物価上昇を背景に、昨年を上回る賃上げ、満額回答を獲得したとする組合が多数
 ――【産別】賃金・一時金の要求・回答状況

ビジネス・レーバー・モニター定例調査

2022年度第2回の「ビジネス・レーバー・モニター単組・産別調査」で、2023春闘での賃金・一時金の回答状況を報告してもらったところ、物価上昇を背景に、モニター労組の多くが、昨年を上回る賃上げを獲得し、満額回答を勝ち取る動きがみられた。物価上昇や人手不足という局面で行われた労使交渉となったが、多くの労組が物価上昇を織り込んだ要求方針を策定しており、人手不足への対応では、交渉のなかで議論し、労使で問題意識を共有する企業もみられた。今春闘で相次いだ「満額回答」をうけた加盟組合があったどうかについても尋ねると、回答を寄せたすべての産別があったと答えた。

今回の調査では、モニターの産別・単組に対し、1つ目の質問として、2023年の春季労使交渉での要求の柱と、妥結・合意した賃上げ結果・労働条件改定の内容を尋ね、産別にはさらに、2023春闘の特徴となった満額回答や早期決着などの動きが見られたのかについても報告してもらった。2つ目の質問としては、「物価上昇」「人手不足」という状況を要求方針のなかでどのように考慮したか、また、交渉のなかで話題になったことや将来を見据えて意見交換したこと――について尋ねた。

調査票は、産別では24組織、単組では27組織に配布し、13産別、12単組から回答を得た。なお、単組の組合規模については、ほとんどが大手となっている。調査期間は2023年3月24日~4月27日。

<春季労使交渉での要求の柱、妥結・合意した賃上げ・労働条件改定の内容>

大手12組合のすべてで満額回答/電機連合

産別の賃金・一時金の要求・回答状況をみると、電機メーカーの労働組合で構成する電機連合では、要求方針の決定にあたり、「国際的に見劣りする日本の実質賃金を向上させていくこと」「急激に高騰する物価高を考慮した賃金決定の3要素(生計費、生産性、労働力市場)」を軸に議論を重ねたとし、そのうえで、政府が賃上げを求めるようになった2014年春闘以降の取り組みのなかで最も高い要求額となる7,000円以上を掲げて交渉に臨んだ。

交渉では、処遇面から電機産業の魅力を高めることや、物価高に対する生活不安を払拭すること、加えて、経済の好循環に向けた社会的要請に対する電機労使の役割と責任について、経営側に理解を求めた。

交渉の結果、電機連合に加盟する大手12組合(中闘組合)のすべてが満額回答を引き出した。水準改善の平均額(水準改善額が明確にわかる個別賃金要求方式(開発・設計職)でベア方式および定昇込み方式の平均引き上げ額)は6,723円。産業別最低賃金の水準改善は287組合中248組合(86.4%)が行い、平均金額は17万3,160円となっている。

電機連合は交渉の経過について、「中闘組合の結果が加盟組合へ波及しており、高い水準での回答となった組合が多くある」としたうえで、今後については「現段階で得られた成果を中堅・中小組合などへ最大限波及させ、この流れを電機産業全体の賃金引上げの機運につなげていく必要がある」とした。

ベア獲得組合が昨年より大幅に増加し、水準は倍以上/JEC連合

化学・エネルギー関連の労組で構成するJEC連合では、物価高をはじめとした生活負担の増加の影響をふまえて策定した産別の要求方針に基づき、3%以上を求めた組合が多く、賃上げの要求は単純平均が8,844円(2.95%)、加重平均が9,592円(2.89%)となっている。

モニターは「賃上げ要求の内容はベアのみとしている組合が多く、大半の組合は全体の底上げを要求している」「定昇相当分の額や率は大きくは変わらないが、賃上げ要求は額・率とも大幅に上がっている」とした。

回答状況については、「ベア獲得組合は昨年と比較して大幅に増えており、昨年の倍以上」だとし、「特に大手組合では多くの組合が満額の回答を引き出しており、高い水準での収拾・妥結となった」としている。

3月30日時点で、賃上げ回答額は単純平均で5,724円(1.65%)、加重平均で8,362円(2.52%)となっている。交渉の経過については「先行組合は満額回答および要求を上回る回答も多くみられた」ものの、「中小組合を中心にベースアップを獲得できず、定期昇給分のみという組合も見受けられた」という。

