【宮城】レジャー需要と値上げ前の駆け込み需要で個人消費が堅調

地域シンクタンク・モニター調査

経済動向について、7~9月期実績は、夏場のレジャー需要で個人消費が堅調だったことに加え、10月の値上げ前の駆け込み需要もみられ、【やや好転】となった。10~12月期の見通しも、緩やかな持ち直しの動きになるものと見込まれ、【やや好転】となっている。雇用については、7~9月期実績は夏季賞与の支給の改善を理由に【やや好転】とし、10~12月期見通しは賃上げに厳しさがうかがわれるとして【横ばい】としている。

<経済動向>

行動制限中の貯蓄が需要に向かう動きが

モニターは7~9月期の地域経済について、「行動制限中の過剰貯蓄が繰越需要に向かう動きもみられ、全体としては緩やかな持ち直しの動きとなった」として、【やや好転】と判断した。

判断理由を詳しくみていくと、生産面では、上海のロックダウン解除により供給制約がある程度緩和され、輸送機械や生産用機械を中心に持ち直しの動きとなった。

個人消費は、物価高や新型コロナの感染再拡大のほか、7月の豪雨被害が重石となったものの、コロナ前の開催規模に戻した夏祭りなど、3年ぶりに行動制限のない夏場のレジャー需要が堅調で、サービス消費が持ち直した。一部には10月の値上げ前の駆け込み需要もみられ、総じて緩やかに持ち直した。

供給制約の緩和で自動車の挽回生産に期待

10~12月期の見通しについても、モニターは「供給制約や新型コロナの影響が和らぐもとで経済活動が正常化に向かい、安定的な雇用環境や観光支援など経済政策によるサービス消費などに下支えされ、全体としては緩やかな持ち直しの動きになるものと見込まれる」とし、判断として【やや好転】を選択している。

生産面をみると、海外経済の悪化による半導体関連の在庫調整や設備投資の先送りなど、需要の減少が懸念されるものの、供給制約の緩和による自動車の挽回生産が期待されるとし、個人消費については、食品を中心した生活必需品の値上げで消費者物価指数が約40年ぶりの上昇率を記録しているものの、政府の観光支援政策の効果などでサービス消費を中心に持ち直すと見込まれる、とした。

建設投資については、公共投資や民間非居住建築は一服しているが、住宅投資が仙台圏の貸家・分譲を中心に引き続き堅調で、全体としては軟調なものと見込まれるとしている。

<雇用動向>

新規求人数が増加したほか夏季賞与も総じて改善

7~9月期の雇用をみると、有効求人倍率は1.39倍で前期から0.03ポイント上昇した。新規求人数は前年同期比で4.9%増加した。

なお、新規求人数は前年同期比では増加しているが、新型コロナ流行前の2019年同期と比べると、11.4%減少の水準にとどまっている。業種別にみると、宿泊業・飲食サービス業(2019年同期比31.9%減少)、生活関連サービス業・娯楽業(同31.6%減少)、運輸業(同22.4%減少)などのサービス消費関連で減少幅が大きい。

3年ぶりに行動制限のない夏休みで期待された仙台七夕祭りや行楽需要の盛り上がりに関しては、新型コロナの第7波や豪雨被害などが持ち直しつつあったサービス需要を下押しする結果となった。モニターはその他の要因として、「10月から最低賃金が30円上昇の883円に引き上げられることとなり、非正規雇用の割合が高い飲食サービス業や小売業などで雇用コストが急増したことなども影響したと考えられる」とコメントしている。

モニター実施の県内企業動向調査(3月実施)によると、夏季賞与(前年比、予定)は「増額」が14.8%、「同水準」が61.9%となっており、前年の同種調査と比べ「増額」は2.9ポイント低下したものの、「同水準」は9.5ポイント上昇している。モニターは「収益環境が厳しいなかで支給状況は総じて改善している」とみている。

こうしたことを総合的にふまえてモニターは、7~9月期の雇用を【やや好転】と判断した。

2023年の賃上げ実施予定企業は24.2%にとどまる

モニターは10~12月期の見通しについては【横ばい】と予測した。

モニターが実施した同調査(12月実施)によると、県内企業の雇用DI見通し(「過剰」-「不足」)はマイナス41で、新型コロナの流行以降では不足幅が最も大きくなった。業種別では、非製造業はマイナス48で過去最低を記録している。同調査で「経営上の課題」を企業に尋ねたところ(複数回答)、「人手不足」をあげたのは製造業では30.4%だが、非製造業では53.5%と半数超にのぼっている。

9月実施の調査によれば、冬季賞与(前年比、予定)は「増額」が11.5%、「同水準」が65.8%となっており、前年同時期の調査と比べ「増額」は1.1ポイント上昇、「同水準」は3.7ポイント上昇した。

12月調査から2023年の賃金動向をみると、賃上げ実施予定は24.2%で、前年から大幅低下(19.1ポイント低下)。モニターは「恒常的で下方硬直性のある定例給与を引き上げるほどの収益見通しが立たない厳しさがうかがわれた」とコメントしている。

(調査部)