価格転嫁対策や、自発的なキャリア形成支援などの議論も
――賃金や賃金以外の労働条件に関する交渉・協議
ビジネス・レーバー・モニター定例調査
春季労使交渉において、賃上げや賃上げ以外の労働条件改定のほかに、特徴的な交渉・協議項目があったかどうか尋ねたところ、産別では、JEC連合と電機連合が価格転嫁対策などを報告し、生保労連からはキャリア支援の取り組みがあがった。単組では、自動車が職種変更制度の導入や選択型研修の強化について協議したと報告。電機の単組からは、スキルアップのための休職制度を議論したとの報告があった。
<産別からの報告>
JEC連合の加盟組合はサプライチェーン全体での適正配分を要求
JEC連合は、上部団体である連合が、中小企業の経営基盤を強化し賃上げ原資を確保するためには働き方も含めた「取引の適正化」が不可欠であるとし、「パートナーシップ構築宣言」を推進していることをふまえ、加盟組合(特に大手組合)が関連子会社や業務委託等で関係する企業の労組などと連携し、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正配分に向けた要求をすることを2024春季生活闘争方針に盛り込んだ。
具体的には、「労使において『パートナーシップ構築宣言』の意義の共有化および取り組み推進」「『パートナーシップ構築宣言』の定期的な見直し」「社内担当者・取引先への浸透の確認」「『価格交渉促進月間』(例年9月・3月)における価格協議の実施の確認」「下請事業者からの価格交渉の申出があった場合の対応」「下請事業者における賃金の引き上げが可能となるよう、取引価格の十分な協議の場の設定」などがその内容となっている。
働き方については「働く者の命と健康を守るため過重労働の撲滅に取り組むとともに、育児・介護・治療などの生活と仕事の両立を支援し、メリハリのある働き方や多様な人材の活躍を可能にする制度および職場環境の実現に向けて取り組む」ことを盛り込んだ。
導入が進んでいるテレワークや時差出勤については、「導入後新たに見えてきた課題の有無について実態把握を進め、必要に応じ労使協議を通じた環境の整備にむけた取り組みを行う」とした。
電機連合も適正な価格転嫁の取り組みに重点を置いて取り組んだ。具体的には、加盟組合に対して価格転嫁の状況に関する調査を実施し、その調査結果などを受けて、産別労使交渉において経営側と論議した。
また、電機連合では、協約改定項目として、障がい児や医療的ケア児を子に持つ人について、介護・看護を事由として、短時間勤務の年齢延長や時間外勤務の調整・制限を利用可能とすることを勝ち取った組合もあった。
生保労連にはキャリア支援やテレワークの拡充を引き出す単組も
生保労連は各組合の課題認識に基づき取り組む「主体的取組み課題」として、①経営の健全性向上の取り組み②誰もが安心と働きがい・生きがいをもてる職場の実現に向けた取り組み③ダイバーシティ&インクルージョンに関する取り組み――を設定している。
また、全組合が統一して取り組む「重点課題」として、営業職員・内勤職員共通の項目では「年次有給休暇取得日数の増加」「男性の育児休業取得の推進」を掲げている。さらに内勤職員については「『学び・学び直し』に関する支援の充実・強化(労使の共通認識の醸成、環境の整備を含む)」にも取り組んだ。
これらの課題認識に基づく取り組みの結果、各単組では、「キャリアプラン運営の定着化・教育支援の充実」「テレワークの利用可能日数の拡大」「計画年休の増加と有休取得目標日数の引上げ」「産前パパ育休の導入と育児休職の取得期間の拡大」などを引き出した。
全建総連は「働き方改革への対応」「持続可能な建設業に向けた処遇改善、担い手確保・育成」も交渉・協議項目としたと報告した。
<単組からの報告>
自動車の単組は「自らやりがいをつかみとる」仕組みを検討
【自動車】の単組では、働きやすいものづくり環境の整備の観点から「多様な人材が安心して働ける環境整備」「工場の環境整備や寮のリニューアル」「創造性を育むリソースの確保」「定年後再雇用者の処遇向上」「職場ニーズに基づく65歳以上の雇用」などを議論した。
また、「自らやりがいをつかみとる」仕組みづくりという観点から、全職種を対象とした職種変更制度の導入や、選択型研修の強化も話し合った。
電機の単組は海外留学やボランティアのための休職制度を要求
【電機】の単組は、海外留学やボランティアなどのスキルアップを理由とする休職制度の導入を要求したが、業務や社会保険料などについて検討が必要なため、継続協議となったとした。