先行組合の多くが要求以上の回答を引き出し、妥結額が要求額を上回る/ゴム連合

タイヤ、履き物、工業用品などの業種の組合で構成するゴム連合は、今次春闘の基本的なスタンスとして、「不確実性が与える自社への影響を注視し置かれた環境を正しく認識したうえで、ゴム産業の魅力向上と働くすべての労働者の労働条件改善を力強く推し進める」とした。そのうえで、「各社状況の違いはあるものの、特に月例賃金の改善を含む『人への投資』については労使で問題意識を共有し、課題に真摯に向き合い取り組みを進める」「労働者の豊かな生活と生産性向上による企業の持続的な発展を両立すべく、意思疎通を図りながら取り組んでいく」と方針を整理した。

賃金については、「足元では食品やエネルギー価格の急騰などにより組合員の生活が厳しさを増しており、生活防衛のための賃上げに取り組む必要がある」「労働者全員で生産性向上に向けて取り組み、積み上げた利益を適切に人へ投資していくという好循環を目指し労使で協議を進める必要がある」としたうえで、「置かれた環境を正しく認識したうえで賃金の底上げや改善を積極的に検討し、連合方針もふまえながら各単組が主体的に要求水準を設定」するとして、①定期昇給・カーブ維持分確保を前提②目指すべき賃金水準の設定③賃金課題の明確化と底上げ・賃金改善の計画的な実施④賃金の相対的な位置づけの維持に向けた賃上げ――の4点を方針に掲げた。

一時金については、①昨年実績を基に水準の維持・向上②業績低迷や企業存続への取り組みを継続している場合は、生活防衛を勘案する③春年間方式を基本とする――の3点を方針として示した。

また、非正規雇用労働者の労働条件改善では、労働条件の把握、労使認識の共有化、社会的責任と役割をふまえて労働条件改善に取り組むとした。加えて、60歳以降も安心して働けるように、「60歳以降の雇用に向けたゴム連合の基本的な考え方」もふまえ、課題改善に取り組むとした。

4月25日時点では、要求書提出が47組合、確認中が5組合。このうち賃金で妥結したのは41組合(妥結率87.2%)で、要求額8,437円(2.84%)に対して妥結額は8,466円(2.85%)と、全体では妥結額が要求額を上回っている(金額が明確な38組合の集計、加重平均)。一時金については、31組合で妥結(妥結率75.6%)。要求額154万6,631円(5.10カ月)に対し、妥結額は154万2,317円(5.08カ月)となっている(金額が明確な31組合の集計、加重平均)。

こうした状況についてゴム連合は、「先行して妥結した組合の多くが満額回答や要求以上の回答を引き出した」ことにより、「例年以上に相場形成が図られ、後続組合の交渉・協議の追い風になった」と捉えている。

8組合で満額回答、7組合で満額以上の回答を獲得/紙パ連合

紙パルプ・紙加工産業で構成する紙パ連合は、2023春闘での具体的要求について、①すべての組合は、賃金カーブ維持分を確保したうえで、実質賃金の維持・向上に向けて賃金改善に取り組む②賃金改善の範囲は、月例賃金の改善を念頭に置き所定内賃金とし、取り組みを進める③賃上げ分として4,500円以上とする――を掲げた。なお、「賃金カーブ維持分の把握可能な組合」は賃上げ分4,500円以上とするが、「賃金カーブ維持分の算定が困難な組合」は、賃金カーブ維持相当分として5,000円、賃上げ分4,500円以上の計9,500円以上とした。

紙パ連合はこれまで、「賃上げ分」ではなく、格差是正分として「賃金改善分」、過年度物価分として「生活改善分」の要求に取り組んできた経緯がある。今春闘では、連合方針の賃上げ分の要求指標である3%程度を加味し、労働市場の賃金動向、物価を上回る可処分所得増の必要性、労働者への分配増などを総合的に勘案して「賃上げ分」として要求を組み立てた。

一時金については、年間集約要求は、基準とする賃金の5.0カ月を中心とし、期毎要求は、基準とする賃金の2.5カ月を中心とした。

4月6日時点では、満額回答が8組合、満額以上の回答が7組合となっている。1組合で回答指定日を待たない早期決着があった。金額をみると、最大で定期昇給プラスベアで1万7,000円を獲得した組合があった。

一時金については、1.49カ月~6.40カ月(40万円~166万円)の回答となっている。6.40カ月を獲得した単組では、60歳定年後再雇用者の基本月給の1万円引き上げも獲得した。このほかにも、「インフレ手当6万円の支給」「59歳到達時の賃金5%カットの廃止」「子ども手当の新設(18歳まで1人月5,000円)」を勝ち取った単組があった。ただ、モニターは、「産業を取り巻く環境は厳しく、一時金は減額となる組合が多かった」とコメントした。

