【中国】慢性的な人手不足で有効求人倍率は高水準

地域シンクタンク・モニター定例調査

中国地域では、4~6月期の経済動向は、生産が短期的に増減していることなどから【横ばい】とした。7~9月期は、G7サミットを開催した広島市で外国人旅行客が増加し、消費への好影響もあり【やや好転】としている。ただし一部の地域では、豪雨災害による交通や農業への影響がでている。雇用動向については、慢性的な人手不足のもとで採用意欲の高い業種・企業が多く、有効求人倍率が高水準で推移することなどから4~6月期の実績、7~9月期の見通しとも【やや好転】とした。

<経済動向>

生産は一進一退が続く

モニターは、4~6月期の中国地域の経済動向について【横ばい】と判断した。

部門別の動向として、生産では一進一退が続いている。自動車や半導体は生産が短期的に増減している。化学はプラントの定期修理期間による生産減があったものの、回復している。鉄鋼は中国産の安価な製品との競合が続いている。

5月に広島市で開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)での交通規制に伴い、自動車関連の工場が休止した影響が出たものの、「一時的な要因でしかなかった」という。

消費面は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでは持ち直したが、百貨店はラグジュアリーブランドが振るわず落ち込んだ。モニターは「所得が伸びないなかでの物価高が続いており、住宅購入をためらう消費者も少なくない」とみている。

広島市ではG7サミットを契機に消費が好調

7~9月期の見通しについては自然災害の影響を指摘する。山口県では6月末から7月初めにかけての豪雨災害で、JR西日本の美祢線と山陰線の路線が被害を受け、一部運休が続いている。鳥取県も8月中旬の台風7号の影響が大きく、道路・橋梁などの生活インフラや農作物の被害が相次いだ。そのため、「今後の景気回復の本格化に地域差が生じる可能性がある」という。

生産活動は、半導体をはじめとする各種部品の不足が続き、海外経済の減速も懸念されている。消費活動については、抑制されてきた需要が一気に回復する「ペントアップ需要」が一部で顕在化しつつある。主要観光地への入り込みはインバウンドで増加しており、ホテルの客室稼働率やビアガーデンの宴会需要も伸びている。特に広島市では、G7サミットを契機に外国人旅行者が家族で訪問する様子が顕著に増えており、「今後もしばらくは継続する見込み」。百貨店での夏物衣料や、G7サミットで各国首相が手に取った土産品などの高額商品の売れ行きも好調で、モニターは判断を【やや好転】とした。

<雇用動向>

人流活発化で警備員の求人が増加

4~6月期の雇用実績について、モニターは【やや好転】と判断した。

有効求人数の伸びは一進一退だが、求人倍率は1.54倍で、全国平均(1.30倍)に比べ高水準で推移している。物価高が経営を圧迫しているものの、慢性的な人手不足で採用意欲の高い業種・企業が多い。

広島県や岡山県の都心部では、生活関連サービス・娯楽業や宿泊・飲食業で求人が伸びている。小売業での新規オープンに伴う採用や、新型コロナウイルス感染症の5類移行による人流の活発化で警備業の募集も増加。資材高騰で住宅建設が減った建設業や、団体旅行が回復しない輸送業で求人を控える動きがあるものの、全体としては「緩やかに回復している」という。

見通し(7~9月期)についても「山陽(岡山県・広島県・山口県)だけでなく、山陰(鳥取県・島根県)でも雇用の回復がみられるようになった」ことを理由に、【やや好転】としている。G7サミットの開催時期に新規求人が減った製造業や建設業も、「しばらくは回復が持続する見込み」としている。