【東海】景況判断が4年ぶりにプラス水準に

地域シンクタンク・モニター定例調査

4~6月期の東海地域の経済は、消費が新型コロナの5類移行で持ち直したほか、生産も自動車関連を中心に持ち直しているとして【やや好転】となった。7~9月期の見通しは、景況感が大きく改善して4年ぶりにプラス水準となったことから【好転】と判断した。雇用動向は、4~6月期実績は雇用指標の動きから【横ばい】、7~9月期見通しは人手不足感が強まるとみて【やや好転】と判断している。モニター実施の調査によると、人手不足に対応するための設備投資が増加傾向にある。

<経済動向>

消費・生産ともに持ち直しの動き

東海財務局の「法人企業統計調査」によれば、東海4県(静岡県含む)の設備投資額は前年同期比プラス20.0%の大幅増加。増加は2四半期連続となった。業種別にみると、製造業は同プラス24.1%で、7四半期連続で前年同期を上回った。非製造業は同プラス14.3%で、2四半期連続で前年同期を上回っている。生産をみると、鉱工業指数は100.4で、前期から4.8%上昇した。

個人消費は緩やかに持ち直した。中部経済産業局管内5県(愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県)の当期の販売額をみると、ドラッグストア(前年同期比プラス9.7%)、百貨店(同プラス6.6%)、コンビニエンスストア(同プラス2.5%)で前年同期を上回っている。

輸出をみると、名古屋税関管内の輸出通関額は4月が前年同期比プラス1.6%、5月が同プラス13.9%、6月が同プラス16.0%と、プラス幅が拡大して推移している。

こうしたことから東海地域のモニターは、「個人消費が新型コロナの5類移行に伴う外出機会の増加を受けて持ち直す」とともに、「生産・輸出も東海地域の主要産業である自動車関連産業を中心に持ち直した」として、4~6月期の地域経済を【やや好転】と判断した。

大型小売店販売額は全区分でプラスに

7~9月期を分野別にみると、中部経済産業局管内5県の大型小売店販売額(7月)の前年同月比は、百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンスストア、家電大型専門店のいずれもプラスとなっている。

モニターが作成するOKB景況指数(9月期)をみると、景気水準は9.8で前期から12.0ポイント上昇と大きく改善している。プラス圏となるのは2019年6月期以来。分野別にみると、個人消費が8.4、生産活動が16.2、設備投資が8.7といずれもプラスとなっている。

東海財務局の法人企業景気予測調査をみても、景況判断BSIはマイナス0.6で、前期から5.9ポイント上昇している。いずれの規模・業種でも前期から上昇している。

生産は持ち直している。7月の鉱工業生産指数は102.6で前月から横ばいであるものの、半導体不足の影響がおおむね緩和しており、自動車メーカーの生産が回復している。

こうしたことからモニターは、7~9月期の見通しを【好転】と判断した。

<雇用動向>

来期は雇用の不足幅が拡大

雇用の実績(4~6月期)について、有効求人倍率をみると当期は1.31倍で、前期(1.34倍)からやや低下している。モニターはこの動きを、「景気の持ち直しや賃上げへの期待感から、求職者数が増えたため」とみて【横ばい】と判断した。

7~9月期の判断は、モニター作成の景況指数で雇用の不足超幅が拡大していることや、法人企業景気予測調査で従業員数判断BSIが全産業で「不足気味」超となっていることから、【やや好転】とした。

採用や育成などの人材関連投資が活発

モニターが実施した設備等投資動向の調査によると、今後の投資見通しのDI(「増えそう」-「減りそう」)は「人材関連投資(採用・定着・育成)」が67.7、「デジタル投資」が52.1、「省力化投資」が49.0、「更新投資(維持・補修)」が30.2などと、いずれのDI値も高く、投資が増加傾向であることがうかがえた。特に、「人材関連投資(採用・定着・育成)」や「省力化投資」が上位であることについて、モニターは「人手不足への対応に力を入れていると推測できる」としている。