すべての組合が賃金改善を獲得し、回答額は前年比で3,792円(1.25%)の増加/セラミックス連合

セラミックス産業の労組で構成するセラミックス連合は、要求方針として「賃金カーブ維持相当分の確保」を大前提とした。そのうえで、「他の産業や同業他社との比較において格差や課題が存在し、その改善、人材確保の観点からも一層の底上げが必要」としたうえで、「この動きに追従できなければ世間との格差はさらに広がる」として、格差是正分および配分のゆがみ是正分等を改善し、「底上げ・底支え」「格差是正」の実現に向け、3%程度の上積みを図るとした。

3月末までに加盟44組合中42組合(95.5%)が要求を提出しており、そのうち、賃金改善分を要求した組合は34組合(81.0%)で、昨年(74.4%)を上回っている。賃上げ要求額は単純平均で9,907円(4.03%)となっており、対前年比では3,567円増(1.38%増)。このうち賃金改善分要求の単純平均は6,756円(2.66%)で、対前年比3,622円増(1.36%増)となっている。

回答状況(3月末時点)をみると、12組合で回答があり、すべての組合に賃金改善分の回答があった。賃上げ回答額の単純平均は8,606円(3.27%)で、対前年比2,691円増(0.99%増)となっている。賃金改善分の単純平均は6,158円(2.20%)で、対前年比3,792円増(1.25%増)となった。

「人への投資」の必要性や物価高騰への対応を労使で共有/基幹労連

鉄鋼や造船重機、非鉄金属などの労組を組織する基幹労連は、産別全体での賃上げの取り組みは2年に1度とする「2年サイクル」方式をとっている。2022年度がその前半年であり、2023年度の賃金改善についても2022年度にすでに妥結している組合もある(鉄鋼総合など)。

基幹労連は、この2年間の引き上げ要求額を「2022年度3,500円」「2023年度3,500円以上」と設定。「『消費者物価』『経済成長』『相場賃金』『企業業績および財務体質』『生活実態』などについて、総合的に判断して2年分の要求水準を決定」したとする。

3月15日時点の回答状況について、昨年2022年度分のみを交渉したため、今回2023年度分について交渉に臨んだ労組についてみると、総合重工では1万円~1万4,000円の賃金改善を果たした。非鉄総合では、3,500円~1万円の賃金改善となっている。なお、2023年度分について昨年すでに妥結している鉄鋼総合3社の賃金改善額は、2,000円。一時金は、業績連動方式を採用する労組以外では、月数で5.4カ月~5.9カ月で妥結している。その他、34.5万円プラス4カ月や、235万円で妥結した労組もあった。

賃金改善の回答状況について、基幹労連は「賃金改善要求した組合の多くで有額回答となり、その一部の組合で満額回答を引き出すことができた」と報告し、「『人への投資』の必要性や高騰する物価への対応を労使で共有し、最後まで粘り強く取り組んだ結果」としている。一時金については、「全体的には昨年を上回る結果であり、これは経営基盤の維持・強化に向けて組合員の協力・努力を主張した組合に対し、経営側が一定の理解を示したもの」と受け止めている。

今回の交渉における経営側の姿勢については、「『人への投資』の重要性および物価上昇による社員・組合員の生活への影響は組合と同じ認識」だったものの、「賃金改善は将来にわたり固定費に大きな影響をともなう」「今回の要求水準は例年と比較して高額な要求」との考え方を示し、「従来以上に慎重な検討とならざるを得ないといった主張となっている」とした。

営業職員は実質的な収入、内勤職員は年間収入の向上で前進回答/生保労連

生命保険会社の労組を束ねる生保労連は、組合員一人ひとりが「働きがい・生きがい」を実感できる総合的な労働条件の改善・向上に向けて、全組合が取り組む「統一取組み課題」として、①経営の健全性向上②営業職員体制の発展・強化③賃金関係④ワーク・ライフ・バランスの実現⑤多様な人材が活躍できる環境整備――の5本柱の要求を掲げた。

このうち賃金関係は、営業職員関係では、募集活動を中心とした活動量を増やすとともに、生産性を高めることなどを通じ、コロナ禍前の水準(収入)への早期回復を図ったうえで、コロナ禍前の水準(収入)を上回ることを最大限めざす観点から、「営業支援策の充実」と「賃金改善」により「実質的な収入の向上」を図るとした。とりわけ「営業支援策の充実」は最重要課題として位置づけ、これまでに導入された各種デジタルツールなどの営業支援策の定着・改善・実効性向上に向け取り組むとした。

一方、内勤職員関係では、組合員が安心して暮らし・働き続けられ、また働きがいやモチベーション、仕事への意欲等のさらなる向上を図る観点から、「年間総収入の向上に取り組む」ことを掲げた。

