【岩手】個人消費は回復が続くも生産活動は一進一退

地域シンクタンク・モニター定例調査

岩手県の4~6月期の経済動向は、仕入価格や人件費、光熱費のコスト増から収益面で厳しさが継続しているとして【横ばい】となった。7~9月期の見通しも、生産活動が一進一退の動きにあることなどから【横ばい】としている。外国人観光客の増加が目立つ観光では、米国大手メディアによる「2023年に行くべき52カ所」に盛岡市が選ばれたことなどから、インバウンド増にさらなる期待がかかる。雇用については、4~6月期は、有効求人倍率の低下や製造業の求人減少の動きから【やや悪化】と判断。7~9月期の見通しは、雇用人員BSIの動きから強い人手不足感が続くとみて【横ばい】としている。

<経済動向>

人件費やエネルギーコスト増で企業の収益面の厳しさが続く

4~6月期の岩手県の経済指標をみると、生産活動は鉱工業生産指数が134.9で前期比マイナス1.6%と低下したほか、新設住宅着工戸数と公共工事請負額も前年を下回った。一方、小売業主要業態の販売額は、ドラッグストアやスーパーマーケットが牽引してプラスを継続したほか、新車登録台数も前年を上回っている。

モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」をみると、当期の売上高BSIはプラス3.6(前期比6.6ポイント低下)と前期を下回ったものの、4期連続のプラス水準となっている。経常利益BSIはマイナス7.6(同10.1ポイント上昇)で、大幅に改善している。

こうした結果をふまえモニターは、「企業においては仕入価格の上昇のほか、人件費や光熱費といったコストの増加など、売上と比較して収益面の厳しさは継続しているとみられる一方、販売価格が上昇するなど前年と比べて状況が改善してきている」として、4~6月期の業況の判断を【横ばい】とした。

「2023年に行くべき52カ所」に盛岡市が選出

一方、モニターが実施した同調査での先行きの業況判断BSIはマイナス20.6(現状比5.9ポイント低下)となっている。業種別にみると、製造業は現状比3.5ポイント上昇のマイナス3.5と改善する一方、非製造業は同10.6ポイント低下のマイナス29.2と大幅に悪化の見込み。卸・小売業では判断が上向いているものの、建設業と運輸・サービス業は大幅な悪化が見込まれる。

観光の動きをみると、外国人観光客の著しい増加が目立っている。その背景には、新型コロナへの警戒感が緩和したことに加え、ニューヨーク・タイムズ誌の旅行特集「2023年に行くべき52カ所」に盛岡市が選ばれたこともあるとモニターはみている。県では9月から10月にかけて、同市と平泉町などの県内の世界遺産を会場としたインバウンド向けイベントを実施するなど魅力発信に取り組んでおり、今後もインバウンドの増加に期待をかける。

モニターは7~9月期の地域経済について、「個人消費は回復の動きが続く」とみているほか、「新設住宅着工戸数は貸家やマンションに増勢傾向がみられる」としつつも、「主力の持家が低調なほか、生産活動も一進一退の動きになる」と予想して、総合的な判断を【横ばい】とした。

<雇用動向>

半導体メーカーの設備投資抑制などで製造業の求人意欲がマイナスに

4~6月期の雇用指標をみると、有効求人倍率は1.23倍(前期比0.06ポイント低下)で前期を下回った。新規求人倍率も1.83倍(同0.01ポイント低下)で、わずかだが前期を下回っている。

新規求人数(原数値)を業種別にみると、情報通信業ではシステム化やデジタル化需要を背景に、ソフトウエア業の事業所からシステムエンジニアやプログラマーの求人が多く出された。一方、製造業では電子部品・デバイスや電気機械器具において、半導体メーカーでの設備投資抑制の動きやパソコン・スマートフォン市場の低迷などにより受注が減少したことから、求人意欲が乏しくマイナスとなった。

これらの動きをふまえて、モニターは4~6月期の雇用を【やや悪化】とした。

強い人手不足感は継続

7~9月期の見通しについては、足元では求人倍率がやや低下しているものの、企業の人手不足感が強い状況は依然として継続していることから【横ばい】とした。

モニターが実施した「岩手県内企業景況調査」の雇用人員BSIの先行き判断をみると、マイナス35.8で現状(マイナス35.9)からほぼ同水準で推移する見通し。業種別では、製造業が現状比3.6ポイント低下のマイナス17.6、非製造業が同1.8ポイント上昇のマイナス45.1となっている。