規模:
1万社(回収は2,158社)
抽出方法:
無作為抽出
調査方法:
調査票発送によるアンケート

※企業では規模30人未満を対象にした調査も実施している。

<従業員調査>

調査対象:
上記企業に勤務する従業員のうち2人
調査規模:
2万人(回収は3,002人)

■パーソル総合研究所「第9回テレワークに関する調査」

調査対象:
全国の就業者 20~59歳男女、勤務先従業員人数10人以上
 
正規雇用2万5,414人、非正規雇用5,517人、公務員・団体職員390人の計3万1,321人
調査方法:
モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期:
2024年7月12日~16日

■公益財団法人日本生産性本部「第15回働く意識に関する調査」

調査対象:
20歳以上の雇用者1,100人(調査会社モニター)
調査期間:
2024年7月8日~9日

■国土交通省「2023年度テレワーク人口実態調査」

調査対象:
WEB調査の登録者のうち15歳以上の就業者約29万人に調査票を配布し、4万サンプルを回収
調査時期:
2023年10月21日~25日
有効サンプル:
4万人(うち雇用就業者は3万6,228人)

(調査部)