3月28日時点で、営業職員関係については、「新規のお客さまとの接点確保・拡大、ならびに新規契約獲得に関する施策・支援を中心とした『営業支援策』や、手当の増額などの『賃金改善』に関する回答を引き出し、営業職員の実質的な収入の向上という点で前進が図られている」。内勤職員関係についても、「全内勤職員を対象にベースアップや、臨時給与の支給水準引き上げ、特定層への特別支給金の支給など、年間総収入の向上につながる回答を引き出している」という。

働き方改革への対応も要求の柱に/日建協、全建総連

建設産業の労働組合で組織する日建協は、ベアを中心とした賃上げを要求の柱とした。その根拠は物価上昇とする単組が大多数で、また、時短等の働き方改革に対応する組合員の努力も根拠の1つとなっている。妥結に至っている加盟組合では、ベアが平均約9,500円、2.93%という状況。

大工・左官などの建設業に従事する労働者・職人、一人親方などが加入する全建総連は、「全国各地域の加盟組合でそれぞれ建設労働者・職人の要求賃金を決定している。今年は特に物価上昇を上回る賃上げと働き方改革関連法への対応、週休2日実現が重点的な柱となっている」と報告した。

総実労働時間短縮を見据え、ベア・固定給部分の引き上げに全力で取り組み/運輸労連

長時間労働の是正など「働き方改革」への対応や、コロナ禍の影響からの回復に重きを置いて取り組んだ産別もある。

トラック運輸などの輸送分野の労組を組織する運輸労連は、闘争方針について「賃金制度の確立と改善に向けては、『仕事給』や『時間外労働』など変動給部分にウエイトを置いた賃金制度のままでは、総労働時間の短縮が賃金水準の低下に直結することになる」と説明し、今年4月から中小企業でも月60時間超の時間外労働への割増賃金率が50%となったことや、来年4月から罰則付きの時間外労働の上限規制が導入されることへの問題意識を織り込んだ。そのうえで、「引き続き適正運賃・料金収受に向けて取り組みを進める」とともに、「総労働時間の短縮により削減された時間外労働手当の原資を『生産性向上分』として基本給など賃金の固定部分に組み込む」ことが求められているとして、「ベースアップとともに固定給部分の引き上げに全力で取り組む」とした。

3月27日時点で、要求書を提出した317組合中127組合(40.1%)が妥結しており、妥結額は前年比で増額が72.4%、同額が6.3%、減額が11.0%となっている。対前年比の上昇額は1,088円(16.6%増)で、規模別にみると「1,000人以上」が562円(7.7%増)、「300~999人」が3,727円(132.6%増)、「100~299人」が2,291円(96.6%増)、「30~99人」が1,782円(77.4%増)、「1~29人」が1,380円(70.3%増)となっている。

モニターは「メーカーなどの他産別が次々と満額回答を出すなか、運輸労連大手は22春闘時と比べ、業績が非常に厳しいなかでの交渉となった」と振り返った。

リモートワーク手当の新設や高齢層の処遇改善などが要求の柱/印刷労連

印刷・情報・メディア産業の組合で構成する印刷労連は、2023春季生活闘争の要求の柱として、リモートワーク手当の新設や高齢者雇用の処遇改善などを掲げた。交渉状況については、「とりわけ中小規模組織において、満額、もしくはそれに近い回答を引き出している組織が多い」と報告した。

ベアに加え、産業の魅力向上の観点から人事制度見直しや退職金にも取り組む/航空連合

航空関連産業の労組で構成する航空連合は、コロナ禍の2022春闘で「産業・企業の存続」と「雇用の維持・確保」を大前提とせざるを得なかったこともあり、2023春闘はコロナ禍からの回復に取り組んだ。

2023春闘要求では、賃金については、ベースアップを軸として6,000円以上(定期昇給・賃金カーブ維持分は含まない)を目標に、航空連合が定める中期的な目標賃金水準の達成をめざした水準を各加盟組合が検討し、月例賃金改善の要求を行った。また、定期昇給制度がない場合は、定期昇給相当分として4,500円を目安に要求を行うこととした。

有期雇用社員・パート労働者については、高卒初任給との均等待遇を重視して、時給1,150円を目指し、すでに超えている場合は正社員との均等待遇の観点から改善を求めた。さらに、月例賃金と一時金・賞与の比率を分析したうえで、安心して生活ができる水準をめざし、基本給を重視した月例賃金のあるべき水準について、労使の認識を一致させることとした。

