賃金・一時金の満額回答が相次ぐ。物昇手当、初任給アップの回答も
 ――【単組】賃金・一時金の取り組み状況

ビジネス・レーバー・モニター定例調査

単組から寄せられた報告では、賃上げ・一時金について、要求どおりの満額回答を得た組合が多くみられた。初任給の引き上げを要求した組合も目立ち、大卒初任給では、組合が要求した水準を上回る回答が示されたところもあった。

賃金・一時金ともに満額回答で決着――自動車の単組

金属関連の単組の報告内容からみていくと、【自動車】のA社労組は、賃金改善として1万2,000円を要求し、要求どおりで妥結した。定年後のシニアの非正規社員については平均6,000円の改善。年間一時金は平均202万9,500円を要求し、満額で妥結した。B社労組は、賃金について職能資格別の引き上げを要求し、年間一時金については6.7カ月分を要求した。いずれも要求どおりで妥結したとの報告があった(平均賃金引き上げ額は非公開)。

【電機】の単組は、開発・設計基幹労働者の賃金水準改善7,000円を要求した。初任給については、高卒は基本月収17万9,000円以上、大卒は同23万2,000円以上への引き上げを求めた。産業別最低賃金(18歳見合い)では17万3,500円への引き上げを要求した。

交渉の結果、賃金水準改善については、賃金体系の維持に加えて5,000円の成果反映加算を行うこととなったほか、カフェテリアプランの付与ポイントが(成績標準時で)年間2万4,000ポイント(月2,000ポイント)加算となり、要求した7,000円相当の改善となったと報告した。初任給では、高卒は要求どおりでの妥結となった一方、大卒については、要求を5,000円上回る23万7,000円で合意した。産業別最低賃金は要求どおりで妥結したと報告した。

【造船・重機】では3つの単組から報告があった。A社の労組は上部産別組織の統一要求として1万4,000円の賃金改善と、18歳最低賃金を18万円に引き上げることを要求。いずれも要求どおりで妥結している。A社労組の独自要求としては、慶弔休暇の改善を求めた。具体的には、①現行日数を確保したうえで、連続条件を撤廃②弔事での取得時期は、事由発生日から2カ月以内に③子女結婚での取得時期は、事由発生から1年以内に――の3点を要求し、いずれも要求どおりで妥結している。

B社労組も1万4,000円の賃金改善を求め、満額回答となった。一時金については5.9カ月で妥結した。労働条件の改善項目として要求した①育児短時間勤務の取得対象者の範囲拡大②リフレッシュ休暇の勤続区分に勤続45年を追加③出産および忌引休暇の拡充――の3点も、要求どおりで妥結している。人間ドック休暇の新設も求め、こちらは現行どおりとなったものの、積立休暇の取得要件として追加されることになった。

C社労組も、上部産別組織の統一要求として1万4,000円の賃金改善を要求。一時金は5.9カ月分を要求。いずれも要求どおりで妥結した。独自要求としては、①年次休暇の一斉使用日の1日増②介護休暇の改定③初任給の改定――を掲げ、すべて要求どおりで妥結した。

【非鉄金属】の単組は組合員一律6,000円以上の物価上昇手当と、年間一時金として235万円を要求。交渉の結果、物価上昇手当は要求した最低水準を4,000円上回る1万円が2023年4月から支給されることとなった。ただし2024年4月以降の取り扱いは、次期春季交渉の協議事項となっている。一時金は要求どおりで妥結した。

賃金を満額回答で妥結――陶業の単組

金属以外の製造業についてみていくと、【陶業】の単組は、賃金カーブ維持およびベースアップとして1万8,700円の賃上げを要求し(内訳は、賃金カーブ維持が5,200円、ベースアップが1万3,500円)、要求どおりで妥結した。

2年連続でのベア要求となった【化繊】の単組は、今次春闘ではベースアップ分として1万132円(3%)を要求し、ベア8,200円(2.43%)で妥結している。なお定期昇給は6,168円(1.83%)で、定昇込みでは1万4,368円(4.26%)となる。

【ゴム】の単組は、一律2,600円のベースアップのほか、賃金改善が組合員平均700円で、あわせて3,300円の賃上げとなったとの妥結内容を報告した。なお、定期昇給分は組合員平均で5,000円となっている。また、オイル作業手当の新設も獲得したと報告した。

一時金については、組合員平均145万円に加えて期末手当6万円の計151万円で妥結したと報告。それ以外の労働諸条件では、安全靴の交換費用が全額会社負担になったほか、全社労使食堂改善委員会の立ち上げを成果としてあげた。

【医薬品】の単組は、春闘交渉よりも前の今年1月の段階で、全社員の職務給を一律2%(経営基幹職は1.5%)アップする対応がとられたことを報告した。モニターは、「本件は労使協議を踏まえた対応であり、春季の要求として追加での要求は行わず『協定に基づく昇給、賞与支給の実施を確認する』とした」と説明している。

各種労働条件については、労使で話し合う「人事制度協議会」がすでに設置されており、各種課題や労組要求について年間を通じてタイムリーに協議できる体制が構築できていることから、春季要求として特段の要求項目は作成せず、人事制度協議会の継続を求め、会社から了承が得られたとの報告があった。

【事務・精密機器】の単組は、例年どおりの定期昇給の改定の実施のほか、「臨時昇給」として一律1万2,000円の引き上げを要求し、交渉の結果、定期昇給の改定実施に加えて、一律1万円の臨時昇給で妥結した。

そのほか、①新規学卒入社者の初任給の引き上げ②企業内最低賃金の引き上げ(1,100円から1,200円に)③再雇用者、契約社員を対象とした一律9,000円加算の賃金改善――を要求し、①新規学卒入社者の初任給の引き上げ②企業内最低賃金の引き上げ(1,100円から1,150円に)③再雇用者、契約社員の一律3,000円(一部2,000円)の賃金改善――で妥結したと報告した。

(調査部)