組合員の自立や参画、会社と一体で働きがいを向上させる取り組みも
 ――【単組】今期の運動方針の特徴、活動の重点

ビジネス・レーバー・モニター定例調査

ビジネス・レーバー・モニターの単組に今期の運動方針の特徴点や活動の重点を尋ねた結果では、多様な取り組み内容の報告があった。ある自動車労組では、組合員一人ひとりの自立を促すため、「人生設計セミナー(仮)」を立ち上げる。電機労組は、ジョブ型人材マネジメントの導入に伴い、キャリア形成支援を方針に盛り込んだ。化学労組は、組合員の参画を活発化することで組合員・組合の成長を狙う。陶業労組は、作業長の働きがいを向上させるため、労使が一体となって、業務支援や作業員とのコミュニケーション向上に取り組んだという。

単組については、27組織に調査票を配付し、11組織から回答を得た。調査期間は2024年10月7日~11月1日。なお、単組はほぼ大手企業の労組で構成。

組合員の自立に向け「人生設計セミナー」を立ち上げ

自動車のA労組では、先期に、組合としての「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を策定。今期はこれらに基づき、運動方針をこれまでも行ってきた活動(基盤活動)とビジョン実現のために強化する活動に切り分けて策定したと報告した。

基盤活動では、①職場の実態把握②課題整理③労使の話し合い④結果・進捗のフィードバック――のサイクルにこだわり、あらゆる活動を進めていくとしている。一方、ビジョン実現のための活動では、組合員一人ひとりの自立のために、「人生設計セミナー(仮)」を立ち上げるとしている。

自動車のB労組では、安全活動をあげ、対策が積み重なり続ける文化に力を入れる。また、責任者の魅力ある働き方や専従役員の働き方についても活動の特徴点にあげた。

ジョブ型導入に伴い、キャリア形成支援も掲げる

電機の労組は、例年の活動と比較して、ジョブ型人材マネジメントの導入に伴い、キャリア形成支援や新たな報酬制度設計への取り組みを方針に掲げていることを特徴点としてあげた。

造船重機のA労組は、グループ内での組織体制の見直しに伴う、組合体制の変更を報告。他企業グループとA労組の企業グループが共同出資していたグループ内企業で、他企業グループが撤退したことから、そのグループ内企業の組合とA労組を2021年に組織統合したが、組織体制の見直しを検討し、さきの大会でそのグループ内企業の組合を単一組合化することを提案し、満場一致で決定した。

造船重機のB労組は、大会代議員から、「組織」に関しては①組織活動の充実強化②グループ労連活動の推進③政治活動の推進、「経営・安全」に関しては①経営対策②ダイバーシティー推進対応③安全衛生対策④環境保全対策、「賃金・福祉」に関しては①春闘②人事諸制度③その他主要労働条件④企業内福祉⑤自主福祉、「教育広報」に関しては①組合員向け研修②機関構成員・職場委員・青年協議員・執行委員向け研修③機関紙・誌の発行④青年協活動――について補強意見が出たと報告した。

非鉄の労組は、今期は安全最優先、雇用の維持確保、労働条件の向上、次代を担う人材育成と組織力の強化を基調に活動を進めていると報告した。

定年延長に向け、導入経緯などを勉強

精密機械の労組は、賃金、一時金については、「上部団体の方針や組合員アンケートを基に議論し、要求内容を決定する」とし、労働条件では「組合員からの要望、疑問を集約し、年間を通して会社と議論する」とした。この労組では、さまざまな組合員からの意見はWeb中心で収集して、労働条件向上に取り組んでいるという。

また、課題の1つとなっている定年延長について、すでに導入している企業から導入経緯や運用方法の研修を実施するとした。

対話を通じた参画で組合員と組合がともに成長する

化学の労組は、これまでに引き続き、「組合員がミッション・ビジョンを体現している状態を目指す」とし、その実現に向けて、3年単位で運動方針を立案し、2025年度~2027年度の方針を今期の大会で決議したと報告した。具体的には、「ひとり一人がつながり、一緒に考え、創る」ことで、組合員と労働組合がともに成長することを目指す。そのために組織横断的に取り組む重点施策を3点に集約した。

1つ目は「対話を通じた参画の推進」で、2つ目が「全員で創る職場自治」。3つ目が、「ワーク&ライフの基盤領域でのきっかけづくり」となっている。それぞれの取り組みでは、一人ひとりの参画によって活動の質がさらに高まり、気づきや成長につながる「参画を通じて組合員と労働組合がともに成長する好循環」を目指すとしている。

化繊の労組は、今期の運動の特徴として、まず、経営施策および事業施策への組合チェックをあげ、「1年遅れで発表された中期経営計画では将来に向けた成長戦略が描かれていない」ことから、新規事業創出が実現されるべく役割を発揮するとしている。

また、事業の海外展開に伴う各国従業員代表とのコンタクトをあげた。事業のグローバル展開に伴い、国内労使間だけでは解決しない課題も出てきているため、Works Councilメンバーとの連携を図るとしている。

人間力向上という組合ビジョンに則った取り組みを定着させる

陶業の労組は、この4年間で人間力向上という組合ビジョンに則って各種取り組みを実行してきたとし、これからの2年は新たに始めた取り組みを定着させ、新たな課題に対応していくとしている。

特徴的な取り組みとしては、①「作業長の取り組み」の実施と定着②社外との交流③わいわいトークの実施――の3点を報告。「作業長の取り組み」では、現場キーマンである作業長の働きがい低下に対応するため、2023年5月以降、労使一体となって作業長の処遇改善に取り組んでおり、協議を重ねた結果、作業長の業務の中核となる生産、環境、安全、品質、設備保全の確認に注力ができるように、またすべての業務の土台となる作業者とのコミュニケーションを図るため、最低でも1日2時間を目安に現場での時間を確保できるようにしたという(会社から全職場に通達)。

今期は、通達後の各職場の取り組み状況についてアンケートを実施し、取り組み状況を確認したうえで、課題があれば個別にフォローし、取り組みを定着させるとしている。

「社外との交流」では、組合役員(中央委員・職場委員)の資質向上のため、異業種の他労組との交流や、社内の他事業本部の工場見学の機会をつくる。

「わいわいトークの実施」では、 組合員と直接会話する「わいわいトーク」を今後も継続して定期的に企画・実施する。組合や会社の考えを伝達し、組合員同士の議論を通じて新たな気づきを得る場とするとともに、組合員の意見を把握することで、制度変更や会社への提言活動につなげていくのが狙いだ。

会社からの事業再編提案への対応方針を確認

運輸の労組は、会社から「人手不足が深刻化し、人材の獲得が激化している中、会社の事業部門について、その領域に特化した専門会社を設立することが、高い専門性や変化するお客様ニーズに迅速に対応することができ、それが、事業の持続的な発展につながる」として、事業部門を切り離しての新会社の設立と、それに伴う社員の転籍の提案があった。

そのため、①転籍にあたっては、不利益変更とならないよう会社対応にあたること②業界水準をふまえた、働きがいややりがいのある魅力ある賃金・労働条件の構築③将来にわたって希望の持てる事業計画の策定と着実な実行――などのスタンスで会社対応にあたることを確認したという。