一時金については、加盟組合の多くで、現行の一時金・賞与制度が生活給の一部としての役割を担っていることから、「生活の安心」の観点から労使で協議・交渉をおこない、安定水準の確保をめざすこととした。すでに安定水準を確保できている加盟組合については、各加盟組合の状況をふまえながら、航空連合の中期目標である5.0カ月台を目指して取り組むとした。さらに、生活の安心を確保する観点から年間一括協定の締結を原則とし、3カ月内に回答を引き出すことを目指すとしたほか、各期(季)型での要求を掲げる場合は、交渉時期について労使で確認するとした。

その他の労働条件については、「航空連合 働き方・休み方改善指針」を確実に実現するための継続的な取り組みとして、①労働時間と休日・休暇に関する取り組み②生活と仕事の両立を支援する環境整備③より柔軟な働き方を可能とする制度の点検・拡充④36協定の順守、ならびに働き方改革関連法への対応――を求めた。また、「シニア人材の活躍推進・労働関連法令の順守と対応」「『航空連合 ジェンダー平等推進計画』を確実に実現するための継続的な取り組み」「人材育成・能力開発」「ハラスメント防止の取り組み」「メンタルヘルス不調の予防、対応」も掲げた。

個別労組の回答状況(4月11日時点)をみると、ベアを要求した49組合のうち、有額回答があったのは42組合で、その平均は6,100円となっている。モニターは2023春闘の特徴として、「賃上げにおいては、産業の魅力向上という観点からも、ベースアップのみにこだわらず、人事賃金制度や評価制度の見直しを要求している」点を挙げた。加えて、退職金に関する関心が高まっていることから、退職金に関する協議の実施や退職金アップに向けた取り組みも行われていると報告した。

賃金以外の項目では、36協定の順守や、時間外勤務・深夜勤務・休日勤務の法定三手当の割増率上昇に取り組んだ労組もあった。総実労働時間や所定労働時間の低減、年間公休数増加、年休取得促進に向けた取り組みも目立っており、おおむね前向きな回答が得られている。

育児と仕事の両立の観点では、短時間勤務等を行うにあたり、その対象となる子供の年齢を引き上げる取り組みに対し、前向きな回答が得られた労組もあった。以前から生理休暇の有給化に取り組んでいた労組では、実施するとの回答を勝ち取っている。

年収の回復をめざし、1%以上の実質的な賃金改善などに取り組み/サービス連合

宿泊業、旅行業、航空貨物業の加盟組合でつくるサービス連合は、コロナ禍で需要の激減に直面したことから、2022春闘では雇用維持を最優先に掲げざるを得なかった。しかし2023春闘では、コロナ禍からの回復が進んでいることから、賃金改善への姿勢も強めた。

2023春闘に臨むにあたり、「すべての労働者の雇用を守り、労働条件の向上に最大限に取り組み、そのうえで、中期的な賃金目標『35歳年収550万円』の実現を目指して、一時金もあわせた年収水準の回復、向上に取り組む」とした。

そのうえで、主な取り組み項目として①正規労働者の賃金改善・一時金要求②契約社員・パートタイマー等の待遇改善③最低保障賃金④同時要求――の4点を掲げた。

このうち正規労働者の月例賃金については、すべての加盟組合で賃金カーブを維持したうえで、1.0%以上の実質的な賃金改善に取り組むとした。一時金は、年収水準に応じて設定した6区分の「指標」のランクアップに取り組み、「指標」を活用しない場合は年間4.0カ月相当の獲得に取り組むとした。

契約社員・パートタイマー等の待遇改善では、賃金改善について、月例給労働者は4,300円以上、時間給労働者は34円以上を掲げ、一時金については、正規労働者との待遇差を点検したうえでの年収水準向上のための取り組みを行った。

また、不合理な労働条件の是正のために、①労働条件の点検および是正②正社員との整合性が確保された人事・賃金制度の導入――に取り組んだ。最低保障賃金について、①法定地域別最低賃金に10%を上乗せした産業別最低保障賃金の協定化②年齢別の全国統一最低基準としてのポイント年齢別最低保障賃金の協定化――に取り組んだ。そのほか、同時要求として①総実労働時間短縮②両立支援・男女平等社会の実現③60歳以降の雇用確保④同一労働・同一賃金――を掲げた。

調査に回答したすべての産別の加盟組合で「満額回答」を獲得

今回の調査に回答した産別13組織のうち、12組織が賃金について、加盟組合の「満額回答」があったと報告した(1組織は同設問に無回答)。回答日前に回答が示されて決着する「早期決着」となった加盟組合がある産別も多く、電機連合、基幹労連、印刷労連、セラミックス連合を除く8組織があったと報告した(1組織は同設問に無回答)。

(調査部)