【東海】有効求人倍率が7期連続で上昇、失業率も改善

地域シンクタンク・モニター調査

7~9月期の東海地域の経済は、行動制限の解除で個人消費は持ち直したが、国際情勢など下押し懸念が続いたことから【横ばい】となった。10~12月期の見通しは乗用車販売台数が改善していることや、モニター実施の景気予測調査の結果をもとに【やや好転】と判断した。7~9月期の雇用は、有効求人倍率の7期連続上昇や完全失業率の2期ぶりの改善をうけて【やや好転】。10~12月期の雇用見通しは、有効求人倍率の動きが小さいことから【横ばい】と判断している。

<経済動向>

行動制限の解除で景気回復が続くも下押し懸念は拭えず

東海財務局の「法人企業統計調査」によれば、東海4県(静岡県含む)の設備投資額は4四半期連続で前年同期を上回った。業種別にみると、製造業は4四半期連続で前年同期を上回った。非製造業は2四半期ぶりに前年同期を下回った。

個人消費は持ち直しの動きがみられた。中部経済産業局管内5県(愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県)の当期の販売額をみると、百貨店(前年同期比プラス11.8%)が大きく改善しているほか、ドラッグストア(同プラス5.6%)、コンビニ(同プラス0.9%)もプラスとなった。ただし、スーパー(同マイナス0.3%)と家電大型専門店(同マイナス2.3%)、ホームセンター(同マイナス4.0%)は減少となった。

東海3県の当期の乗用車販売台数は、前年同期比マイナス0.5%と5期連続で前年同期を下回ったものの、前期(前年同期比マイナス16.4%)からマイナス幅が縮小している。

東海地域のモニターは7~9月期の地域経済について、「行動制限が行われず、景気回復は続いた」ものの、「原油価格の高騰や急激な円安進行、部品調達難、ロシアのウクライナ侵攻による影響等の下押し懸念が続いた」ことから【横ばい】と判断した。

5期連続でマイナスだった乗用車販売台数が改善

10~12月期を分野別にみると、個人消費は持ち直しが一服している。中部経済産業局管内5県の大型小売店販売額(11月)は、ドラッグストア(前年同月比プラス7.5%)、百貨店(同プラス3.6%)、コンビニ(同プラス3.4%)、スーパー(同プラス1.2%)は増加しているが、家電大型専門店(同マイナス2.4%)とホームセンター(同マイナス3.3%)は減少となった。

乗用車販売台数は7~9月期まで5期連続でマイナスだったが当期は好調で、10月が前年同月比でプラス27.4%と大きく改善しているほか、11月も速報値で同プラス3.7%となっている。

モニターが作成するOKB景況指数(12月期)をみると、個人消費はマイナス15.7で前期(マイナス15.1)から横ばい。

設備投資は、東海財務局の法人企業景気予測調査によれば増加見込みとなっている。生産については、OKB景況指数(12月期)はマイナス8.2で前回から4.4ポイント上昇している。

こうしたことからモニターは、「総じて景気は持ち直している」として10~12月期の見通しを【やや好転】と判断した。

<雇用動向>

2022年度には約4割がベアを実施

雇用の実績(7~9月期)についてモニターは、「有効求人倍率は7期連続で上昇」「新規求人数(原数値)は前年同月比でプラス」「完全失業率(原数値)は2期ぶりに改善」と、好調な指標をあげて、【やや好転】と判断した。

10~12月期の判断は、「東海財務局の『法人企業景気予測調査』によれば、12月末時点での従業員数判断BSIは『不足気味』超で、その『不足気味』超幅が拡大している」ものの、「11月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント低下の1.43倍で横ばい」として、【横ばい】とした。

このほか、労働に関連する地域のトピックとしてモニターは、岐阜県産業経済振興センターが行った2022年度の賃上げに関する調査結果を報告した。それによると、回答企業570社のうち賃金を引き上げた企業は72.1%で、前年調査の59.9%から12.2ポイント増加した。賃上げの方法としては「定期昇給」が最も多く66.1%で、次いで「ベースアップ」が39.6%だった。「定期昇給」は前年調査から6.0ポイント減少したが、「ベースアップ」は8.6ポイント上昇した。

また、賃金を決定する際に重視した項目を尋ねたところ(複数回答)、最も多いのは「企業業績」(66.2%)で、次いで「従業員確保」(44.9%)、「物価変動」(23.4%)だった。前年調査と比較すると、「物価変動」はプラス14.6ポイントと大幅に上昇している。

(調査部)