「1人平均賃金の改定額」は1万1,961円で、1992年以来の高水準
 ――厚生労働省が「2024年賃金引上げ等の実態に関する調査」結果を発表

2024春闘における賃上げの状況

厚生労働省が10月28日に公表した「2024年賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果によると、2024年中に賃金改定を行った、または行う予定の企業の「1人平均賃金の改定額」は1万1,961円(改定率4.1%)で、1992年に記録した1万2,939円以来の高水準を記録した。改定額を労働組合の有無別にみると、労働組合がある企業では1万3,668円、労働組合がない企業では1万170円となっており、労働組合のある企業のほうが3,500円程度高くなっている。

賃金を引き上げた・引き上げる企業の割合は90%を超える

2024年中に「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合は、前年の89.1%を上回る91.2%となり、同データを取り始めた1999年以降で最も高い割合となった。

同割合を企業規模別にみると、「100~299人」が90.2%、「300~999人」が93.4%、「1,000~4,999人」が93.5%、「5,000人以上」が99.1%で、いずれの規模も90%以上。前年は87.4%と唯一、90%台に乗らなかった「100~299人」も、今年は90%をわずかに超えた。

産業別にみると、多くの産業が90%以上となるなかで、「運輸業、郵便業」(74.4%)と「生活関連サービス業、娯楽業」(76.2%)が70%台にとどまり、「宿泊業、飲食サービス業」(82.2%)や「教育、学習支援業」(87.8%)、「サービス業(他に分類されないもの)」(85.6%)が80%台だった。

労働組合の有無別にみると、「労働組合あり」が97.9%、「労働組合なし」が89.0%で、労働組合がある企業のほうが8.9ポイント、割合が高くなっている。

「1人平均賃金の改定額」は前年と比べると2,000円以上の増加

2024年中に賃金の改定を実施した、または予定していて額も決定している企業と、賃金の改定を実施しない企業でみた「1人平均賃金の改定額」は1万1,961円(改定率4.1%)で、前年の9,437円(同3.2%)から2,000円以上増加している。過去と比較すると、1万1,961円は、1992年に記録した1万2,939円以来の高い水準だ。

なお、1人平均賃金を引き上げた企業だけでみた同額は1万2,183円(同4.1%)で、前年の9,779円(同3.4%)から2,404円の増加となっている。

「1人平均賃金の改定額」を企業規模別にみると、「100~299人」が1万228円(同3.7%)、「300~999人」が1万618円(同3.8%)、「1,000~4,999人」が1万2,317円(同4.1%)、「5,000人以上」が1万5,121円(同4.8%)。前年の調査結果では、1万円を超えたのは「5,000人以上」(1万2,394円)だけだったが、今年はすべての規模で1万円を超えている。

「1人平均賃金の改定額」を産業別に高い順に並べると、「金融業、保険業」(1万5,465円)、「建設業」(1万5,283円)、「情報通信業」(1万4,989円)、「学術研究、専門・技術サービス業」(1万4,772円)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(1万4,619円)、「鉱業、採石業、砂利採取業」(1万4,616円)などとなっている。

労働組合の有無別にみると、「労働組合あり」が1万3,668円、「労働組合なし」が1万170円で、労働組合のある企業のほうが3,500円程度高い。

ベアの実施割合は管理職でみても約5割に

2024年中に賃金の改定を実施した、または予定していて額も決定している企業と、賃金の改定を実施しない企業のうち、定昇制度がある企業の2024年中の「ベースアップ」(ベア)の実施状況をみると、管理職では、「ベアを行った・行う」企業の割合は47.0%で、前年(43.4%)を上回った。一般職では、同割合は52.1%で、こちらも前年(49.5%)を上回っている。

2024年中に賃金の改定を実施した、または予定していて額も決定している企業に、賃金の改定にあたり最も重視した要素について聞いた結果をみると、「企業の業績」が35.2%で最も高く、これに「労働力の確保・定着」(14.3%)、「雇用の維持」(12.8%)、「物価の動向」(7.8%)、「世間相場」(7.6%)などと続いた(図表)。

図表:賃金の改定の決定にあたり最も重視した要素別企業割合(2024年、2023年)(単位:%)
画像:図表
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(公表資料から編集部で作成)

重視した要素として「世間相場」「親会社の動向」などが増加

前年と比べると、「企業の業績」(前回36.0%→35.2%)、「労働力の確保・定着」(同16.1%→14.3%)などは低下する一方、「世間相場」(同6.7%→7.6%)、「雇用の維持」(同11.6%→12.8%)、「親会社又は関連(グループ)会社の改定の動向」(同5.1%→6.4%)などが前年を上回っている。

さらに、企業規模別に前年と比較すると、「世間相場」では、最も下の規模区分である「100~299人」を除くすべての規模で前年から割合が上昇しており、「1,000~4,999人」では前年の5.2%から10.9%へ上昇、「5,000人以上」では前年の6.2%から12.2%へと上昇している。「労働力の確保・定着」では、「100~299人」では前年の17.3%から11.5%へと低下したものの、「300~999人」(同12.7%→20.6%)、「1,000~4,999人」(同15.0%→20.2%)、「5,000人以上」(同15.8%→19.8%)では比較的大きく上昇した。

このほかでは、「物価の動向」で「5,000人以上」が前年の14.3%から8.0%に低下し、「親会社又は関連(グループ)会社の改定の動向」では「100~299人」で前年の3.9%から7.1%に増加したのが目立っている。

(調査部)